スポーツと感動
先日、話題の東京マラソンをテレビ観戦した。
昨夏に行われたマラソンの東京オリンピック代表選考レースであるMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)は、猛暑のなか足を運んで観戦した。
先日ギリギリ開催された青梅マラソンでは、往路を走る一般ランナーとして復路を走るエリートランナーたちを応援した。
エリートランナーたちの息遣いを感じる観戦は、まさに通り過ぎる一瞬なのだが、やはり鳥肌が立つ。
そして、今回はあえてテレビで見ることを選んだ。
オリンピック代表最後のひと枠をめぐる戦いをリアルタイムで追いかけたかったからだ。
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走らずとも待っていれば3人目の代表枠が転がり込んでくるかもしれない大迫傑選手。
なんせ彼の持つ日本記録は2時間5分台という脅威的な記録なのだからまず破られることはないだろう、と考える人は少なくない。
しかし、その記録をもはるか超えて2時間4分台で代表権を掴んでやろうという設楽悠太選手。
時にビッグマウスと揶揄されることもあるが、彼のスタンスはいつも明確で揺るがない。
日本人一位であっても2時間5分台ならば東京オリンピック代表を辞退するという。そのレベルでは世界と戦えないから、というのだ。
そして昨夏のMGCで代表入りを期待されながらまさかの最下位に終わり、今回オリンピック代表枠奪取を狙う井上大仁選手。
他にも名だたる日本人ランナーが100人以上参戦するのだから面白くないはずがない。
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レース展開はご存知の通りだ。
日本記録をはるか上回る2時間3分台設定のペースメーカーにピタリとつける井上選手。
間を空けずその少し後方に位置取る大迫選手。
中盤、大迫選手が先頭集団の井上選手らから遅れはじめ、もはや井上選手の独走(外国人選手は複数いるが)か、と思われたが、粘りを見せる大迫選手がペースが落ちる井上選手を終盤捉えて一気に抜き去り、そのままペースを大きく落とすことなく日本新記録でゴールという展開。
期待された設楽選手は一度も先頭集団に上がることなくレースを終えた。
文字にするとなんとも味気ない。
しかし、あの真夏のMGCからの半年の彼らの取り組みの断片を知る僕のような市民ランナーからすれば、言葉だけでうまく言い表せないじわじわと効いてくるいろんな思いがある。
それは単に自分もマラソンランナーの端くれになれたから、という単純なものではない。
恐らく僕の半分程度しか生きていないはずの彼らの生き様を見せつけられているからだろう。
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冒頭に書いた。
待てば権利が手に入るのにあえて挑戦を選んだ大迫選手。
その大迫選手をはるか凌駕して世界で戦うポジションを掴もうとする設楽選手。
MGC最下位というどん底から這い上がり、一気にてっぺんを取ろうと目論む井上選手。
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彼らが取り組むスポーツの種目がたまたまマラソンというだけ。
僕(ら)は彼らのうちの誰かになりたいと真剣に思い、彼らのように潔くシンプルに、喉から手が出るほど欲しいものに照準を当てて脇目も振らず真っ直ぐに突き進んで行きたい、と心底思っている。
そしてこのような一市民の夢や願望を彼らスポーツ選手が見せつけてくれるから、一人の勝者と多くの勝者になれなかった人たちの現実を自分の現実に重ね合わせることができるから、心を揺り動かされるのだろう。
これらを感動というのだろうが、なんだか一言で片付けられない思いもあり、だからスポーツとスポーツ観戦はやめられない。
つづく
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