味噌汁をボク用に作ってくれた渋谷『とんQ』 〜アレルギー対応が嬉しかったレストラン
ある日突然アニサキス・アレルギーになり、アナフィラキシー・ショックで死にかけたボクは、その夜を境にほとんどの魚介類が食べられなくなり、今ではダシやエキスも避けて暮らしている。
外食が最大の趣味で、鮨や魚が大好きだったボクにとって、もう筆舌に尽くしがたい辛さなのだけど、それでもお腹はすくので、昼に夜にレストランに行く。そして「もう二度と外食したくない」と思うくらい対応に傷ついて帰ったりもする(その体験は「闘アレ生活」シリーズにいろいろ書いています)。
ただ、そんな毎日の中でも「惨めにならずに気持ちよく食べられ、気持ちよく帰れたレストラン」がいくつか存在する。ここでは、そういう「嬉しい思いをしたレストラン」を少しずつ書いていこうと思う。
なお、取り上げた店が、ボクと違う食物アレルギーについても同じように対応してくれるかどうかはわからない。また、たまたま対応が良い店員さんに当たった、ということもあると思う。その辺をご承知おきの上、お読みください。
今回は「ランチで味噌汁を作り直してくれた店」のお話だ。
これは、いままでで初めての対応だった。
ほんとうれしかったので、書き記しておきたい。
ボクは魚介類がダメになってしまったので、かつおダシで作る味噌汁が飲めない。
昆布ダシとかは大丈夫なのだが、レストランで出す味噌汁はほとんどがかつおダシである。だから飲めない。まぁそれは仕方がない。
とはいえ味噌汁は好きなので、いつもとても寂しい思いで「あ、定食に味噌汁はつけなくて結構です」とオーダー時にお断りしているのである。
そんなある日、ランチで無性に「とんかつ」が食べたくなった。
ちょうど渋谷駅にいたこともあり、12月5日にオープンしたばかりの「東急プラザ渋谷」のレストランフロアに行ってみたのである。
店内マップによると『とんQ』というとんかつ店が入っているので、そこで食べよう、と思ったのだ。
チェーン店のようだけど、外観は高級で、わりとおいしそうだった。
「とんかつ定食」の重要な脇役である「熱々の味噌汁」。
それは最初から諦めていた。
贅沢は言わない。とんかつが食べられればそれでいい。
どうせなら美味しいのが食べたいので、この店イチオシの「やまと豚」を使ったロースカツ定食(200g)を頼むことにした。1980円。ランチとしては高いが、とんかつとしては適価かと思う。
入店したらすぐ店員さん(女性)が来た。
まずはテーブルにつかず、自分の状況を手短に説明する。
ランチ時で混んでいるうえに、テーブルについてから「当店では対応できかねます」と言われることも多いので、座る前に入口で説明する必要があるのだ。
「すいません、ボク、食物アレルギーで、サカナ類がすべてダメなんです。ダシもエキスもダメなんです。わりと厳密に。
なのでお味噌汁がダメなのは仕方ないのですが、他にもソースとか漬物とかに使われてたりするでしょうか?」
ダシやエキスを「ソース」にも「漬物」にも使っていたら、ボクがこの定食で食べられるのは「とんかつ本体」と「白いご飯」だけになる。
それではあまりに味気ないので、もしそうなら店を出ようと思ってた。
また、返事にもわりと身構えた。
店員さんの反応によっては簡単に傷ついてしまうからだ。
いや、ナイーブでごめんw
でもね、日本の秋冬の魚料理や鍋料理はおいしそ過ぎて、精神的に毎日毎日かなりやられている。もうすでにウツ寸前なのだ。
そんな状態で店員さんにあからさまに迷惑がられたり、「え!」とか絶句されたり、冷たくされたりすると、かなりダメージを受けてしまうのである。
・・・でも、この店員さんの対応は素晴らしかった。
「はい。はい。はい。わかりました。急いで厨房に訊いてまいりますので、こちらにおかけになってお待ちいただけますか?」
と、まっすぐボクの目を見て、憐憫も同情も感じさせず、かといって淡々としすぎず、普通に受け答えをしてくれた。
あたかも「そういう方、当店では普通にいらっしゃいますよ。大丈夫です」と伝えてくれているような目。
あぁ、よかった。
いい店員さんでよかった。
ホッとしつつ、店員さんを待った。
で、彼女、戻ってきて、こう言ったのである。
「お味噌汁はかつおダシを使用しておりますが、料理長が『だしを使わずにお作りできます』と申しております。他のもの、たとえばソースやお漬物も、ダシやエキスは一切使っておりません」
「・・・え?・・・・・・お味噌汁、飲めるんですか?」
虚を突かれてしばらく返答できなかった。
意外すぎる対応だったのだ。
え? 作り直してくれるの?
ボクのためだけに?
このくそ忙しいランチ時なのに?
「はい、お出しできます。
アスパラと湯葉が具になるそうですが、大丈夫でしょうか?」
・・・アレルギーになってから1年半経つけど、この対応はまったく初めてだった。
普通はお味噌汁を抜いて出されてオシマイ(値段はいっしょ)。
なにか代替物を出してくれる店すら(ランチにおいては)ほぼない。
うもももももも。
なんなんだ、このうれしさは!
もちろん昆布だしなどで作る時間はないだろう。
訊いたら「味噌だけで作ります」と教えてくれた。
うん、そう、知ってる。
アレルギーになってから家で作るようになってわかったんだけど、ちゃんとした味噌を使いさえすれば、ダシを取らなくてもおいしい味噌汁は作れるのである。
そうかー。
作ってくれるのかー・・・・・(感慨深い)。
読んでくださってる方はわからないと思うけど、これがどれだけレアでうれしいことか。
そのくらい簡単でしょ、やってくれる店もあるんじゃない、とか思うかもだけど、マジでこんな対応、初めてなのだ。
ランチで、味噌汁と共にとんかつ食べられるなんて、もう一生ムリかと思っていたよ・・・。
その味噌汁がこれである。
「アスパラと湯葉の、ボクだけのために作ってくれたお味噌汁」である。
ちょっと脂が浮いているが、これは豚が少し入っていた。ダシのかわりのコクを出そうとしたのだと思う。
食べている間に、料理長と思われる方がテーブルに来て下さり、「お味はいかがですか? ダシは使ってませんが、ちゃんとおいしいと思います」と挨拶してくださった。
その挨拶もうれしかったし、実際に味も良かった。
でも、それよりなにより、面倒臭がらず、ボクを普通のお客さん扱いして、ひと手間かけて味噌汁を作ってくれた、そのお気持ちがうれしいです! 本当にうれしいです!
ちゃんとそうお伝えした。
え? とんかつはどうだったのかって?
こういう気遣いをしてくれる店が、おいしくないわけないではないか。
隅々まで気遣いの行き届いた、とてもおいしいとんかつと、白いご飯と、キャベツに漬物、だった。
気遣いも味のうち。
味だけで勝負する名店より、ボクは「とんQ」での"時間"を選ぶ。
帰りも、レジで会計を終わって厨房を振り返ったら、対応してくれた店員さんと料理長がこちらを見てニコリと笑い、頭を下げてくれた。
こういう対応ひとつで、急に世界は明るくなる。
もうつらすぎるから外食なんてやめようかと思っていた気持ちも少し前向きになる。
ありがとう、東急プラザ渋谷6階の「とんQ」さん!
他の食物アレルギーに対する対応や、他の障害に対する対応は、ボクは経験しようがないけれど、これだけの対応がこれからも保たれるのであれば、きっと素晴らしい対応をしてくれるはずである。
とんかつ とんQ 東急プラザ渋谷店
東京都渋谷区道玄坂1-2-3 6階
03-5422-3565
アクセス
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筑波が本店なんですね。
温かいサービスで人気のようですね。
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ブランドビデオがあった。
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