見出し画像

日記 2022年○月 「フリーターみたいなところから進んで行っ」て、家を買う。

 大阪に住んでいるから、LINEの「大阪府」を友だち登録している。大阪府を友だちってなに? って未だに思う。
 11月8日に「【本日、大阪モデルの「警告」(黄色信号)に移行します】」とメッセージが届いた。
 一時期、日記を書いていた理由はコロナ禍を記録しておきたい、という気持ちがあったからだった。
 久しぶりに僕の近況も含めて日記のようなものを書いてみたい。

 ○月某日

 友だちができた。
 三十歳を超えて初めての友だちだった。
 彼は僕の一歳年上で、四国で生まれ、長男だと言うことだった。地元で就職したけれど、上手くいかず辞めて、数年ふらふらした後、知り合いに誘われて大阪で働くようになった、とのこと。
 僕が小説やエッセイを書いていることを知ったこともあってか、ギターを弾くのが好きで曲も作っているんだ、と言った。まだ、聴かせてもらっていないけれど、楽しみが一つ増えた気持ちになっている。

 ○月某日

 週に一回の頻度で飲む友人がいる。
 彼は散髪屋で働いていて、最近は彼に髪を切ってもらっている。そんな彼は一度、同棲までした彼女がいたのだけれど、上手くいかなかった。
 もう数年も前のことだけれど、その失恋というか、失敗(別れた理由は9割、彼の責任みたいなところがあった)は彼の中で大きな影を落としていた。
 そんな影を払拭するように彼は精力的に働いていたし、僕の飲みの誘いにもほとんど断らず遊んでくれていた。

 彼女が欲しい、という話をよくしているけれど、具体的な行動に出ることは殆どなかった。コロナ禍もあるしね、という感じで話を聞いていた。
 そんな彼が最近は合コンにマッチングアプリと忙しく動き回っている。僕は彼がデートだ、という話を聞く度に「報告を待ってるわ」と返していた。

 合コンで知り合った子とデートしてきた、という彼と先日、飲んだ。

男二人で行くにはお洒落な居酒屋だった。
サーモンにタルタルといくらが乗ってる。美味しかった。

 そのデートした子とは良い感じだった、という話を聞いて、「良いじゃん良いじゃん」と笑っていると、「なんか、ようやく本当に彼女のことが終わったんだなって思ったことがあったんだよ」と言い出した。 正直、この手の話の切り出し方は過去、何度かあったので、いつものように「ほうほう」と軽く乗っかった。

「彼女のLINEの名前の名字が変わってたんだよ」

 んー。
 なるほど、結婚したってことね。けど、待って。数年前に別れた彼女のLINEのアイコンや名前を逐一確認してたの? という疑問が最初に浮かんだ。
 すると、「いや、ほらLINEって『お知らせ』ってあったりするじゃん。あれを開いたらたまたまさ」とのことだった。

 そんな訳で、彼はようやく元カノからの、あるいは、その当時に犯してしまった失敗に、踏ん切りがついたようだった。
 にしても、元カノが結婚するまで、終わったって男の子は思えないのか。
 人によるけどさ。

 スガシカオが「性的敗北」がふと浮かぶ。

 君がヒミツでぼくにしてくれたこと
 知らない誰かにしているんだね…
 ねぇぼくに最後に
 性的敗北をください
 もう二度と君を
 思い出せないように…

性的敗北」を狂ったように聴いていたのは、十代だったと思うけど、アルバムの二曲目で一曲目が「かわりになってよ」だったっていうのも強く印象に残ってる。
 何にしても、男の子は「敗北」したって分かると、途端に「思い出せないように」しようとする気がしていて、まだ負けていない可能性が一パーセントは残っているって時に往生際が悪くなる気がする。
 けど、何でも誰でも、そりゃあそうで男の子女の子関係ないのかもとも思う。

 ○月某日

 倉木さんと久しぶりにやりとりをする。
【対談】人生を狂わす実写化映画の地図 2010-2020 」の問題点(と僕が思っている)を酔っ払った勢いの電話でした、翌日に
「酔っ払って忘れてるかもしれんが、昨日の電話内で映画論に関する失敗の原因を打ち明けてもらったわけですが。いたく反省しました」
 とLINEをもらった。

 本当に酔っ払っていて、僕が彼になんと言ったのか覚えていなかった。ただ、僕はもう酔っ払っていないと彼に電話できないところまで来てしまっているのは、やばいなと実感した。
 倉木さんの内容は僕の言う失敗を踏まえて、新たに対談をするならという提案だった。

 また倉木さんと対談形式の連載ができる日が来たら良いなと思う。けど、以前と同じ形態では無理だし、僕と倉木さんが同じ方向を見ている訳でもないから、解決しないといけない問題点は多いなとも思う。

 ○月某日

 彼女と同棲する予定なんですけど、みたいな話を職場の隣に座っている主婦の方に話した。
 主婦の方は二歳の娘がいて、旦那さんは単身赴任。田舎出身で、女に学はいらんとまじで言う父親のせいで、大学時代学費と生活費と家賃を自分で捻出しなければならなかった苦労人。副業でカメラマンをしていて、趣味はドラマやアニメ(異世界転生ものがメイン)を見る。
 という感じで人生の先輩感が強いので、僕は何か悩むと毎回相談していた。

 で、彼女と同棲する予定なんですけど、僕はどうしたら? という話をしたところ、
「さとくらくんの場合は、まず本だよね。三千冊くらいあるんでしょ? まさか、それ全部持っていく訳じゃないよね?」
 と言われる。

 むしろ、本以外の家具は全部捨てても良いし、服も最小限で良いから、本だけは持って行かせてください! と彼女にお願いするつもりだった。
 けど、それは人生の先輩的にはダメっぽい。

 減らします、と言った矢先「20世紀少年」にハマる。というか、浦沢直樹の漫画全部読みたいってなる。

今15巻まで。
15巻のこことか最高だった。神になるの!?ってなった。

 そんな訳で今、僕は二週間に一回の頻度で古本屋へ行き、浦沢直樹の漫画を五冊まで買って帰るようになっている。けど、同時に読んだらちゃんと売るんだ! って気持ちでもいる。
 他の本に関しても売って行こう、と決める。

 けど、十年間せっせと買い集め続けた文芸誌と箱本なんかは、今のところどうしても手放せる気がしない。実家に送り付けるか。

 ○月某日

 弟から家を買う、というLINEが届く。
「引っ越したら、遊びにきてね」ともあった。

 弟が家を買う、ということは僕が育った実家は父や母が住まなくなったら取り壊されることが決まった。
 僕の帰る場所が無くなるってことだけれど、弟的にはおそらく彼の買った家に来ればいいと考えているようだった。

 広島は僕の地元であり続けるし、懐かしい場所は全然残っている。ただ、今はまだ実家がなくなってしまうことが想像できずにいる。
 現実にまだ実家がある、というのもあるのだろうけれど。
 何にしても帰れる時に帰っておこうと思って、今年の年末は帰ると母親にLINEした。

 弟からのLINEに「有川浩の「フリーター、家を買う。」じゃないけど、まずそれが浮かんだ。おめでとう」と返信をした。
 一時期の僕ら家族は「フリーター、家を買う。」のような状態だった。母親が、うつ病にならなかったのは運が良かったからだと今でも思っている。

 弟から「フリーターみたいなところから進んで行ったよ」と返信があった。
 いろいろ変わっていくことを弟は常に前向きに捉えていっていた気がする。その流れで結婚もするし、家を買う訳し、頑張ることも増えるだろうけど、楽しみ気持ちは忘れずに過ごしてください、と僕はLINEした。

「いろいろ楽しんでるよ!
 真山みたいに幸せ貯金がザーッ!って出てる気もするけど減ってない気もする!笑」

ここの真山の気持ちめっちゃ分かる。

 と返信がきた。
 ここでハチクロの真山を引き合いに出してくる弟が僕は大好きすぎる。

いいなと思ったら応援しよう!

さとくら
サポートいただけたら、夢かな?と思うくらい嬉しいです。