Day247:『The Intelligence Trap(インテリジェンス・トラップ)』ーなぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか
【本について】
タイトル:インテリジェンストラップ
著者:デビッド・ロブソン 出版社:日本経済新聞出版社
Q.なぜ、賢い人ほど愚かな決断をくだすのか?
なぜ、優秀な人々が愚かな行動をとるのか?
普通の人よりも過ちを犯しがちなのか?
A.賢い人ほど、”認知バイアス”にとらわれやすくなるから
「知能の高さ」は「人生の成功」を必ずしも約束するものではない
「知能の高い人」がいつでも「正しい判断」をくだせるわけではない
「優れた知性」=「優れた思考力」ではない
【WHY】
■優秀な人は知能が高いにも関わらず学習が不得手で、その潜在力よりはるかに低いところで能力が頭打ちになってしまうことがある。
■「抽象的思考力」(事実の記憶、類推、語彙力)を測ることで、生まれつきの一般的知能を測ることができ、それがあらゆる学習、創造力、問題解決、意思決定の能力になると考えてきたが、そうではないことがわかった。知能の高い人ほど判断力が優れているわけではない。
■インテリジェンス・トラップから身を守る特性のうち、標準的なテストで測定できるものは1つもない。(一般的知能理論の限界)
→実際は、テストのスコアでは説明しきれない行動やパフォーマンスの差異がある。IQが低い人の業績が高い人を上回るケースは多い。また、知能が高くてもそれを活かしきれない人もお多い。
【WHAT】賢い人が陥りやすい罠
■「動機付けされた推論」
賢い人は、頑なに自分の考えを正当化して反論してしまう傾向にある。そのため、細部を見落としやすい。他の可能性に気づきにくい。自ら思考を狭めてしまう。合理的な判断ができなくなる。
さらに、自らの過ちから学ばず、他人のアドバイスを受け入れない傾向がある。失敗した時にも、自らの判断を正当化するために小難しい主張を考えるのが得手で、自らの論理の矛盾点に気づかないことが多い。
■合理性障害の危険性
抽象的思考力を示すSATのスコアが極めて高いのに、合理性を測る新たなテストの成績は低いということがある。これを、「合理性障害」と呼ぶ。
「合理性障害」とその潜在的リスクについて、ダニエル・カーネマンとエイモス・トルベスキーの研究に見られる。
思考を歪める「認知バイアスとヒューリスティクス」・・
「アンカリング」「フレーミング」「サンクコスト」「ギャンブラーの誤謬」「二重システム理論」
その他、本の中では「確証バイアス」「マイサイド・バイアス」も紹介されている。
*2016年、「合理的思考力の包括力テスト」が発表されている。
【該当する偉人】アインシュタイン、エジソン
【WHAT】「賢明な思考力」を持つ人の特徴
■「根拠に基づく知恵」
賢明な思考力を持つ人は、「根拠に基づく知恵」を身につけている。
賢明な思考力を伸ばす要素は2つ。「対立している状態で、他者の視点も考える」「変化の可能性に気づく」こと。
リーダーシップ能力を予測する上で、従来の一般的知能テストより、実務的知能(暗黙知)の方が有効であることが明らかになっている
■知恵の測定法(思考の6原則:メタ認知の構成要素)
知識や認知プロセスの様々な側面に相当し、与えられた状況をより深く詳細に理解するのに役立つ
1、対立している状況を他者の視点も考える
2、変化の可能性に気づく
3、妥協の可能性を探る
4、問題解決の方法を予測する
5、知的謙虚さ(自らの知識の限界と判断の不確実性への認識:「認知の死角」を覗き込む能力)
など
【該当する偉人】フランクリン
■インテリジェンス・トラップを回避する重要な特性
「知的謙虚さ」「積極的なオープンマインド」「好奇心」「優れた感情認識」「しなやかなマインドセット」
【HOW】インテリジェンス・トラップを回避する現実的方法
■フランクリンの方法「精神的代数」
*反対の立場を検討する時間を意識的に確保すると、様々な思考の過ちを抑えることができる
■「自己との距離化」
*距離を置くことで、意味を理解するモードへ移行し、出来事をより広い視点や文脈で捉えられるようになる。自ら視点を変える術を身につけると、不安や思い悩むことが減る。
■内省的思考
一般的知能は教育水準が高く、職業的に成功している人を含めて、貴重なシグナルを正しく解釈し、とんでもない失敗につながるサインを認識するための十分な内省を怠る人が多い。
認知バイアスの原因は、直感や感情そのものではなく、そうした感覚が本当は何を意味するのかを見極めようとせず、都合よく無視すること。
■直感
ソマティック・マーカー(身体信号)は、瞬間的無意識の産物。意識的推論が動き出す前に特徴的な身体反応を生み出す。そこから生まれる身体感覚が「直感」
ソマティック・マーカーは、私たちが知っていることと思っていることへの自信の強さ、すなわち確信があるか、単なる憶測なのかを合図する。
将来、何かしなければならないことを覚えておくためのリマインダーの役割も果たす。無意識は、体を通じて、意識がまだ導き出せていない答えを伝えている。
■感情的リアリズム
「人は感じたことを信じる」
最大な成果をあげる人は、感覚を描写するのにより精緻な言葉を使っている。
自らの感情を容易に描写できる人は、バックグラウンド・フィーリングにより意識的で、その影響を排除できる可能性が高い。
感情の意味をはっきりさせれば、批判的に分析しやすくなり、無関係をわかれば切り捨てることができる)感情は、優れた論理的思考の邪魔ものではなく、それに欠かせないもの。
その他、本の中では「外国語効果」という外国語学習により、感情の識別を改善する、思考スタイルを変える方法や「好奇心を育てることのメリット」についても紹介されている。
【WHAT IF】
ー知能の高い人は、自分なら問題が発生してもうまく対処できると思い込む傾向があるー
IQの高い人は、ローンの返済につまずいたり、破産したり、クレジットカードの負債を抱えたりといったお金のトラブルに直面しやすい。IQ140の人では14%がクレジットカードの限度額まで使ったことがあるのに対し、100という平均的IQの人では8.3%までに止まった。
【響いたメッセージ】
■エンジンの出力が大きいほど、正しい使いhたを知っていれば早く目的地につけるかもしれない。しかし、単に馬力があるというだけでは、目的地に安全につけるという保証にはならない。適切な知識や装備がなければ、高出力のエンジンがあっても、車はぐるぐる周りをするだけ。あるいは、反対車線に突っ込むかもしれない。エンジンが強力であるほど危険なのだ。
■「最高の知性を有するものは、最高の美徳と共に最高の悪徳をも成しうる。拙速に進み、道を誤る者より、歩みは極めて遅くとも、常に正しい道を歩む者の方がはるかに先まで到達できる」
ーデカルト
■考えすぎないことではなく、考えすぎが問題を引き起こす。(専門的知識の逆襲)
■自らの無知を率直に求めることは、問題を解決するもっとも簡単な方法であるだけでなく、情報を入手する最善の方法である
ーフランクリン
■まだ青いうちは、成長し続ける。熟してしまったら腐るだけだ。
ーレイ・クロック
■己を知らなければ、自らを取り巻く世界についても深く知ることはできない。
■マインドセットは、コンフォートゾーンの外に出た時に自らの可能性を活かせるかどうかを左右する。
【学び】
優れた「知性」は時に弊害を生む。一方で、「知恵」(暗黙知・実践知)は発展を生む。
「知性」は硬直マインドセットを生み、「知恵」はしなやかマインドセットを生む。
【アクション】
自分の意見と反対意見についてセットで考える。
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