正しく自堕落に過ごすための有給の使い方。

 土日のどちらかを寝て過ごす。

 少なくとも半日はベッドから出ない時間を作らないと、とてもじゃないけれど、一週間働けない。僕はそういう人間で、いつも自己嫌悪に苛まれる。土日関係なく朝から有意義な時間を過ごす。そういう自分でありたいのに。

 一度、無理やり土日に用事や遊びを入れてみたことがある。二ヶ月もしない内に他人への接し方が雑になった。僕はただ、詰め込めばできるようになる人間ではないらしい。また、自己嫌悪に陥った。
 僕は準備をして、少しずつ変えていく方法でなければ、上手く生きていけない。難儀な人生である。

 結婚して数ヶ月が過ぎた。毎週、土日のどちらかは用事が入っていた。妻は毎週土曜日の朝は仕事で昼間で帰ってこない。この時間が僕にとっての睡眠タイムとなった。
 僕の生活サイクルと妻の生活サイクルは上手く噛み合っているように思える。

 ただ、何にでもイレギュラーはある。今週の土日は岡山へ行く予定になっていた。妻の友達が住んでいるらしい。
「着いてくる? 挨拶の時、居てくれたら後は遊んでて良いよ」
「まじで! 行きます!」
 というわけで、一人岡山の古本屋を巡るつもりでいた。

 そんな予定を立てていた頃、我が父様から留守電が入った。仕事終わりにかけ直すと、「わし今、姫路におるんよ」と突然言う。
 どうも、父の中でその日がうちの妻の誕生日だと勘違いしていたらしい。実際は妻のお父さんの誕生日がその日だった。
「タバコ買いに出たついでに、ちょっと行ってみようと思ったんよ。プレゼント渡して、顔だけ見れたらと思って」
 まず、誕生日の誤解を解いてから、僕も今日は職場の飲み会で対応できない旨を伝えたところ、「あー、ええ、ええ。じゃあ、お父さんの方によろしく伝えといて」と言って通話は終わった。

 この話を妻にしたところ「嬉しいじゃん。岡山行く日、ついでに広島にも行く?」という話になった。母にも話をしたところ、大丈夫となったため、お店を探した。僕の実家と広島駅の中間にある場所でお好み焼き屋を探し、見つけたところを地元民の弟に知ってるか、尋ねたところ
「高校の頃から行ってる店だよ! 今もたまに行くよ! 山芋とチーズが入ったやつが美味しいよ」
 と弟と連絡をとってきた中で一番くらいのテンションでの返信があった。
 これはもう、この店しかないなと思って予約をした。

 岡山に行って夜はうちの両親とご飯。そこから帰るのはしんどいだろうとなって、広島に妻と一泊しようとなった。であるなら、翌日に弟夫婦に挨拶だけでもする? という話になった。
 弟の奥様は今、妊娠中で出産予定日が近かった。正直、ベストなタイミングではない。けれど、弟夫婦は「ぜひぜひ、なんならお茶をしましょう」と言ってくれた。
 有り難い話だ。

 ただ、土日の予定はみっちりと詰まった。ここで、土日のどちらか寝ていたい僕は思った。
 どこで寝ればいいのか。いや、一週間くらいはフル稼働しても僕は大丈夫。両家顔合わせの翌日に入籍したスケジュールも超えてきたじゃないか。いや、でもあれはGWだったからでは。云々。

 悩んだ末、有給を確認した。今は閑散期。前日でも申請させすれば、有給は取れる。というわけで、木曜日に有給を取った。金曜日は仕事終わりに職場近くの病院に通院しているので、そこを休む選択はなかった。
 木曜日。朝はいつも通り起きて、妻が仕事に行ってから目一杯寝た。夜、夕食を作っていると、弟からLINEが入っていた。

「さっき無事、子供が産まれました!」

 お祝いじゃ! と一人で叫んだ。ビールを冷やした。

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さとくら
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