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マーラー 『交響曲第4番』(インバル/フランクフルト放送交響楽団)

人生に欠かせないオールタイムベスト音楽をいろいろと紹介していきたいと思います。ジャズ、クラシック、ロック、ポップス、歌謡曲、フォーク、J-Popなど、脈絡なくいろいろと。


マーラーの中でも第4番が一番好きだというわけではないのだけど、このインバル指揮の「交響曲第4番」はくり返しくり返し聴いた一枚です。

それには理由があって。
それは、ボクがオーディオを趣味にしているという理由。

特にオーディオに凝っていた時期は、20代30代。
ケーブル1mに3万円つぎ込むとか、信濃電気の電源コンディショナーを買うとか、ちょっと人に言うと引かれるくらいは凝っていました(まぁそのことはそのうち書こう)。


で、なぜオーディオ好きだとこのCDを愛聴するのかというと、「録音」が素晴らしいんですね。実に。

このCDが圧倒的に偉いところは、「録音にマイクを2本しか使っていない」というところ。

インバルはフランクフルト放送響とマーラーの全交響曲を録音していて、その全集はボクも持っているんだけど、純粋にマイク2本だけというのはこの「交響曲第4番」だけなのです。

録音技師はピーター・ヴィルモース氏。
制作はDENONの川口義晴氏。

あなた方は本当に偉い!


・・・って、いったい何に興奮しているのかわかりませんよね、すいません。

ちょっとだけボクの好きな「音」について話しをすると。

ボクは、平面型スピーカーによる「音場」重視の音作りが大好物なのです(下の写真参照)。

※この写真は我が家。在りし日のアポジー・カリパーシグネチャーという名スピーカー。パワーアンプはクレルKSA80。それにチェロのENCOREというプリアンプをつなげてた。CDプレーヤーは前のシステムの名残のマッキントッシュだったり、フィリップスだったり。

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音場重視の平面スピーカーだと、従来の2ウェイ〜4ウェイのスピーカー(皆さんが普通にスピーカーと聞いて想像する形をしたもの)と違って、2つのスピーカー間に小さなステージがホログラムのように浮かび上がるんですね。

ステージの奥行きや演奏者の定位がピンポイントで決まる音作り
ボクは特にその快感を追い求めているわけです。

例えばジャズボーカルを聴くと、歌手の口がスピーカー間中央にくっきり浮かび上がる

それも、小さくリアルな口が空間にポツリと現れる感じ(大きな口が浮かび上がるのはダメなスピーカー)

そしてその左側にちょっと離れてピアノ、右のちょっと奥まったところにベース、と、各演奏者の立ち位置までくっきり見える。

もっと言うと、4人のコーラスとか聴くと、4人の口が等間隔に並ぶ

そういうのが理想なのです。


オーケストラだったら第1バイオリンが左前にそれぞれの奏者の存在がわかるような感じでくっきり見え、ティンパニーは右奥のほうに遠く存在する、というように、各演奏者がくっきり見えてくるのが理想。

感じとしては、二階席最前列で聴いているイメージ。
音としては客観的なのだけど、バランス良くクリアに聴ける。

そしてそれは、ラッパ型の普通のスピーカーではなかなか難しく、平面型スピーカーの得意分野であったりするのです。


ただ、平面型スピーカーさえあればそれでいいか、というと、全くそんなことはないんですね。

そのためには「録音」がそうなっていなければいけません。

つまり、アーティストや録音技師たちが、そういう音場を意識して作ってないと、いくら平面型スピーカーだとしても、再現できないのです。



クラシックの演奏会などでレコーディングをしているのを見たことありませんか? 

テレビ中継なんかを見るとわかるけど、レコーディング用(放送用)のマイクをいっぱい宙にぶら下げているでしょう?

あれはバイオリンの音やチェロの音やトランペットの音などをそれぞれ別のマイクで拾ってるわけです。で、あとでそれをスタジオでバランス良くミックスするわけです。

このやり方でレコーディングされたものはボクの好きな音場感がきれいには出ないのです。各演奏者の立ち位置などが「ぼんやり」になることが多いわけ。

だって、それぞれの楽器の音を拾って、スタジオでミックスするなんて、なにより自然じゃないじゃないですか。

「音場重視派」をしては、「もっと圧倒的に少ないマイクで、ステージおよび客席のベストポジションから録音したら、それぞれの定位がピンポイントで決まり、もっと音場感も出るのになぁ」と常に思ってたわけです。


で、あるとき、ボクはこのアルバムの存在を知るわけですね。

「なんか、マイク2本だけで録ったオーケストラのアルバムがあるらしいぞ」と。

ボクはその情報を得てすぐこのCDを買い求め、(当時の)愛機である平面型スピーカー、アポジー・カリパーシグネチャーで早速鳴らしてみたわけです。


・・・いまでもそのときのことを覚えてる。

あれは関西勤務中の苦楽園口の無駄におしゃれにしてた部屋。
夜中にひとり、初めて鳴らしたのです。

目の前にステージがぽっかり浮かび上がる。
ピンポイントで各演奏者の立ち位置がわかる。

鳥肌ぶつぶつだった。
言うならば、サントリーホールの2階最前列真ん中で聴いている感じ。こりゃすごい! すごすぎる!


それ以来、何回も何回も繰り返し聴きました。
誰の何のアルバムかはあんまり意識してなかった。
純粋に音が気持ちよくて、その定位が気持ちよくて、そのホログラムのようにオーケストラが浮かび上がる様子が気持ちよくて、何回も何回も聴きました。

でも、そのうち聴き慣れてきます。
だんだん、音よりも、「曲」が、「演奏」が、耳に飛び込んでくる。

それがボクのマーラーとの(実質的な)出会いでした。

「いいな、マーラー。
 いままであんまりマーラーとか聴いてこなかったけど、
 ちょっと他の交響曲も聴いてみようかな・・・」

ボクはCD屋に出かけ、「インバル指揮のマーラー」を、一枚、また一枚、と買っていったのでした。

第4番以外も補助マイクを使用しているだけで基本的にはマイク2本。素晴らしい録音の全集でした(純粋にマイク2本だけ、というのは第4番だけ)(結局最終的には全集を買いました)。

だから、ボクにとっては、マーラー=インバル、です。
インバルの端正かつ静かに熱いマーラーをくり返し何度も何度も聴いたから。


後で知ったんだけど、この第4番は比較的わかりやすいマーラーでした。

第4番から入ったのは偶然としても、マーラー初心者にはとても馴染みやすい交響曲から入れて良かったな、と思います。

(もしあなたがマーラーを聴きはじめてみたい、というのなら第4番から入るのをオススメします)

録音の形式からマーラーに入ったなんて世界でもボクだけかも知れないけど、なんでもいいんです。結果として入って良かったんだから。


いまではマーラーはボクの大好きな作曲家のひとりになりました。

今では他の指揮者のものも買って聴き比べたりしています。
小澤とかハイティンクとか。

だけどボクにとってマーラーは常に「インバル/フランクフルト/DENON」が原点なのです。

いまではアポジーもこの手を離れ、いまは日本の小さなメーカー製の平面スピーカー「FAL」を鳴らしています。
(途中、Vienna Acousticsのラッパ型を聴いていたけど、結局平面型に戻りました。でももうアポジーは生産終了していて、いろいろ放浪した結果、FALに落ち着いている状況)

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平面スピーカーが(はやりもあるのでしょうか)ほとんど売らなくなってしまい、いろいろ探した中でこの「FAL」に行き着いたのだけど、これもなかなかいい平面スピーカーで、いまはいろいろ鳴らしてその特徴とクセを掴んでいる最中です。

そして、もちろん、相棒はこのCD。

マーラーの第4番がひたすら気持ちよく鳴らせないと、ボクにとってはまったく意味のない平面スピーカーになってしまいます。

さて、またこのCDを聴いて、もうちょっとセッティングを調整しようかな・・・(楽しすぎるw)




古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。