「やすらぎの里 断食リトリート」、その名を目にして吸い寄せられるように応募した。迷わず1週間プラン。重い体を支え切れない脚と足、その重さに圧迫されるかのように縮こまった体と心をなんとかしたいと思っていた。ひと月後、誕生日が来る前にその後の自分の人生の指針を軽やかに…決めたいと願っていたから。 2024年8月18日日曜日13時10分、伊豆高原駅でお迎えのバスに乗っていざ、やすらぎの里本館へ。 入所面談ではここ数ヶ月ずっと考えていたことを率直に伝えた。 「これまでの自分
今度の日曜日は父の日。 お父さんはきれい好きで、私が22歳の時に2度目に建てた新築の家では、日曜日白シャツとステテコという下着姿で、午前中いっぱい床にワックスを塗ってピカピカに磨いてた。 時代のせいか、いや違うな、子どもの頃のお父さんの思い出は、テレビで漫画を見てるのに帰って来ると何も言わず野球にチャンネルを回しちゃう。どうしていつも漫画の途中に帰ってくるのかと思ってた。 弟とはキャッチボールをして楽しそうにしてるんだけど、私は結構大きくなってからも追いかけてきて
先日、映画「Before Midnight」を見終えた。 1995年に始まったリチャード・リンクレーター監督のBefore3部作「Before Sunrise」「Before Sunset」「Before Midnight」からの第3作目の作品だ。今まだ3作品の鮮やかな印象を書き留めておこう。 第1作のBefore Sunrise。オーストリアの列車で偶然出会った20代のアメリカ人男性ジェシーとフランス人女性セリーヌ。途中下車して、夕方から朝までの14時間ウィーンの
広辞苑に、「化粧」とは紅、白粉などをつけて顔を装い、飾ること、とある。 なるほど世の中には人々が色めき立って欲しいと思わせる魅力的な化粧品が日々新しく開発され、それを身につけた人たちの美しさに魅了されることも多々ある。 化粧という言葉を聞く時、目に見えるそれに留まらず、化粧にまつわるいくつかのエピソードが頭に思い浮かんでくる。 1 化粧なんてどうでもいいと思ってきたけれど せめて今夜だけでもきれいになりたい 今夜私はあんたに会いに行くから 最後の最後に会いに行
「みんなのおかげでいい人生だった」 昨年(2023年)3月25日、この家を後にするとき最後に言った言葉だ。二日後おじいちゃんはこの世を去った。本当はあと数ヶ月、少なくとも数週間は緩和ケアハウスで穏やかな時を過ごすはずだったのに−。 その4ヶ月前におじいちゃんはコロナに罹った。軽症だが年齢を考慮して、総合病院に入院することとなった。そこで肺がんが見つかった。ドクターは私たち(息子夫婦)にコロナではなく肺がんについて説明するため、病院の上層階から玄関へと降りてきた。 「2