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アマゾンの環境破壊が世界に与える影響



アマゾンについて知っておきたいこと


アマゾンは、地球上で最も巨大な熱帯雨林として知られており、多様な生物種が生息する生態系の宝庫です。世界の生物多様性の 10% が生息し、アマゾンマナティ(淡水に生息するジュゴンの一種)、アマゾンカワイルカ(アマゾンのピンクイルカ)、グラスツリーフロッグ(半透明の肌を持つカエルの一種)、アマゾンジャガーなど、ここにしか生息しない生き物も多数生息しているのです。ここには16,000種類の樹木もあり、地球上最大の植物種が集中しています。
しかし、この貴重な場所が危機に瀕しています。特に、過去40年間でアマゾンの乾燥期が長くなっており、乾季が以前よりも5〜15日長くなっているそうです。これは熱帯雨林と南米のモンスーンシステムが臨界点に近づいている警告信号として受け取られています。一因として、過度な人為的伐採が挙げられます。森林伐採がある「臨界点」を超えると、降雨量が数年で30-50%減少する可能性があると示しています。実際に現時点での伐採からもアマゾン地域の雨季の開始は遅れており、雨量の減少をもたらしています。これにより、さらなる雨量の急速な減少が生じ、森の一部が乾燥し、多くの木々が枯れてしまう可能性があると警告されています。


ブラジルのアマゾン川で見つかったアマゾンカワイルカの死骸(2023年 ロイター/BRUNO KELLY)

これらの変化はすでに生物多様性にも影響しています。ブラジルのアマゾン川で、今月上旬にアマゾンカワイルカ120頭の死骸が見つかったのです。専門家らは、深刻な干ばつで川の水位が下がり、水温がイルカの生存が不可能な高温に達したことが原因とみています。また、アマゾン川流域では最近、水中酸素の低下で数千尾の魚が死んでいるのです。

特に、アマゾンの熱帯雨林が破壊されると、その地域の水循環も悪影響を受けてしまいます。アマゾンの熱帯雨林が大気に水分を戻すプロセスは、蒸発と蒸散と呼ばれ、植物が土から吸収した水を葉から放出する過程も含まれています。(大きな木は地下60メートルから水を吸い、1日に1000リットルもの水を大気中に放出するそう。これは4000億から6000億本の木によって繰り返されています)このプロセスが続くことで、熱帯雨林はその地域の水循環や気候の安定化に寄与しているのです。雨が降らないと土壌の水分が減少するため、植物の蒸散量も減少します。降雨パターンの変化や気候の変動につながる可能性があります。熱帯雨林の乾燥と破壊は、森林火災のリスクも高めています。過去には、広範囲の森林火災が報告され、これが地域の生態系と気候に大きな影響を与えています。

アマゾンの熱帯雨林は深い緑色の植生で覆われており、低いアルベドを持つため、太陽光を大量に吸収しています。この吸収されたエネルギーは熱として環境に放出されることが少なく、地域の気候を安定させる役割を果たしています。アマゾンの熱帯雨林が伐採され、裸の土壌や草原に変わると、伐採された土地や草原のアルベドは熱帯雨林よりもやや高いため、太陽光を反射しやすくなります。しかし、それでもこれらの地表は太陽光の大部分を吸収するため、地表の温度が上昇する可能性があります。これは土地の乾燥ばかりでなく降雨パターンの変化を引き起こし、さらなる森林の減少や環境変化を招く可能性があります。

アマゾンの先住民族


Sebastião Salgado - Indiens Marubo, Vallée de Javari, État d’Amazonas, Brésil, 1998
© Sebastião Salgado/nbpictures

アマゾンの先住民族は、森の資源と古代からの伝統的な生活様式に依存しています。ポルトガル人が船で初めてブラジルに到着した時、アマゾンには、約500万人と推定される先住民が住んでいたそうです。20世紀半ばにはブラジル南部からの移民が牧場や大豆のプランテーションのために森林を伐採し始めます。また、新しい道路と航行可能な河川により、伐採会社や金採掘者がこの地に入るようになります。先住民の土地は着実に破壊され続け、現在は先住民の人口も37万人以下に。元々、188のグループに分かれて、そこには150の異なる言語があったそうですが、今はそれも変わったのでしょう。近年の開発、伐採、外部からの経済や文化の影響により、彼らの生活は変化し、伝統的な暮らしや文化が脅かされています。


Juma Xipaya酋長と。彼女は、24歳でアマゾンの原住民族シュパイヤ・テュカマ村初の女性酋長に。今、彼女はパラ連邦大学(UFPA)で医学を学んでいます。村のChief Raoniはアマゾンを保護するすべての人々に対して、Jumaを守るようにと呼びかけています。彼女は森を守る戦士の1人でもありました。

Jumaと私が出会ったのは、グラスゴーで開催されたCOP26でした。彼女から「ロンドンに帰ったら、ぜひ行ってみて」と言われた「Amazônia」という写真展の様子もご紹介したいと思います。数々の写真の中で印象に残っているのは、ブラジルの熱帯雨林と長い間アマゾンを守り、持続可能な方法で生活してきた先住民の暮らしでした。Sebastião Salgadoのアマゾンの写真からはアマゾンの多様性と複雑さを感じ取れますが、そこで暮らす子どもたちの様子が心に残りました。音楽家Jean-Michel Jarreによる52分間のサウンドトラックは、森の音や動物の鳴き声を取り入れることで、展示を一層魅力的にしていました。

写真展「Amazônia」 bySebastião Salgadoから伝わる緊急性

アマゾンの熱帯雨林は、「地球の肺」とも称され、地球上の酸素の約20%を供給しています。これはアマゾンの植物が光合成を行い、二酸化炭素を吸収して酸素を放出するためです。また、アマゾンは世界の陸上生物種の約10%が生息しており、その生物多様性の豊富さは計り知れません。まだ発見されていない種もあるそうです。

しかし、森林破壊や火災により、この雨林がCO2の放出源に変わるリスクが高まっています。過去数十年にわたり、アマゾンの熱帯雨林は農地や牧草地、鉱山、ダム建設のための伐採によって大きく減少してきました。このような人間の活動は、生態系の破壊、生物多様性の損失、及び先住民の生活への影響をもたらしています。今、アマゾンの先住民たちも黙ってはおらず、COPなどの国際会議にも参加し、現状を訴えています。現在、アマゾン内には 101 の先住民族の領土と 196 の保護地域があります。彼らの伝統的な知識と環境への関与は、アマゾンの保護と持続可能な状況に立て直すために重要です。


アマゾン雨林は、地球の気候や生物多様性にとって極めて重要な役割を果たしています。アマゾンが破壊されると、緑豊かな森林は乾燥したサバンナになってしまいます。そうすると数十億トンの二酸化炭素が大気中に放出され、温暖化がさらに進み、地球の一部は移住不可能になるかもしれません。そのため、その保護と持続可能な利用は、私たち全てにとっての重要な課題となっています。

アマゾンの上空にはよく厚い雲が広がっています。これは、湿度が非常に高いため、雲が容易に形成されるため。アマゾン熱帯雨林は特に午後になると大気が不安定になりやすく、雷雨が発生しやすくなる


Salgadoは、アマゾンの環境と気候変動に対する緊急性を写真を通して表現していました。展示には「気候非常事態」という警告も盛り込まれており、アマゾンの持つ美しさとともに、その脆弱さと保護の重要性についてのメッセージも伝えていました。

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領によってアマゾンの環境は改善されるのか

Luiz Inácio Lula da Silva COP27にて

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は、国連気候変動会議COP27で、アマゾンの違法伐採を取り締まり、気候変動対策でのリーダーシップを取ることを誓いました。彼の発言は、アマゾンの大規模な伐採を許容した元大統領のジャイール・ボルソナーロの政策とは異なるものであることを示しています。彼は、ブラジルがアマゾンの60%を所有しており、気候の安全を守るためにはアマゾンの保護が不可欠であると言っています。大統領として再度就任するにあたり、各省庁間での気候行動を調整する新たな国家機関の設立や、1200万ヘクタールの再植林目標を推進する考えを示しています。また、アマゾンファンドへの資金提供をアメリカに要請しました。その後、バイデン政権は今後5年間で同基金に5億ドルを拠出すると約束しています。ブラジルの新政権下でアマゾンの森林伐採は、少なくとも60%減少しました。ブラジル政府は、環境保護と先住民の権利に対するコミットメントと、アマゾン川の河口近くの石油掘削、巨大な水力発電ダムのライセンス更新、アマゾンの保護地域を貫通する予定の高速道路、そして穀物輸送を目的とした鉄道プロジェクトなどの経済成長とインフラ整備のニーズとの間でどのようにバランスを取っていくのでしょうか。アマゾンの乱開発による被害はブラジルに1840億ドルの損失をもたらす可能性があることを、世界銀行は報告しています。今後の動向にとても注目しています。


Aerial view of the Mãe Grande Curuçá Extractive Reserve. (C) Cícero Pedrosa Neto/The World

アマゾンを保護・復活させるためには

アマゾンを保護し、復活させるには、個人、コミュニティ、国際的なレベルでの取り組みが必要です。以下は、アマゾンから遠くに住む私たち一人一人ができることです。

  1. アマゾンの現状についての意識を高めること。

  2. 持続可能な消費: サステナブルな製品を選択し、森林伐採や非持続可能な農業実践に関連する製品の購入を避けることができます。例えば、持続可能な方法で生産された木材や紙製品を選ぶ、または非持続可能な方法で生産された食品(特に大豆や牛肉)を避けるなどです。日本の食品産業や家畜飼料としての大豆の需要は高く、アマゾンからの大豆も一部を占めています。

  3. 資金提供と支援: アマゾンの保護を目的とするNGOや地域団体に寄付することで、彼らの取り組みを直接支援することができます。

  4. 教育: 子供たちやコミュニティのメンバーにアマゾンの重要性や現在の状況について教えることで、次世代がこの問題に取り組む準備をすることができます。

  5. 持続可能な観光: アマゾンを訪れる際は、持続可能な観光を選ぶこと。

  6. カーボンオフセット: 炭素オフセットプログラムを通じて、自分のカーボンフットプリントを相殺することができます。アマゾンの再生や保護に関するプロジェクトを支援できます。スイスの超富裕層の中には、アマゾン基金に寄付している人たちが今年は特に多くなりました。

日常の選択を通じて、私たち一人ひとりが環境の保護に貢献することができます。まずは意識することから始めてみませんか。

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