目から鱗のハウツー営業㉚【同情】
これは私がいつも思っていることですが、
営業という仕事を語る上で、その存在を過小評価されている事があります。
それは【お客様が営業職に対して抱く同情】です。
勿論営業職の皆さんに
【営業活動がいかに大変で、
契約獲得にどれほど苦労しているかをお客様に伝え、
同情を買ってください】と言っている訳ではありません。
お客様があなたの熱心な姿や行動に同情することで、
契約に近づくことがあるという事実を伝えているだけです。
【同情:他人の気持ち、特に苦悩を、自分の事のように親身になって、共に感じる事。かわいそうに思う事。あわれみ。】
私の先輩、かく語りき&その考察
例を挙げます。
私が20代の頃の話です。
私の先輩営業職Tさんは
「雨が降っている日はお客様の事務所に入る前に傘を差さずに少し歩いて、意図的に体を少し濡らしてから事務所に入る」と言っていました。
そして、その理由として、
「『雨の中大変だな。頑張っているな。』とお客様が俺に同情することで、俺に優位な状態から商談が始まるんだ。』と語っていました。
さて、あなたはこの話をどのように感じましたか?
Tさんの行動を愚かで無意味な行動だと思いましたか?
古い考え方だなと感じましたか?
確かに、この行動をどう感じるかはお客様の性格によるところが大きいでしょう。
雨の中だろうが雪の中であろうが自分の意志で来ているのだから当然だと思う人もいるでしょうし、そもそも訪問した営業職の体が雨で濡れている事に気づかない、気にしないお客様も多数いるはずです。
一方で、Tさんが言うように『雨の中大変だな』と同情し、いつもより優しい気持ちで相手に接するお客様が一定数いるのも想像できるのではないでしょうか?
営業という仕事の偽らざる真相
営業という仕事は、これをやれば必ず契約に近付くということもなければ、これをやらないと絶対に契約に至らないということもありません。
営業職が良かれと思ったことを実行しても、ほとんどの場合結果は未契約に終わります。
そういう意味では、そもそも膨大な無駄の上に成り立っている仕事だと言えます。
必然的に、百発百中の必勝法を追求するのでなく、
たとえ確率は高くなくとも、一定数のお客様が契約に近付く方法があれば実行すべきだという結論になります。
ベストはほとんどのお客様を契約から遠ざけることなく、
一定数のお客様が契約に少しでも近づく方法を地道に積み上げていくというスタンスです。
(この場合、大半のお客様はその行動によって契約に近付きも遠のきもしないということになります。)
そういう意味では、先輩の方法は理に適っていると思います。
このように言っても、『お客様が営業職に同情などするのかな?』と疑う人がいるのも無理からぬことです。
それは営業職自身がお客様の同情という感情の存在を感じることが少なく、また、お客様の同情が商談の流れに影響を与えるということを教えてくれる人がほとんどいないからです。
教えにくい、もっと言うなら教えていてカッコいいもんじゃない、そういう上司や先輩の本音もあるのかもしれません。
しかし、根本的な話として、私達営業職はお客様の気持ちの変化に気付くことはほとんどありません。
具体的にどのように感じたのかはもっと分かりません。
これが営業という仕事の偽らざる真相です。
視点を変えて考えてみましょう!
少し視点を変えて考えてみましょう。
自分たちがお客様の立場になると、
売り手(営業職や販売員)に対してこう思うことはありませんか?
1⃣一生懸命仕事に励んでいる人のその努力に報いてあげたい。
2⃣あんなに一生懸命足を運んでくれているのに話くらい聞いてあげないと可哀想だ
誰でも自然と抱く感情です。
2⃣は完全に同情票ですし、1⃣一生懸命やっている人に報いてあげたいというのも、考え様によっては「あんなに一生懸命やっているのに報われないのは可哀想じゃないか?」という感情があるからではないでしょうか?
そういう意味では
【懸命に努力する人を応援したい】という誰もが抱く気持ちのスイッチは、
同情という感情であると言っていいのかもしれません。
ただ知って欲しい、営業という仕事の真の姿
私はこの同情という感情の存在から
『〇〇を具体的にせよ』というつもりはありません。
敢えて言うなら、
高度なテクニックやマーケティング思考、戦略などの一切が無くても、
一生懸命やっていれば、結果としてあらゆる意味で契約は近付いてくる。
その一つがお客様の同情という感情であることを知っておいて欲しいというだけです。
皆さんがどのように感じようが、こうしたモノが営業の世界には確かに存在し、お客様の決定に少なからず影響を与えているというのは事実です。
こうしたモノの存在が営業職の提案をかさ上げし、
逆に、他社の営業職がこうしてお客様の決定に影響を与え、
我々の提案を無力化するということも頻繁に起きています。
こうした部分が、
お客様のベネフィットや課題解決などという営業職の至上命題とは全く関係ないところで、勝敗を決してしまうことを知ってください。
そして、教科書通りにそうしたことを忠実にテーマに設定したとしても、
契約に至らないどころか近付きもしない場合があり、
その時は私が今回伝えたことを思い出してください。
こうしたところが営業という仕事の真の姿であり、
面白さであり、怖さだと思います。