料理___バイキング

闘アレ生活(6) 〜バイキングは意外としんどいぞ篇

57歳のある日、いままでアレルギーなどひとつもなかったボクが、突然アニサキス・アレルギーになった。そして、ほとんどすべての魚介類が食べられなくなった。いまは魚系のダシやエキスまで避けている。
そういう生活とはいったいどういう感じなのか、ちょっとだけリアルに知ってもらうために、ちょぼちょぼ書いてくシリーズです。
暗くなる話も多いけど、リアルに知ってもらうのが目的なので、申し訳ありませんがご理解ください。
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ホテルの「バイキング」。
ブレックファストとか、ランチとかにある食べ放題のあれ。

別に海賊(バイキング)がこういう形式で食べてたわけではない。
この形式をバイキングと呼ぶのは日本だけであり、海外では通じない。

正式にはスモーガスボード
ホテルによってはビュッフェ(フランス語で立食の意)と呼ぶところも多い。

昔、帝国ホテルで始まった形式で、この形式を初めてやった「インペリアル・バイキング」というレストラン名が語源となっている・・・なんてウンチクは今回の趣旨ではないので省く。

とにかく、いろいろな料理を好きなだけ選ぶことができる、という、思わず知らず食べ過ぎてしまう「魔の形式」である。

そう、食べ過ぎちゃうくらいは楽しい。
それがバイキング。

で、このバイキングであるが、アレルギーの人にはなかなかつらいのである。

「たくさんの料理の中から選べるんだから、食べられる物も多くなるし、アレルギーの人に向いているのではないか」と思われがちだけど、少なくともボクはわりとつらい。

数多くある料理を、すんごいチェック魔になってひとつひとつチェックしないといけないのだ。

その過程で、食事の楽しさが粉砕される、のである。


実例を出そう。
ある山岳地帯のリゾートホテルのことである。
(海沿いのリゾートホテルだったら、魚介類を売りにしがちなので、きっともっと食べるものがなかったであろう)

ランチ・バイキングを友人たちと団体で利用することになり、前もって電話で「こういうアレルギーです」ということをホテル側に伝えておいた。

※ 前もって連絡しておかなかった場合、その場で忙しいスタッフを捕まえて細かく聞かないといけないので、もっと大変だしもっと申し訳ない気持ちになるし、もっとつらい気持ちになる。


すると、レストランの入口でA4の紙を2枚渡された。

さすがいいホテル。ちゃんと下調べしてくれている。
基本のアレルゲン以外にもダシなどを厨房にヒアリングしてくれている。

画像1


線を引いて消してあるもの以外が今日のメニューで、赤い丸をしてあるものが「魚介類およびダシ・エキスを使用しているもの」ということである。

「丸印を避けてお料理をお選びください」
「・・・はい、ご丁寧にありがとうございます」

席についてよくよく読んでみる。
いやぁ、予想はしていたけど、なかなかきついっすね。

ダメなのが、以下。

ラーメン(スープがNG)
そば(スープがNG)
うどん(スープがNG)
ヤシオポークの鉄板焼き(かかってるソースがNG)
あさりと季節の野菜パスタ(魚介なのでNG)
揚げ出し豆腐(ダシ使用なのでNG)
海老フライ(魚介なのでNG)
タコ焼き(ダシ使用なのでNG)
お新香(ダシ使用なのでNG)
きくらげの酢の物(ダシ使用なのでNG)
肉じゃが(ダシ使用なのでNG)
季節のまぜごはん(ダシ使用なのでNG)
すいとん汁(ダシ使用なのでNG)

丸印がついているのは以上であるが、よくよく見てみると、丸印以外でも明らかにダメなヤツがある。

白身のフリットスイートチリソース(白身だからNGだよね)
マーラー春雨(丸印はついてないけど『ダシが入ってる』と書いてあるw)


・・・うーん、なんというか、こんな感じで「抜けが見つかった」時点で、もう食事の楽しさが霧散するのである。

チェックって、脳のそういう場所を使うせいか、ワクワク感とかと全然別の気分になってしまうのだ。


でも仕方ない。
とにかく目を皿にしてチェックしていく。
命に関わるからね。

・・・んん?
まだ怪しいのがあるぞ。

野菜たっぷりすき煮

すき煮はねえ・・・経験上、わりとダシを使ってるんだよなぁ。

好物なので、実際に料理を見ると取りたくなってしまう。
うん、あらかじめチェックしてもらおう。

「申し訳ありません、この『野菜たっぷりすき煮』も、ダシとかエキスとか使っていないか、念のためもう一度聞いていただけないでしょうか」

「あ、は、はい、承知しました。いま厨房に聞いて参りますので、少々お待ちください」


・・・お忙しいとこ、すいません。
   なんかクレーマーみたいで申し訳ない・・・


こんなチェックするのを聞かれて友人たちの食事を盛り下げたくないので、立ち上がって厨房のほうに向かい、そこで待つ。

「お待たせしました・・・申し訳ありません。このお料理、ダシを使っている、ということで・・・」

・・・ですよねー。
   というか、調査漏れは勘弁してください(泣)


こうなると、完全に「チェック魔」にならざるを得ない

次に怪しいのは、これ。

ビーフとごろごろ野菜のカレー

経験上、わりと日本のカレーは和風ダシを隠し味に使っていることがある。
どうなんだろう・・・

これも厨房に確認してもらったら、「ダシかエキスを使っている可能性を否定できないということで」と返ってきた。

・・・やっぱりな。
   危ない危ない。

念のため、最後と思ってこのA4をもう一度だけ見てみたら、もうひとつあった。

「あ、いっぺんに訊かずにすいません。
 この『和風醤油ゴマドレッシング』は大丈夫ですか?」

「・・・・・・少々お待ちくださいませ」

あー、ごめん・・・

結局、これも疑わしい、ということでNGになった。



もう、なんというか、バイキングの楽しさがとっくに粉砕されているのを、わかってくださるだろうか。

もちろんホテルはわるくない(抜けはあったが)。
とても丁寧な対応だ。

でも、細かくチェックしながら食べても、なんか味気ないのだ。全然楽しくないのだ。

しかも、友人たちがいろんなものを自由に取っているのを横目に食べないといけない。

うぅ・・・



ということで、食べられる物は、以下であった。

野菜サラダ系
焼き野菜
手羽先のスパイシー焼き
チキンのトマト煮
パングラタン
ドフィノワ(じゃがいもグラタン)
ピザ
ポテトフライ
唐揚げ
ハンバーグ
焼きそば
コーンスープ

それと、ご飯、ですかね


これはこれでもちろんありがたい。
これだけ食べられるものがあれば、ランチとしては充分成り立つ(まぁハンバーグとかピザとかほとんど冷凍食品っぽかったけど)。

そして、くり返すが、ホテル側の対応に文句はない。
この珍しいアレルギーに対して、丁寧に対応していただいたと思う。

でもなぁ・・・


結局、あんまり食べたい料理がなかったので、皿にサラダを超大盛りにして友人たちの中に座ったが、目移りするので、なるべく下を見てさっさか食べた。

周りのみんなにも気を遣わせてすまんかった・・・



複数アレルギーがある人とか、もっと大変だろう。

バイキングって、たくさんの料理が並ぶ分、ホテルの人に伝えてチェックしてもらうのは大変こちらの気持ちの負担になるものなのである。

これもアレルギーになるまでわからなかった。


ということで、バイキングは意外と気持ち的につらい、というお話でした。

この「闘アレ生活」シリーズは、アレルギーの人がどういう毎日を送っているかを知ってもらうために敢えて書いているので、読んでいて不快かもしれないけど、そういう趣旨なのですいません。

それではまた。


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さとなお(佐藤尚之)
古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。