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とんでもない店ほど覚えている
ある日、打ち合わせが終わって、
数人でごはんを食べに行ったときの話。
いつも通る道にある店。
だけど入るのは初めてだった。
店に入った瞬間、ひとりが
入り口にある生け簀をじっと見ていた。
早くも狙いを物色してる
と、そのときは思ったものだ。
ハラが減っているのでばーっと注文する。
メインは鍋を注文して
そのほかにもなんやかやとオーダーした。
ちょっと少ないかと思ったが、
ま、とにかく食べて、
そんでまた追加しようということになった。
5分後、
店のヒトがいきなり「鍋はない」と言う。
メニューに「鍋の季節は終わりました」と
書いてあるのを指さされた。
いきなりメインがなくなってしまったので、
やむなく2、3品追加する。
するとまたしばらくして「あれは今日ありません」
「あれもありません」というのが続く。
しょうがないので別のものをオーダーする。
仕事のバカ話で盛り上がる。
撮影の前日、セットをチェックして帰って、
次の朝来たら、
そのセットがすっかり片づけられていた話。
撮影所のヒトが間違えたのだ。
その人はいろいろトラブルを引き寄せる人で
1.浜辺に建てたセットが
夜のうちに流されてしまう。
2.卵に当てていたライトでスタジオに
火災を引き起こしすべて焼き鳥にしてしまう。
などの失態を演じた過去があり、
結局仕事をやめたらしい。
「やっぱりそういうヒトは、
そういう事態を招くんだよねえ」
「こういう店に来たりとかな」
なんつって馬鹿笑いする。
しばらくして、
まだ来たのは卵焼きだけである。
そして「ラストオーダーです」と来た。
「まだなんも喰ってないじゃねーかあー!!」
と、叫びつつ、お茶漬けを頼む。人数分。
お茶漬けだけすげーどんぶりで来たりしてね。
なんて言ってまた馬鹿笑いする。
するとお新香だけいきなり来る。
山のように注文したものはぜんぜんこない。
「やっぱりやばいと思ったんだよなあ、
生け簀見たとき。だってエビが
みんなひっくり返ってるんだもん」
と、ひとりが言う。
これでは生け簀ではなく死に簀である・・
あまりのことに、怒るよりわらってしまう。
ああ、この店にはまた来てしまいそうだ。
と、なぜか思う。
そのときはまだ、帰りに
あまりの勘定の高さに目の玉が飛び出ること
など予測もしていなかったのだった・・・