山口から東京一人旅〜Japan 2022夏
帰国して後半に差しかかった7月のある日、大江千里さんが日本へ来られると言う投稿を目にする。しかも、サプライズライブのお知らせだ。
白馬、青山、鎌倉、関学の4つの夏物語。アメリカに帰る10日前からスタートで、お知らせがあったのはその1ヶ月前。
とにかく全てを早く決断しなければならない。日程と場所から考えて1番最短時間距離は「青山」
実際の距離ではなく、時間が最短で行ける場所だ。チケット発売日まで待つと、航空券の早割りチケットに間に合わないから、一か八かで先に購入して発売日を待った。
今回の帰国は家族の為だった事もあり、アメリカへ帰る日が近いその時期に東京に行くべきか悩んだりもした。感染も気になる。
そんな時に姉が
「行って来ーさん!」と。
それからは全てがトントン拍子。
当日6amに義兄が徳山駅まで送ってくれて、岩国空港まではローカル線の旅。
壮大で美しい海が線路の少し高い位置から広がっているのが見える。
綺麗だ。
貸切りの電車の中で前日に買っておいたパンと缶コーヒーで朝食をすませると、1時間で岩国駅へ到着した。
岩国駅からは空港行きのバスが、フライト時間に合わせて運行されている。
岩国錦帯空港は、アメリカ海兵隊と自衛隊基地の敷地内に出来た民間の空港で、駅から近く、チェックインは搭乗の30分前に着けば余裕なくらい小さい。次回の帰国が羽田着なら、また利用したいと思った。
東京に着いたらまず
「大川直人写真展」へ。
大江千里さんをはじめ、80、90年代に撮られたアーティスト達の写真が、ずらりと展示されている。穏やかな目をしたアーティスト達が真顔でこちらを見ているような....。何故こんなにも”リアル”な写真が撮れるのか。
リラックスしたアーティスト達の表情は、来られている方に話しかけられる大川さんを見ていると納得。とても気さくなお人柄だ。千里さんの話しに花が咲き、ライブがギリギリのお知らせだったにも関わらず、白馬が直ぐに完売した事にも驚かれていた。
千里ファン恐るべし、笑。
実際にお会い出来て良かった!
西麻布のホテルに移動し、持って来たシャツにアイロンをかける。
今回の帰国ではTシャツしか持って来ておらず、姉のクローゼットから軽くて涼しそうな、ちょっとドレスアップ出来そうなトップスを拝借した。
Google mapでは会場まで徒歩14分とあるから、歩きやすいペッタンこのサンダルを履いて、鼻息荒く外に出た。
でも、時すでに5:20pm。
脳内が指示したのか道路に身を乗り出して、自然と手を上げている自分がいた。
「タクシー!」(脳内の言葉)
ありがたい事に直ぐに止まって下さった運転手さんに
「短い距離なのにごめんなさい〜、でも、乗って良かった!」
と心からの感謝を伝えると、
「この距離を歩くのは無理ですよ。乗って正解です!」って、
優しい...涙。
「わぁ、もう並んでる!」私
(開演30分前だから当たり前、笑)
「何があるんですか?」運転手さん
「大江千里さんの、3年ぶりの日本でのライブなんです、コロナでキャンセルになって...」と話しながら降りてダッシュ。
運転手さん、ありがとう!
大川さんも「良い会場ですよ」と言われていたけど、丸くピアノを囲んだ素敵な空間。どこに座っても特等席だ。
「レシピ本のチラシを目印に座って下さい」との事だが、もう既に荷物がおいてあったり、見渡してもどこが空いてるのか分からない。そんな中で、一枚の黄色いチラシが目に入った。1番前の席。
「ここ空いてますか?」と聞いて座る。しばらく隣の方とお話ししたら、SNSはされていなくて、昔からのファンでせっかく近くに来られたから、この機会を逃さない様にと参加されたそう。
そして、千里さんが登場。
演奏が始まるとあちらこちらからすすり泣きが聞こえてくる。
隣の方も号泣。
1番最初に千里さんのライブに行ったのはNYの富ジャズ。その時は「Boys & Girls」が発売されて初めてのライブだった。そこで号泣されている方を見たことがある。
それが日本ではポジティブ嗚咽の大合唱。
大江千里を40年続けられている千里さん、一緒に歩まれてきたファンの方の思い、これは凄い事だ。今でこそSNSで対話が出来る時代になったけど、千里さんは30、40年前に、歌でファンの方と一対一の対話、どうしたら寄り添えるかを考えながら曲を作られていたと何かで読んだ。それが、この涙なのではないだろうか。
感動の中でライブは終わった。
日本で初めて行ったライブには、NYの富ジャズや、Birdlandで演奏されているのと同じ、ブレない千里さんがそこにいた。
ピアノに置かれたiPhoneにお知らせが入るたびに、ピカっと光る”ぴちゃん”の写真。
ブラボー!
立ち上がりたいのを我慢して、拍手に力を込めた。
2日間公演なので翌日も来られる方を羨ましく思いながら、友達との待ち合わせ場所へ移動。
今回の旅では、マスクを外す場所には行かないと決めていた。移動も全てN95。
食事もホテルでのお弁当だけど、
日本滞在の、最後のフィナーレの様な最高の旅になった。
その時の状況に合わせて
出来る時に出来る事を。
帰路の岩国空港には、姉と甥っ子の姿が。遠いところを迎えに来てくれた。帰り道に立ち寄った山賊で、田舎そばを食べながら旅の報告をする。
羽田空港で買ったお土産をみんなで開けるのが楽しみだ…。