闘アレ生活(7) 〜パーティを抜け出してコンビニ前でゆで卵とチーズをかじる篇
57歳のある日、いままでアレルギーなどひとつもなかったボクが、突然アニサキス・アレルギーになった。そして、ほとんどすべての魚介類が食べられなくなった。いまは魚系のダシやエキスまで避けている。
そういう生活とはいったいどういう感じなのか、ちょっとだけリアルに知ってもらうために、ちょぼちょぼ書いてくシリーズです。
暗くなる話も多いけど、リアルに知ってもらうのが目的なので、申し訳ありませんがご理解ください。
「闘アレ生活」の過去ログや他記事はこちら。
この厄介なアレルギーになって以来、パーティや懇親会は基本的にお断りしている。
主催者の方に個人的な事情をお話ししてアレンジしてもらうのも気持ちが臆するし、お店側にもボクひとりのために違うメニューで対応してもらうのもわりと気が重いのである。
「いや、あなたみたいに食べ慣れた人が臆してしまったら、世の中の食物アレルギーの人たちはもっと臆してしまいます。食物アレルギーの人が楽しくどこでも食事を楽しめるよう、堂々と主催者やお店に主張してください!」
と、言われることもあるし、その意味もよくわかる。
でもね。
アレルギーになって1年半、まだ初心者ということもあり、心がわりとヤワで、持たないのですよ。
前回、バイキングについて記事を書いたんだけど、パーティもほぼ一緒。
食事選択肢が多岐にわたると、その確認だけで疲弊し、頭がぼんやりし、何か尖った物がグサグサ胸に刺さるのである。
堂々と、(いい意味で)厚かましく主張できるまで、あと何年かかるかな・・・。
そんなボクだけど、パーティに参加するときも、たまにある。
仕事の義理もあり、ある立食パーティに参加したときのことである。
「まぁ魚料理もあるだろうなぁ」とは思いつつ、「とはいえ唐揚げとかサンドイッチとかもあるだろうから、それらをつまんでおけばいいや」と、楽観的に考えて参加したのだ。
ところが!
そのお店は和食系創作料理っぽいお店だったようで、並んでいる大皿に魚料理やなんかいろいろ煮込んだような料理がやたら多いのである。
・・・う、イヤな予感がする。
これはやばいパターンだ。
大皿にお惣菜とか並んだ店だと、ほとんどの料理でかつおダシなどを使っているので、食べられるものが極端に少ないのである。
しかも美味しそうだ・・・やばい・・・急いで美味しそうとか思う思考回路を遮断する。
さて、と、心を落ち着けて。
主催者の手を煩わすのも何なので、お店の人に聞いてみよう。
わりと人数の多い立食パーティだったので、ホールの担当者も忙しそうなんだけど、タイミングをみて話しかけて、ちらりと聞いてみることにする。
「お忙しいところ申し訳ありません。実は魚系のアレルギーがありまして、魚介類全般、そしてダシやエキスまでも食べられないんです・・・」
「え?(と、一瞬たじろぐ)・・・あ、そうですか!・・・な、なるほどぉぉ・・・少しお待ちください?」
驚かれるのにはもう慣れた。
普通対応したことがない珍しいアレルギーなのだ。
しばらくして戻ってきて、もう少しいろいろ聞かれた。
「ええと、ダシもダメなんですよね? そうですか、ええと、海老やカニは? あぁ・・・そうですか・・・あ、キムチもダメですか・・・おでんとかの練り物も・・・そうですか・・・・・・ええと、もう少しお待ちください?」
・・・で、結果、ボクも驚いたんだけど、「念のためではありますが、デザート以外すべて食べていただけません」というのが答えだった。
アレルギーを念頭に作っていないのでどれにどう混じっているか保証ができないし、うちはダシを多用する創作料理なので、ということだった。
そりゃそうだ。
すいません。
事前の連絡を怠ったボクが悪いです(まぁお得意様関係だったので確認しにくいのもあったのだけど)。
しかし・・・そうか、全滅か・・・w
さすがに全滅は少ないパターンだな。
くりかえすが、仕事の義理もあっての立食パーティだ。
最後までその場にいる必要があった。
・・・仕方ない。
こんな状況でも腹は減る。
いい頃合いを見計らい、こっそり途中で抜け出して、近くのコンビニに行った。
実はコンビニ食品も全部が安全というわけではない。
コンビニで売っている加工食品の多くに魚介エキスとかが入っている(サラダにも意外と入っている)。
だからわりと選択肢は少ないのだが、その日は、確実に安全でお腹に溜まって栄養もあるということで、「ゆで卵」と「6Pチーズ」を買った。
コンビニ前のガードレールに座って、月を見ながらボソボソ食べる。
こういうときは、自己憐憫スイッチが入らないように、短い時間だとしても、イヤホンで落語を聴いたりする。
・・・んー、パーティ終わったら、どっかにひとりで日本酒飲みに行こう。