【詩】沈黙より生まれ出づる

皮膜の中で声を聴いた
めいめいの、さまざまな
おびただしい音とともに

腹から流れ込む、あまやかな血流や毒
脈うち、循環し、排泄し、変容する地上の種子
痛みの果てにしか生まれ得ぬ
わたしはあなたの独り子だ

早ければ流れ落ち、遅ければ破裂する
あなたに孤独を与え、慈悲に与する

安寧をくくりつけ左右に揺れる椅子、
自負を纏った声は頭蓋に良く響く
やり切れなさを煙に巻くための中傷は
食卓を、机上を、働く人の手をつたい
滑らかに思考を奪い覆ってゆく

沈黙を湛えたあなたの眼差し
わたしを射抜く悲しみ
わたしを求めずにはいられぬ人の性に
     
あなたの戦慄く喉元は
避けられぬ喘ぎを吐き出した

嗚咽と苦悶の底から顔を出し
歓喜と涙の渦中に産み落とされ
産湯に薄められた血の中から
掬い上げられた、
わたしはあなたの独り子だ

泣き声しか持たぬと声がする
開くべき扉を忘れてしまった声は、ただそれ故に
開かぬ目をこすり彷徨い続ける夜に耐えきれず
飽くことなくあなたを責め続けるだろう

構わずあなたは、わたしの心音を包む
やわらかな産着をその手に抱きとめた

わたしの名を呼んでくれ
虚実の世界にいま生を享け
いつかあなたを解き放つ
わたしの頰に触れていて
いつかあなたと世界とが
ひとつに結ばれるまで

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