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33歳になった男が壊れないように「正しく考えるための方法」を考える。

 僕って壊れたらこうなるんだと思った。
 人生で一番くらいの泥酔をした。結果、姫路に来てくれた友人と彼女に迷惑をかけた。3日くらい謝る日々だった。
 どんなにお酒を飲んでも酔った自分はこうなると分かっていれば、ある程度はコントロール可能だと思っていた。けれど、今回はコントロールとか、そういう次元ではなかった。
 泥酔するというより壊れた。僕の感覚としては、そちらの方が近かった。

 一度壊れた家電は壊れやすくなると聞く。
 使い方を根本的に見直す時期に来ているんだろうなと思う。

 ◯

 泥酔しておきながら、日本酒BARで知り合ったおじさんとLINEを交換し「今度、一緒に飲みにいきましょう」と約束をしていた。
 二日酔いの中でやりとりとして、飲みに行く日を決めた。
 姫路に来て初の飲み友だった。
 おじさんは50代前半。土日はジムに通って体を鍛えるのが趣味で、大学生と高校生のお子さんがいるとのことだった。
 飲みは昼から始まり、三軒はしごして夕方に終わった。
 一緒に飲んでいて気持ちのいい人だった。ただ、解散間際のおじさんは酔いが回って目が座っていた。
 目が座った50代前半のおじさんは結構怖い。新しい発見だった。

 ◯

 振り返ってみると2月は予定が詰め込まれていた。
 一つ一つを振り返って書き残していくのは難しいのだけれど、嬉しかったのはBLの師匠と思っている方と一緒にお酒を飲めて、おすすめのBL小説を借りれたことだった。
 BL小説の感想は【2月の読書感想】に記するとして、改めてBLの面白さに触れられた気がした。最近、鹿島茂の講座(「正しく考えるための方法」を考える『思考の技術論』入門)を聞いていると「人は異文化に触れて初めて考える」という旨のことを言っていて、確かにと思う。
 同時に「子どもは40000回質問する」という本の中で引用されていた言葉も浮かんだ。

「人は自分が知る手だてのあることしか知りたがらない。その限界の外にあるものは何であれ、その人物にとっては存在しないも同然だ。したがって、それが関心や願望の対象になることはあり得ない」

 ちなみに、これはドイツの哲学者ルードヴィヒ・フォイエルバッハの言葉からの引用だった。
 BLを読んで分かるのは男性のことではなく、女性のこと。
 僕の生活には彼女がいて、僕は常に彼女のことを知りたいと思っている。その手助けにBLがなると安易に繋げる気はないけれど、男性と女性の違いを理解する手立てとしてBLは役に立つとは思う。

 今回貸していただいたBL小説を彼女が読んだら、なんという感想を持つのだろうという興味があった。なので、夜寝る前にBL小説のあらすじを説明する、という日々を過ごした。
 なんなら、朝の時間にも話題にした。
 結果「なんだか複雑な話なんだね」と言われる。
 僕は物語の要約能力が低いんだなと実感した。勉強していこう。

 ◯

 友人の倉木さとしと往復書簡をしたいと思っていて、そのやりとりをしている。
 質問のテーマをお互いに出し合うのだけれど、今回は倉木さんから「AI」に関する質問をもらった。
 AIについて僕は特別詳しいというわけでもなく、関心を人一倍寄せていたわけでもなかった。ただ、年末に「清水亮×東浩紀「2023年AIニュース総ざらい──2024年はどこに行くのか?」を見ていたので、それを土台に私見を書いた。

 専門家の話を聞くのは面白い。「2023年AIニュース総ざらい」と言われても、僕はAIのニュースに触れていないので全てが初見で、清水亮が如何にこのニュースが大事かと語られてもピンと来ないし、理解できたとは言い難かった。
 しかし、清水亮がどのようにAIを面白がっているのかは、なんとなく分かった。そうなると、日常やネットで見かけるAIという単語に目が止まるようになった。
 さきほど引用した「人は異文化に触れて初めて考える」は正しいんだろうなと思う。僕は「2023年AIニュース総ざらい」の後から、AIについてどこか考える日々を過ごしていた。

 そんな中で目にとまったのが「ブラック・ミラー」のシーズン6の1話目「ジョーンはひどい人」だった。


 あらすじは「世界的な動画配信サービスが、自分の日常生活を大物女優のサルマ・ハエック主演でドラマ化したことを知った平凡な女性。そこには、知られたくない秘密までもが映し出されていた」というもの。

 主人公、ジョーンは「知られたくない秘密」によって恋人と仕事を失う。弁護士に相談し動画配信サービス(どう見てもNetflix)を訴えようとするも、サービス利用前の利用規約に映像化などの文章も含まれており、それに同意しているので法的に問題はないと言われてしまう。
 であれば、自分を演じた女優のサルマ・ハエックを訴えたいとジョーンは弁護士に食い下がるも、ドラマCGで作られており、サルマ・ハエック本人は演じていないことが分かる。

ジョーンはひどい人」の個人的に肝だと思う点は二点。
 一つ目は女優のサルマ・ハエック自身は自分の顔を動画配信サービス(どう見てもNetflix)に貸しているだけの状態だったこと。
 そしてもう一つが、ジョーンの「日常生活」がドラマ化されたのは偶然で誰かの意思で選ばれたわけではなかったこと。
 二つに共通するのは責任者の不在だ。
 AIがランダムに選んだのがジョーンであり、女優のサルマ・ハエックで、すべて偶然で誰かが意図した訳ではない。

 責任者は不在。AIは当然、責任を取ることはできない。
 結局は使用者に責任は跳ね返ってくる。今回の「ジョーンはひどい人」で言えば、恋人と仕事を失うような日常生活を送っていた貴女が悪いとなる。
 などと書くと気持ちが沈むドラマに思えるけれど、すべてを失ったジョーンが吹っ切れて行動を開始する辺りは、やっていることは最低だが、さわやかな解放感があった。
 終わり方も良い。
 現代の社会を皮肉りながら、ちゃんと物語として面白いものになっている。

 ◯

 今年の目標を「1日100ページ読書チャンレジ」にして挫折した。平日の仕事の行き帰りと部屋に帰ってきてからの時間を注ぎ込んで1日100ページの読書は可能だと分かったが、これをすると映像作品を見る時間が一切なくなる。
 正直、それでも良いと思ったのだけれど、外出先でも文章が書けるようにChromebookを買ったら思いのほか快適に文章が書けると分かってしまった。
 読む見るより、書くに比重が傾いて仕事の行き帰りは文章を書く時間になった。
 2月の前半で挫折した「1日100ページ読書チャンレジ」の敗因はChromebookだった。

 今は仕事から帰ってきた部屋での時間が読書。電車の待ち時間や地下鉄に乗っている間を映像作品を見る時間。という区分けになった。
 重点的に読みたいもの、見たいものがあれば土日に回す。
 同時に今年の目標の中の一つ「ランニング」をはじめる。まずは週に一回を目標にした。
 二週間達成したのちに、風邪をひいた。

 泥酔したかと思えば、次は風邪。
 さすがに風邪の中でランニングには行けないので今週は断念。
 定めた目標を達成できないのは、なんとも歯がゆい気持ちになる。二ヶ月くらいは継続したかった。

 ◯

 33歳になった。
 彼女に「33歳の目標は?」と聞かれた。
 達成できなかった目標は虚しいからなぁという気持ちが湧いた。
 けれど、そもそも達成できなかった時に虚しくなってしまう目標を定めていることが問題なんだと思い直した。
「ディズニーを好きになる、かな」
 その日にディズニープラスに加入した。利用規約はたいして読まなかった。
 もし仮に「さとくらはひどい人」というドラマが配信されたら、noteで逐一宣伝と反論をしていきたい。そんな日は未来永劫来ないだろうけれど。

 なんにしても、34歳になる頃にはディズニーを胸を張って好きだと言えるようになりたいと思う。

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さとくら
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