アートの教養を身につけたい3つの理由
数日前から「1000日チャレンジ」というものを始めています。
このチャレンジの第一の目的は「アレルギーを治してしまえ!」なのですが、自分にとって二番目の大きな目的は「1000日でアートを教養として身につけたい」ということだったりします。
(具体的には「美術検定一級」を目指しているけど、それはあくまでもわかりやすい達成感のため)。
ここで言うアートとは、建築、彫刻、絵画、写真、音楽、詩、ダンス、演劇などのファイン・アートを指しています。
その中でも特に、絵画、写真、彫刻、建築についてちゃんと学びたい、と思っているんですね(ざっくり「美術」という領域です)。
なぜ、58歳にもなって、いまさら教養として身につけたいのか。
その理由は、主に3つ。
(1) アートを見る・語るときの軸が自分にないから
いままでもわりと多くのアートに触れてきました。そしてこれからも数十年にわたって、ボクはアートをいろいろ見ていくと思います。
ただ、まだ「軸」を持っていない。
アートの見方についての「軸」を持ってないと、その時々の単なる印象に左右されてしまい、きちんと自分の内部に落とし込むことができないんです。
たとえば小説だと、ボクの中での大きな軸のひとつは「異化」です。いつも「異化」を意識して読んでいるところがあります。その切り口から小説を切っていくと、きちんと整理されて自分の内部に入ってくる。
平たく言えば「自分なりの見方」でしょうか。
そういうものを、ボクはまだアートに対して持っていないんですね。
この機会に、それをちゃんと持ってみたい。
(2) アートを単に「美しい」とか「格好いい」とか「かわいい」という感性や感覚だけで見ても、何もわからないから
その作品が描かれた時代の背景や必然性がわからないと、アーティストが作品に込めた本当の意味はわかりません。
たとえば、サッカーで言うなら、「いまのシュートはすごいなぁ」「すげーキラーパスだなぁ」という表面的な感想を言っているだけだと、いつまで経ってもサッカーはわからない。
どういう戦略のもと、どういう狙いでこのパスを出したのか、それは全体の中でどういう意味を持つプレイなのか、など、そのプレイの背景や必然性を知らないと、もうひとつ深い世界に行けない。
さらに言うと、そのチームの過去の歴史やプレイスタイルなどを知ったり、そのプレイヤーのそれまでの経歴やプレイも知っておくと、より深く玩味できる。
アートについても同じだと思っています。
単に「美しい」とか「格好いいね」とか「きゃーかわいい!」だけでは、アートの表面的な部分しか見えていない気がします(そういう楽しみ方も否定はしませんが)。
アートについての本をいろいろ出されている木村泰司さんは、「芸術は読むものである」「芸術を知るには(いったん)『主観』と『感性』を捨てよ」みたいなことを言っています。
この考え方に深く共感しています。
アートを読むために必要ないろいろなことがボクは足りていない。
「世界史」や「日本史」、「美術史」や「宗教史」、それらの元になったそれぞれの国の「文化」や「宗教」や「哲学」などの包括的な知識が足りなさすぎます。
それらをちゃんと自分に整理してインストールし、もっともっとアートを(裏も表も)楽しめるようになりたいと思っています(もちろん知識をインストールしたあとは感性や感覚で楽しみます)。
(3) アートを見ながら、きちんと「生と死」に向き合いたいから
いや、別にすぐ死んじゃうわけじゃないんだけどw
やっぱり、自分の後半生の大きな課題のひとつは「毎日毎日、死に向かって生きていることについて、どう考えるか」だと思うんですね。
アートは、その時代時代のアーティストが、「生とは何か」「死とは何か」を熟考したうえで長時間かけて表現されたものだとボクは思っていて、しかもたとえば絵画なら、たった一枚のキャンバスの上にそれは表現されているわけです。
そこに表現されたアーティストの深い洞察や想いを、ちゃんと受け止められる自分でありたい。
ボクは、小説や映画や歌などの「ストーリーや文脈で親切に語られるもの」や、検索などの「すぐに説明されるもの」に馴れすぎています。
だからアートからの無言のメッセージを受け取る力が衰えている実感があるんですね。
そこをこの機会になんとかしたい。
もちろん、勉強していくに従って、理由も目的も変わってくるかもしれないけど、スタート時点では上記のような3つの理由でアートを勉強しはじめました。
続くかどうか不安だったので、1000日チャレンジに先駆けて二週間ほど名作美術の本や美術史の本などを読み漁ってみましたが、「うん、大丈夫っぽい。これなら続くっぽい」と思うくらいはエキサイティングでした。
何歳になっても、広く深くいろいろ知っていくのは楽しいですね。
次回は、いまどうやって勉強を進めているかを書いてみたいと思います。
ついでに言うと、これはボクの中で「1/100を増やす」という活動でもあります。(下のリンク)
1000日後、それなりにアートの知見が深くなった頃、自分の人生でどういうかけ算が起こっているか、それもちょっと楽しみです。
※タイトル画像は「塩田千春展『魂がふるえる』2019年森美術館」
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