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鼻息の音

こないだ乗ったタクシーの運ちゃんの
鼻息の音が「スピー、スピー」と
やたらと聞こえて困った。

別に困らなくてもいいのかもしれないが、
せまい車内にふたりきり、
気になってしょうがない。

ハナ・・くそが・・
たまっていたのかもしれない。
ひょっとして本人も
なんとかしたかったのかもしれない。

そう思って何度か表情をうかがったのだが
運ちゃんはまったく気にする様子もなく、
もくもくと運転していた。

運ちゃんは、世間話をするでもなく、
本当にもくもく・・もくもくと運転していた。

しーん・・もくもく・・スピー
しーん・・もくもく・・スピー
しーん・・もくもく・・スピー

狭い車内の不思議な空間であった。んで、
その感じがだんだんいやでもなくなって、
なんかひとりでくすくす笑っていたのであった。

最近のオノマトペ

スピーは擬音語、もくもくは擬態語、
しーんは・・よくわからない。

「スピー」なんて普通には使わない。
使う場面も滅多にない。

一方、世の中には、
なんでこんなコトバが使われてんのか
よくわからないものも多い。

「バキバキ」とか「キレキレ」とか。
あれ、何なんだろう・・
ボディビルの試合の掛け声か?

筋肉がバキバキっていうのは
疲れて強張っちゃってることだったはずが
最近の使い方だと、いい感じにハリがあって
・・なんか逆になってる。
キレキレの上位概念ってとこか。

キレキレは切れ味がいいってことだよね。
キレキレの直球、みたいのはわかりやすい。
キレキレのダンス、とかも。
アタマがキレキレとかビールがキレキレとか
意外に使い道は多い。

で、思ってしまうのが、この辺の言葉が
「なんかバカっぽく聞こえる」ってことだ。
褒めてるはずなのに・・

なぜバカっぽいんだろう

いや、言われてる方は別に
バカにされてるとは思わないだろう。
だけどなんか第三者から見るとバカっぽい。
不思議だ。

「ゴリゴリ」なんてのもある。
もうめっちゃ硬い感じ。

ゴリゴリの体育会系、なんて言う。
マジもののもっと凄いやつってニュアンスだな。
昔で言うと筋金入りか。
筋金入れればそりゃ硬いが。

この辺のコトバに共通してるのは
すごく感覚っぽいこと。触覚というか。
説明無しで伝わるためのショートカットっぽい。
だから感じはすごくよく伝わる。

あれかな。背景なしの感覚だけだから
バカっぽく感じるのかな。
感覚を言葉にしたら音に戻っちゃったみたい。

こういう言葉が増えたのはたぶん、
短い文字数で伝えたいSNSが関係してる。

一個だけ真面目なこと言うと、
日本にこんなにオノマトペが多いのは、
日本語の動詞が「見る」とか「走る」とか
基本的なことしか言ってないので、
どういうふうに動くのかを補足する言葉が
増えたってことらしいです。
英語だと「見る」にも、see、look、watchと
いろいろあるから。

と言いつつ、漢字だと「見る」にも
「観る」とか「診る」とかあるんだけどね。

次回は「まぶたの裏」です。

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