私と白鯨:『クジラの海をゆく探究者〈ハンター〉たち』翻訳余談
この記事の続き。
小説『白鯨』を現代科学の目で解剖する本
『クジラの海をゆく探究者たち:「白鯨」でひもとく海の自然史』(リチャード・J・キング著、慶應義塾大学出版会)
を、生物学系博士&複業フリーランス翻訳者の私が訳した背景についての余談です。
文学×科学の出会い。進化学会会場で『クジラの海をゆく探究者〈ハンター〉たち』原書に出会う
2019年夏。当時の私は米国在住。
海と陸地の間の「潮溜まり」に暮らすプランクトンがカップルを成立させるまでのコミュニケーションの進化を研究していました。
『クジラの海をゆく探究者〈ハンター〉たち』の原書 Ahab's Rolling Sea(エイハブの荒海!)に出会ったのは、米国東海岸で開催された進化学会会場でのこと。
生物学や医学系の学会では、会場に出版社さんがブースを出して、学会に関連するテーマの本を展示販売していることがあるのです。
出版社の編集・営業の方とお話しして、新刊予定のカタログから通販予約をしたうちの1冊がこの Ahab's Rolling Sea でした。
私自身は小説好きですが、当時は『白鯨』を未読。
ただ、だからこそ「科学の視点から見たら面白いのかも?」と心惹かれました。
『白鯨』完成当時のメルヴィルと同い年。何も知らずに『白鯨』執筆の地を素通り
こうして原書に出会った直後、学会発表を終えた私はボストンからマサチューセッツ州内陸に小旅行へ。
実はこの時、何も知らぬまま『白鯨』執筆の地を走っておりました。
写真はおそらく通りすぎた後の景色。
私は当時33歳。『白鯨』を書き上げた時のメルヴィルよりも、ほんの数ヶ月だけ年上でした。
(なかなかの偶然…。知っていたら、メルヴィルが移り住んで執筆の場とした農場屋敷 Arrowhead にも立ち寄ったと思います。でも、当時は『白鯨』そのものも『Ahab's Rolling Sea』も未読。その偶然にも気づいていなかったんです…)
このあたりのエピソードも『クジラの海をゆく探究者〈ハンター〉たち :『白鯨』でひもとく海の自然史』の訳者あとがきに書いていますので、お楽しみに。
▼原著者のリチャード・J・キングさんによる執筆背景と自筆イラストはこちらから。▼
ところで、実は私がこれまでに訳した他の本も、偶然の巡り合わせで出会ったものがほとんどです。
noteでも少しずつご紹介できればと思います。
坪子理美