【詩】空の台座に闇夜は眠る
雨音は止み、
椅子を離れ窓を放つ
風満つ十六夜は紙の上に滴り、
細長く綴られ続けた寂寞は苦く熟れて
その実を落とした
あなたの頬骨のすぐ下を、指の背でくすぐれば
昏冥を抜ける光彩が眸の中に浮かんで跳ねる
おおよそふたしかな語らいは
何を以っても覆し難く、
沈黙の底に生まれた魚のうろこは
白く奇怪に蠢きまわる
あなたの肩に頭を埋めて目を閉じれば
綴じられた物語より深くわたしを慰め、
じりじりと親指の腹でなぞれば
みだれちらばり、いりまじる
途切れた交感の狭間で思弁の飛沫ははじけ、
そしてゆっくりとさめてゆく
六年の昼と夜を巻き戻せば、
その向こうにあなたはいる
目元に浅く小さな皴をのせて
闇夜は天多の滴を屠り、
空の台座に言葉は眠る