私が寒がりな訳
私は異常に寒がりである。冬ともなれば、タンクトップにヒートテック、長袖にTシャツ、セーター、さらにその上からジャンバー3枚、計8枚を着て仕事に行く。しかし、それでも寒い。
北海道人は、暖房設備が充実しているので、元々寒がりだとは聞く。けれど、私はその中でも、特に寒がりである。
一度だけ、親のすすめで、北海道で公務員試験を受けたことがある(結果は落ちました)。試験の教室は窓が開いていて寒かったので、私は試験官の先生に、「寒いのでジャンバー着ても良いですか?」と聞き、ジャンバーを着させてもらった。そのあと先生が、「他に寒い方いますか」と言った時、誰一人として手を挙げなかった。
どうしてそんなに寒がりになったのか、私には心あたりがある。
それは、9年前のことだ。
私は仙台に住んでいた。そして、東日本大震災があった。
3月11日当日は、個展をするために、東京に行っていた。
なので、当日の揺れや、津波を経験することがなかった。そんな私にとって、一番恐怖だったのが、原発だった。
私は放射性物質が部屋に入ってくるのを極度に恐れ、家から帰って来たら、着ていた服はすぐビニール袋にまとめ、まずお風呂へ入り(それは現在と似ていますね)、一切窓は開けなかった。
そんな生活が、震災から半年間、9月になって北海道の実家へ帰ってくるまで続いた。
夏も、エアコンは外気を取り込むということで、つけることができず、空気が淀んだ蒸し暑い部屋で、私はひたすら暑さに耐えるしかなかった。
それでも私がマスクをはずして息ができるのは、その地獄のような部屋しかなく、結局、引っ越し数日前に友達が家に泊まりに来る日まで、ただの一回も窓を開けることができなかった。
そんな毎日があったので、私は暑さには強くなった。けれども反対に、寒さには耐えきれない体質になってしまったのである。
今も私が異常に寒がりなのは、あの日々に対する、何らかの主張の意味も込められているような気がする。何枚も何枚も着込むことで、私はあの日々を、守っている。