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[SDGs×日本語教育]PBL授業実践レポート@タイの高校

全学年、学期に1回はPBL(Project Based Learning)を実践している。
高3の前期は「社会問題」という課があるので、毎年タイの社会問題について日本語でグループプレゼンテーションをさせているが、今年はそれにSDGsを絡めてみた。

SDGs。Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)。
最近は日本でも小学生からこのことについて勉強するらしい。
これから社会に出ていくタイの学生たちにとってもきっと必要な視点。

分散登校で週2回しか登校できず大変だったが、先週やっとプレゼンテーションまで終わったので、記憶の新しいうちにレポートを残しておきたい。

1. 導入

新しい課に入る初日が対面授業だったので、文法を入れる前にタイの社会問題について質問してみた。(毎年文法を全て入れてからプレゼンテーションのためにタイの社会問題にフォーカスしていく)

意見の吸い上げに、今回初めてMentimeterを使ってみた。まだ新出語彙も入っていない状態なので、"Word Cloud"にタイにどんな社会問題があるかタイ語で入れてもらった。

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私が読めるものは日本語で語彙を教えて、読めないものは学生に日本語で説明してもらった。以下の画像はそのWord Cloudを私が加工したもの。

スクリーンショット 2020-07-13 16.04.11

交通渋滞、コロナ、ゴミ問題、妊娠する学生、PM2.5、ネットいじめなど色々な意見が出た。

SDGsのタイ語版アイコンを見せて、SDGsについても聞いてみると、高1の社会で勉強したそうだ。

2. 課の文型導入

オンライン、対面授業で課の文型を入れていった。
この課の新しい文型は
1 〜によると・・・そうです
2 〜と思います
3 〜てきました/〜ていきます

それぞれ最近のニュースをテーマにしながら導入した。

3.日本の社会問題の紹介

プレゼンテーションの例として、日本の社会問題についてグラフや資料を見せながら、勉強した文型を使って説明した。

紹介した社会問題は
・ドラッグ
・自殺
・ゴミ
・犬猫の殺処分

それぞれ紹介前に短いビデオを見せて、どんな社会問題か考えさせた。
(これは自殺)

タイにも同様の問題があるか、どんな対策をしているか日本語とタイ語でディスカッションをした。

4.社会問題とSDGsの関連付け 

3や1の社会問題について、
・SDGsのどの項目と関係があるか
・それはなぜか
考えた。この日はオンラインだったので、残念ながら活発なディスカッションはできなかった。

5.グループでテーマを決定

プレゼンテーションのグループを決めた。この日もオンラインだったので、あらかじめGoogle Meetのリンクをグループの数だけ作っておき、そのリンクを使ってグループディスカッション。私とタイ人の先生はファシリテーターとしてリンクを出入りしながら話し合いが進んでいるか確認した。

テーマが決まったら、マインドマップを作成するよう指示した。

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(Google Jam boardを使ってオンライン上でマインドマップを作っているグループ)

各グループのテーマは
・コロナ
・失業者
・人身売買
・ドラッグ
・捨てられたペット
・自殺
に決定。

6.スクリプトとスライドのチェック

勉強した文型を使ったモデルテキストを例として見せた後、各グループでスクリプトとスライドを作らせた。できたらLINEで提出してもらい、文法やスライドの内容をチェックした。(Apple pencilで添削)

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これまでスクリプトは紙で提出させていたが、データの方がなくしたり汚れたりしないし、やりとりが残るので良い。

各グループスクリプト、スライドともに3〜4回再提出させた。

7.プレゼンテーション

当日は10分ほどグループで練習させてから本番に臨んだ。大半の学生がスクリプトを覚えていたし、全グループ5分以上発表できた。

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各グループ発表後、MentimeterのQ&Aを使って質疑応答の時間を設けた。質問の入力及び回答はタイ語でもよしとした。

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昨年までは挙手で質問をさせてもほぼ出ず、結局教師が質問していたが、Mentimeterを使ったら時間が足りないくらい学生から質問が出た。ディスカッションはタイ語だったが、テーマに関する学びが深まって良かったと思う。私も勉強になることがたくさんあった。

全てのプレゼンテーション終了後、教師から良かったところと、もっと良くなるアドバイスをコメントした。

プレゼンテーションの評価

・流暢さ
・発音
・スライド準備
・プレゼン内容
・文法
の五つの観点からルーブリック評価をした。

感想

オンライン授業で思うようにいかないことも多かったが、Google Jam boardでマインドマップを作ったり、MeetでグループディスカッションをしたりとICTを駆使してやれることはやったので結果オーライ。Google Jam boardは対面授業でも使えそうなので、今後は積極的に活用していきたい。

Mentimeterも学生たちが能動的に授業に参加するツールであると実感できた。私にとっても学びのある有意義な活動になった。

実現は厳しそうだが、社会の先生と一緒に授業をするのも楽しそう。せっかく学校に色々な教科の先生や外国人の先生がいるのだから、[日本語×他教科]みたいなクロスオーバー授業コラボ授業ができたらおもしろそうだなと思う。

最後に。高2の時と比べ物にならないぐらい学生たちが成長していて、感動すら覚えた。学生たちは緊張した、難しかったと言っていたが、褒められて嬉しそうにしていたし、きっと自信になったと思う。そのうち日本語は忘れるだろうが、この達成感や頑張りはずっと忘れないで欲しい。

授業実践記シリーズ


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Maestra Satomi(日本語教師@タイ)
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