見出し画像

プロダクトマネージャーによる「全員プロダクトマネジメント」の記録

こんにちは、atama plusでプロダクトマネージャー(以下PM)をやっている角尾です。弊社ではPM、UXデザイナー、エンジニア、QAで構成されるスクラムチームで日々サービス・プロダクト開発に向き合っています。

今回は、とある事業上重要なプロジェクトに参画したときの進め方を書き残しておきたいなと思い筆を取っています(春先のプロジェクトなのに、note書く書く詐欺をしていたらここまで来てしまった…)。
名付けて「全員プロダクトマネジメント」です。

このnoteでは「全員プロダクトマネジメント」とは何か?
そのとき、PMは一体何をしていたのか?
について記載します。

プロジェクトのはじまり

弊社では、「AI×人」両者の強みを融合した直営の学習塾である「atama+ オンライン塾」を運営しています。この塾では、生徒と先生のオンライン面談(通称「作戦会議」)にて、生徒の学習状況を踏まえたプランニングと学習継続のサポートをしています。校舎がない塾ならではの顧客接点です。
属人的にならず、どんな先生でも効果的な面談を実行できるようにするためには、面談の内容や流れをきちんと設計しておく必要があります。
今回はさらに、プロダクトの力で面談の再現性や実効性を高めることができないかと、ビジネスとプロダクトが一体となって面談の設計を進めることになりました。そこでまずは、ビジネス側のメンバーに加えてプロダクト組織全体の責任者とPM(私)が検討メンバーとしてアサインされました。

体制づくり -「全員プロダクトマネジメント」の発明

これまでも、PMやUXデザイナーがチームから飛び出し、ビジネスサイドのメンバーとタッグを組んでプロジェクトを組成し、ディスカバリーを進めることはありました。しかしこの座組だと、デリバリーフェーズに移行する際のチームの巻き込みや情報共有などに難しさを感じることが時にありました。

  • PMから検討経緯などを共有する際、(特に文脈が複雑なときなど)チームメンバーのキャッチアップ難易度が高い場合があった

  • もっと早い段階でエンジニア視点・QA視点を含められたらより良い案が出せた可能性があった  など

特に今回はかなりタイトなスケジュールでプロジェクトが立ち上がり、成果を出すことが求められていました。その状況で、プロダクト側としてどのような貢献をめざすべきか。どんな進め方・体制なら一番速く進めるのか。まずはこの点からプロダクト組織の責任者と議論をし…、「もしかして、最初からチーム全員を巻き込んで走ればいいんじゃないか?」という結論に至りました。


弊社ではこれまでもデュアルトラックアジャイルに取り組んできました。

しかし、今回ほど超初期の段階からチーム全体を巻き込むことはなく、結構思い切った提案だなと思いつつ(ちょっとドキドキしつつ)チームに話をしました。
結果的には、めちゃいいじゃん!やろうぜ!と、とても前のめりに受け入れてもらうことができ安堵するとともに、なんて頼もしいチームなんだと一人感動していました(もちろん、最悪このチャレンジがうまくいかなかったらそのときは自分がどうにかするぞという覚悟も持ちつつ…)。

提案後にくれたSlack(弊社ではエンジニアのことをdevと呼んでいます)


このチームとしての指針を「全員プロダクトマネジメント」と呼ぶことにしました。これまでのディスカバリートラックにおける活動よりも、さらに上流からチームで取り組んでいきたい。Core、Whyなどと呼ばれるようなレイヤーからみんなで議論し目線を合わせながら(でもスピード感を持って)進めたいという思いです。
例えば、事業の成功に向けてプロダクトとして動かしうる変数は何で、どのような成果目標を設定すればよいか?成功のために、我々チームはどのようなミッションを持って進むべきか?のような議論から始めました。

(もちろんこれまでもずっと、事業に貢献するためのプロダクト開発をしてきました。しかし今回は特に直営のサービスづくりだったこともあり、プロダクトからのアプローチによってどの数値がどう動くかなどが見えやすく、ビジネスのリアル感を持ちやすいテーマでした。その分、ユーザー価値とビジネス価値をつなげることに主体性を持って取り組みやすかったとも思います。)

「全員プロダクトマネジメント」を始めて何が起こったのか

さて、「全員プロダクトマネジメント」でこのプロジェクトに向き合うにあたり、実際にチーム全体で取り組んだことをご紹介します(ごく一部のみ抜粋、順不同)。

  • みんなでリーンキャンバスを埋めてみる。事業/サービス/ユーザーの課題仮説は何で、どこから明らかにしていけるとよいかなど認識合わせに役立ちました。

  • みんなでサービスブループリントを描いてみる。主にオペレーションの仮説を作りながら目線を合わせ、検証したいポイントを洗い出しました。

  • みんなでUXリサーチする。思い切ってインタビュアーにも挑戦してもらいました。連日夜遅くまで、体力的にはきつかったけどちょっと文化祭みたいでしたね。

リサーチ中に気づいたことを投稿しながらみんなでユーザーを見守る(225件!)
  • みんなでソリューション案のブレスト大会をやってみる。やりましょう!からの、Miroにフレームワークを切って、ファシリテーションして…までエンジニアがリードしてくれました。すごくないですか…?

実際のMiro
  • みんなでホワイトボードにワイヤーフレームを描いてみる。UIバトルしようぜ!と各自案を出し、その場で見積もりまでできました。こういう場にエンジニアがいてくれると一気にここまでいけるんだ!と思ったのを覚えています。

などなど…。ここには書ききれませんが「これをやってみませんか?」「やってみました!」などたくさんの提案をもらいました(上記も半分くらいはメンバーからの持ち込みです)。

参考:
社内のプラクティスは過去にも公開してきましたが、今回はエンジニア・QAメンバーが主体として推進してくれたこともあり、さらに組織として進化できた気がします。

プロダクトマネージャーとして何を考えて、どう動いたのか

さて、ここまでいかにチームメンバーが全方位に動いてくれて最高だったのかをお伝えしましたが、これを読んでくださっている方はこう思われたんじゃないかなと思います…「確かにチームはすごかったのかもしれないけど、PM(私)は一体何をやっていたの?ちゃんと仕事してた?
安心してください、というか、言わせてください(自分のために)…ちゃんと働いていました!!

「全員プロダクトマネジメント」で進むと決めたとき、そしてそれがうまくいっていると感じるたびに、その中で自分が果たすべき役割は何か?を考えることになりました。チームの成果を最大化するために、自分がどのように動いておくと、みんなが動きやすくなるか/加速できるか?ということです。

当時は手探りで、目の前のやるべきことをやるぞという気持ちでもありましたが、いま振り返ると以下がポイントだった(心がけていた・やっていた)のかなと思います。

  • 意思決定をする

    • 先に決めておかないとメンバーが動けないものはどんどん論点化し、決めていく。ビジネス的な観点が含まれるものは、ビジネス側の責任者(意思決定者)と合意しておく。

    • (つい作りたくなりますが)できるだけ早く問いを明らかにするために、作らずにすむやり方はないか?を冷静に考えて判断する。

  • ステークホルダーマネジメント

    • チーム外とのやり取りは基本的に全部やる・引き取る(主にビジネスメンバーやプロジェクト外を含むステークホルダーとの議論・調整・合意など)。

    • 主にビジネス側のリーダーと日々議論しながら、いま明らかにすべきことはなにか?チームはなにをすべきか?を持ち帰っていました。

  • メンバーが動き出せるように整える

    • まずはチームのミッション(意思決定の基準になるもの)を言語化する。

    • チームメンバーへの情報共有を徹底的にやる(なぜ今、これに取り組むべきなのかなど、全員が納得するまで話す)。

    • 上段の論点整理やワークプランへの落とし込み。具体的な動き出し方をイメージしやすいように…。

    • 詳細なリサーチ設計とインプット。当日のオペレーション・トークスクリプトまでかなり細かめに書き下し、安心して臨めるように準備しました(と言いつつインタビュアー挑戦に関しては、十分な練習期間がなかったのでほぼぶっつけ本番だったかも。その節は……ごめん!)。
      羽山祥樹さんの資料がとてもわかりやすかったです!

実際の検証シナリオ(詳細に書いたんだなという雰囲気だけ感じてください…)
  • その他、より難易度の高い要求整理〜要件定義などはペアワーク的に進めるなどしました。

プロジェクトの結果と振り返り

約1ヶ月間の怒涛のプロジェクトでしたが、目標としていたビジネス上の成果を達成し(その後デリバリーフェーズも完遂して)、無事幕を下ろしました。
改めて、一緒に走りきってくれたチームのみんなには感謝しかありません。

全体を振り返って、何が良かったのかなということを考えてみると…

一つは、検討テーマごとの大きめな玉で渡せたことで、課題整理からソリューションまで一気通貫で考えられたことなのではと振り返っています。その分「今、本当に実現すべきことはなにか?」という問いから外れることなく最後まで進められましたし、自分がこのテーマを推進するぞ!という意気込みでボールが落ちることもなかったです。

もう一つは、やはり全員でユーザーから学ぶことができると、圧倒的に解像度も当事者意識も上がっていいなと思いました。メンバーからも、プロトタイプを使った面談を生で見て、直接話を聞いて、翌日には改善して…というサイクルを回せたことがすごく刺激になったとのことでした。

また、チームで『プロダクトマネジメント ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』の読書会を実施したのですが、内容もタイミングも良かったです。ディスカバリーを進めるにあたり課題感や疑問点が生まれる中で、めちゃくちゃ刺さった!とのことでした。理論と実践の両輪で回せたのはよかったですね。
ちなみに、本の付録の問いに答えるかたちで活動を振り返ったのですが、うちら結構いい感じじゃん!となりました。

読書会のMiroより。良い中間振り返りの機会にもなりました。

と、まあ色々と書いてみましたが…、何よりこの新しい(イレギュラーな?)座組を受け入れて、ポジティブにチャレンジしてくれたチームのおかげでうまく行ったんだろうなと心底思います。
みんなの前のめり具合には驚きましたが、たくさん提案をもらえたことがすごく頼もしかったですし、個人的にとても楽しかったです(PM一人で進めるときって実はちょっと孤独で不安なことがあったりしませんか?)。

実はこれは自分がチームに来てまだ日が浅い頃に実施したプロジェクトでした。この活動を通じて各メンバーが秘めていた大いなるポテンシャルに気づくことができ、プロダクト組織の責任者からも「こんなにすごいチームだったなんて知らなかったよ」と言われました。みんなの力が開花するプロジェクトをつくれたことを誇りに思っています。全員最強で最高でした。

そんなわけで「全員プロダクトマネジメント」の振り返りでした。
ただ、このプラクティスをすべての組織におすすめしたいと思っているわけではありません。一般論として見ると特殊というかある意味荒療治的なやり方かなと思います(なにかを直したかったわけではありませんが)。
前提として、今回はメンバーの志向性に「目的やゴールからきちんと理解・納得した上で参画したい」や「ディスカバリーからがっつりやってみたい」などがあったから前向きに受け入れてもらえたし、うまくハマったのだろうと考えています。

もしこれが誰かの参考になれば幸いですが、あくまで一つのケースとして見ていただければと思います。

We are hiring!

atama plus では仲間を募集しています。
弊社にご興味を持っていただいたPMの方、ディスカバリーからガンガンやっていきたいぜ〜!なエンジニアの方など、ぜひ以下をチェックしてみてください〜!お待ちしています!


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?