ヤング・ヴァロッティ1/6中全音律の調律計算をしろと言われたらこうする
はい、たまには音楽の話をしようか(音楽というか数学というか算数なんですが)
これは1x年前に発生した事実をうろ覚えの記憶から再現したエピソードになっています。ついでにこれを見れば表題の音律のチューニングができます。やったね。(アコースティック楽器だともう1工程必要とは思いますが
用語に関しては今回特に解説しませんので各自調べてください
発端
200x年、某日某団練習後
せんせい・副団長「さとう、ちょっといいか」
ぼく「なんすか?」
副団長「次の演奏会、オルガンと(ヴィオラ・ダ・)ガンバお願いするじゃない」
ぼく「はい」
せんせい「複数曲、複数調、転調あるから純正律無理なわけだけど平均律でやりたくないんだ」
ぼく「なるほど」
副団長「オルガニストの先生と相談して『ヤング・ヴァロッティ1/6中全音律』がよかろうという話になったんだけど」
副団長「オルガンレンタル会社側からチューニングプラン(名称忘れた)をくださいって言われたのよ」
ぼく「なんすかそれ」
せんせい「ハーモニーディレクターの鍵盤それぞれに何セント上下させるかってあるよな、アレと同じもののことだ」
ぼく「要求されたものは理解しましたが、それで何か?」
せんせい「さとうが計算するんだ、できるだろ?」
ぼく「ファッ!?」
内容(読まなくていいです)
ぼく「どういう調律か知らないんですが???」
せんせい「それはこれから説明する」
せんせい「ピタゴラスコンマ23.46セントあるよな」
ぼく「ありますね」
せんせい「これを1/6にすると約4セントだ」
ぼく「はい」
せんせい「これをCまたはF基点で6回の完全五度から差し引く、つまり平均律より約2セント低い完全五度だ」
せんせい「残りの6回の完全五度は純正で取る、つまりピタゴラスと同じだ」
ぼく「はい」
せんせい「そうすると白鍵領域では平均と全音(=長2度)は完全5度2回だから約4セント下がって、長3度はその倍だから約8セント下がる」
せんせい「純正長3度は平均律より13.76セント低いからそれよりはずれているけど平均律よりはかなり近くなるし、ある程度転調に対応できる」
ぼく「理解はしました」
せんせい「F回しで」(狭い五度はF-H間という意味
せんせい「あと、A=415HzにするからAが±0になるようにしてくれ」
ぼく「ハイ…」
ぼく「で、いつまでですか?」
副団長「可及的速やかに(どうせ日を空けるとお前忘れるだろ)」
ぼく「ハーイ」(この時点で23時回っています
内容(こっちを見てください)
というわけで口頭で説明された内容は前章の内容なんですが、正直わかる人でも読みたくなくなると思うので。もう少しわかりやすくするために五度圏で書きます。まずリファレンスにピタゴラス律
ピタゴラス音律の場合
要するに5度を極力完全に取って、
7オクターブ(128倍)と完全5度12回(1.5¹²=129.7463…)がずれるので
この差(約23.46セント)をどこかに押し込む、という音律です
1/6中全音律
ピタゴラスコンマ(約23.46セント)を1/6に均等分割してF~Hの間に分配するという音律です。
『せんせい』の説明にもありましたが、長3度は平均律より約8セント低くなって平均律(約13セント高い)よりかなりマシになります。
その代わり5度は約4セント低い
計算と結論
ピタゴラスコンマと純正完全五度の値があればあとは加減乗除算(乗算いらねぇな)だけでできます。検算に指数と対数が使えた方がいいですけどね
という感じで結論を提出して終了、お疲れさまでした。
確かその夜のうちにやったんじゃなかったかな。
なお、計算(足し算)の間違いがあって、指摘されるという展開が残っていました。(ケアレスミスは多い方です)
面白いのは純正五度と狭い五度が同回数はいる音程間隔は平均律と同じになることですね。
具体的にはCis-A(各2回)とかAis-C(各1回)とか。
補足
ヴァロッティ(Francesco Antonio Vallotti 1697-1780)はイタリアのオルガニスト
本来の氏の音律は狭い五度の最後の1回は純正よりスキスマ(ピタゴラスコンマとシントニックコンマの差、約1.95セント)狭いというもので現代一般に認識されているものとはやや異なるらしいです。
ヤング(Thomas Young 1773-1829)はイギリスの物理学者・医者
ヤング率(フックの法則が成立する弾性範囲における同軸方向のひずみと応力の比例定数)に名が残っており、他に色覚や乱視の研究をされていたそうです。
で第2律がヴァロッティとほぼ同一なので1/6中全音律は纏めてこの二人の名を添えられるらしいです。
ちなみにヴァロッティは狭い5度がF-H、ヤングはC-Fisだったらしいです。