Day281:「天才はディープ・プラクティスと1万時間の法則でつくられる」ー才能が排出されるプロセスは全て同じ原理で成り立っている
ダニエル・コイル著・パンローリング(出版元)
「スキルとは神経回路を覆い、特定の信号に反応して成長する細胞の絶縁体である」
全ての行動は、神経線維を伝わる電気信号の結果。
人間の脳は、シナプスで接続された神経という千億もの電線の束。
人間の潜在能力を最大限に発揮させるメカニズム(最先端の神経学)
Q.並外れた才能はどこから?
Q.複雑なスキルを習得するために、なぜこれほど時間がかかるのか?
Q.私たちが才能の伸ばしていくためにできることは?
■スキルを伸ばしてくための3つのポイント
■スキルの鍵
スキルの鍵は、「ミエリン」(髄鞘)、白質
ミエリンは、神経繊維を覆い、
信号の力、スピード、正確さを高める絶縁体。
インパルス(電気信号)の放出を防ぎ、信号をより強く速くする。
厚くなるほど、信号が速く送られ、ミエリンに覆われていない繊維に比べて100倍の速度になる。
(ディープ・プラクティスによって、「ミエリン」を厚くしていくことで、スキルが上達する。つまり、一朝一夕で厚くなることはない)
■白質とスキル
・シンシナティ小児病院の研究結果:
白質の容積および密度が増えると、IQが高くなる。
・2000年ターケル・クリンバーグが読解力と白質の増加を、2006年には、バルセロナ、カロリンスカル病院の医師ヘルス・プジョルが語彙の発達と白質の増加を関連づけている。
・ピアニストの脳を調べた結果、練習時間と白質に直接的な比例関係があることもわかっている。
■なぜ、ディーププラクティスが必要か?
馬はあらかじめ筋肉がミエリン化されているので、回路が接続され、いつでも機能する状態で生まれる(うまれた直後に歩ける)一方で、人間の赤ちゃんの筋肉は1年間ほどミエリン化されず、訓練をしなけれが回路は最適化されない。
脳の回路にブロードバンドを導入するのには時間がかかる。(5年、10年)
無意識に刷り込み、自動化されるまで繰り返し練習が必要。
その過程は苦しみを伴うけれど、神経の仕組みとして避けて通れない。
スキルの回路を最適な条件で発火させるには、同程度に回路を発火させる必要がある。何度もミスを犯して、そのミスに注意を向けなければならない。そうして、回路に教え込む。
練習がミエリンを増やし、ミエリンが技術を向上させる。
《ディープ・プラクティス》
(スキルを伸ばしていく3つのポイント1つ目)
ディーププラクティスは、”回路の形成と絶縁”
前提として、「情熱、献身、エネルギー、努力」が必要。
学習プロセスの中で、ミスの経験することで、より高度なスキルに変わる。(意識しなくてもできるようになる)
※ミスが重要:受動ではスキルアップしない理由
立ち止まり、苦しみ、ミスを犯し、学ぶ中で、スイートスポット(力点)を見つけていく。(見知らぬ暗い部屋を探索することに似ている)
メカニズム:神経回路を発火→最適化→ミエリンを増やす
《ディーププラクティス3つのルール》
1、ルール① 「チャンクアップ」
3段階:「大きな塊を見る」→「できるだけ細かい塊に分解する」→「時間を計りながら行為のスピードを落とし、再びスピードアップして、その仕組みを理解する」
1段階目:全体を吸収する
目的のスキルを一つのまとまりとしてみたり、耳を傾けたりする。(私たちの脳回路は、人の真似を捨ようにあらかじめ配線されている)*真似は意識的に行う必要はない。
2段階目:小さな塊に分割する
例)ヴァイオリンディープ・プラクティス
生徒は楽譜を一段ずつ切り離し、まとめて封筒に入れてから、手当たり次第に取り出す。そして、リズムを変えることで、その断片をさらに細かく分割する。難しいパッセージには付点をつけて弾く。これにより、2つの音を素早く結びつけるようになる。
3段階目:ペースを落とす
・ペースを遅くすることにより、ミスに注意を向けやすくなり、発火のたびに精度を高めることができる。(ミエリンの形成では、何より正確さが重要)
・ペースを落とせば、より大事な面を伸ばすことができる。スキルの内的イメージ(回路とリズム)を知覚しやすくなる。
《”チャンクアップ”要点》
細部にわたるイメージを持つことで、パフォーマンスをコントロールして変化させ、問題を修正し、回路を新たな状況に合わせてカスタマイズすることができる。物事を塊で捉え、その塊を自分だけが理解できるスキルの言語に組み立てる。
2、ルール② 「繰り返す」
スキルを習得するためには、その動きを実行し、神経線維に信号を送り、ミスを修正し、回路の精度を上げることが最も効果的。
練習量は多いほど良いのか?ディープ・プラクティスは、多くの時間をかけることは効果的だけれど、あくまで自分の能力を大幅に超えない範囲で、注意深く回路を形成して機能を向上させる場合に限る。
1日に可能なディープ・プラクティスの量には世界共通の限界がある。
世界レベルの名手はスキルの分野にかかわらず、1日3時間~5時間。
※集中できなければ、中断する
3、ルール③ 「感覚を身につける」
間違えた時に、それに気づくことができる基準点を設けることが大事。
なぜなら、ミスを防ぐには、まずは気づかなければならないから。
ミエリンは目立たない。神経線維を包んで形成されるミエリンを感知することは不可能。
新しいスキルを取得する際の二次的な感覚に気づくことはできる。
“燃える感覚”
例)
注意、つながる、築く、全部、緊張、集中、ミス、疲れる、瀬戸際、覚醒
《ディープ・プラクティス手順》
ステップ1:目標を決める
ステップ2:手を伸ばす
ステップ3:目標と手の距離を測る
ステップ4:ステップ1に戻る
*ディープ・プラクティスは、「よちよち歩きの子供」をイメージするとわかりやすい
上達する要因は、身長、体重、年齢、脳の発達といった先天的な特徴ではなく、歩こうとして回路を発火させるのに費やした時間であることが判明。
■点火
(スキルを伸ばしていく3つのポイント2つ目)
やる気(燃料タンク)に火を付ける
《ディープ・プラクティスと点火》
*ディープ・プラクティスは
「プロセス」
*点火は
「電光石火のイメージや感情、頭の中に蓄積された膨大なエネルギーと集中力に入り込む神経プログラムによって実行される」(一連の信号とアイデンティティを形成する無意識の力)
点火はエネルギー。ディープ・プラクティスで、エネルギーがミエリン層に変換される(ガソリンとエンジンの関係)
質の高いパフォーマンスは、
無意識の欲望から生まれ、特定の合図をきっかけに始まる
→上達が可能
※適性ではなく「点火」:
上達に火を付けるのは、生まれつきのスキルでも遺伝子でもない
点火(例)両親の死、抽選
■一流の指導
(スキルを伸ばしていく3つのポイント3つ目)
スキルはディープ・プラクティスによって成長する細胞のプロセス→点火で生じた無意識のエネルギーがその成長を促す→才能を育てる(*一流の指導者が必要)
《一流の指導者の特徴》
コメントが簡潔で、短く区切られ、数が多い(短く鋭いインパルス、頭にイメージが残る)
ミスに重点を置いた練習、謙虚で思慮深い、質の高い練習、愛情、モチベーションを引き出す、感情を動かす
■まとめ
スキルは脳の回路
回路は筋肉収縮の正確な強さやタイミング、思考の形や内容を命令する。回路が鈍く、頼りないと、動作も鈍く頼りなくなる。
私たちのスキルは全て脳の電線の中にある
参考文献