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片耳の馬

手に重き埴輪の馬の耳ひとつ片耳の馬はいづくにをらむ 大西民子

『不文の掟』

 
 馬の耳のパーツだけが、手の中にある。残りのパーツに想いを馳せている。
 自らの欠落感を投影していると読むこともできる。
 

くびれたる箇所より不意にかき暗む内面をもちて壺のふくらみ 大西民子

『無数の耳』

 この歌も、モノを客観的に描写している。それなのに、読み手は、それ以上のイメージの広がりを受けとる。具体的には、女体を連想したり、人間の悲しみを連想する。
 表現が簡潔で客観的だからこそ、読み手の想像力が刺激される。