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12.準々決勝 対フランス

準々決勝、絶対王者との対決。
フランスは世界ランキング1位
オリンピックでは3大会連続で金メダルを獲得している。
また、今回のオリンピックでは個人戦でフランスの選手、カノーネが優勝、金メダルを獲得している。
もちろん他の選手も実力者(世界ランクはボレル6位、バルデネ12位)揃いで、実質今回の団体戦の優勝候補で、絶対王者とも言っていいぐらい強い。

日本チームは序盤から競り合う善戦で、(山田)3-5、(加納)7-9、(宇山)12-15、(山田)17-18、(宇山)22-25と、フランスに僅かに1~3点リードされる展開。
ただ、それ以上点差を詰められないでいた。

フランスはリードをしているのに、敢えて前で勝負を仕掛け、攻撃の姿勢だった。

日本の長所は攻めている時に発揮されると僕は思っている。
三選手とも自ら仕掛ける事により相手の隙を見つけるのが上手く、スピードを生かして相手の懐に入る事が出来るからだ。
おそらくフランスもそれを知っているのだろう、リードをしていても守る事なく、敢えて前で勝負を仕掛けて来た。
隙を与えない為に。

また、アメリカ戦での見延さんの交代がやはりこの試合を苦しいものにしていた。
実は日本はフランスとの相性がよく、
過去の試合ではフランスに勝利している。
というのも見延さんの活躍が大きく、フランスのエースであるボレルに対して見延さんが点を量産する事が多かったからだ。
だが、今回その見延さんはいない。

(加納)27-27、
6対戦目でやっと追いつく事が出来た。
だが、さすが王者。
同点になっても守りに入ることなく強気の姿勢、「日本のペースにはさせない」と、時間を使いながら前に前に攻めてくる。
(宇山)33-35、(山田)36-38
宇山や優も必死に食らいつくが離される。
この2点差が近いようで遠い…。
そして最後の9対戦目で加納くんへ…。

団体戦はMAX45点まで取ることが出来る。
だからフランスは7点を取れば勝ち、日本は9点を取れれば勝ち…。
この試合は3分間のタイムアップでは終わらない、どちらが多く点を取れるかというシンプルな点取り合戦となった。

相手は2m近くあるフランスのエース、ボレル。
対する加納くんは173cmと小柄な選手、フェンシングは剣を持った無差別級の戦いでもある。
相手に飛び込み必死に食い下がる加納くん。
途中、剣が折れるアクシデントもあるがボレルに対して一歩も引かない。怒涛の追い上げ。

43-44、フランスにマッチポイント。
フランスが1点取れば勝ちの場面、エペは同時得点もある種目。
加納くんに求められるのはボレル相手に点を取る事、尚且つ点を取られないこと…。
点だけを見れば絶対絶滅のピンチに思える。
だが、僕は逆にチャンスだと思った。
向こうの心理的には、同時得点でもいいので駆け引きをするよりも安易に突きに来てくれることが多くなるからだ。
また、このような逆境の場面を日本は想定して練習し、きっちり日本は勝って来た。

小さな身体でフットワークを活かしボレルを誘う、安易に突きに来た剣をしっかりと捉え冷静に突き返す。

44-44 。


鳥肌が立った。

そして一本勝負、先に1点取った方が勝ち。
加納くんの緩急をつけたフットワークに誘われて飛び込んでくるボレル、加納くんはそこをすかさず捉えて突きを返すが外してしまう、だが、持ち前のカバーの速さにより2度目の突きがボレルを捉え見事逆転勝利。
涙が出た。

もちろん最後の加納くんの頑張りはものすごい。
だが絶対王者フランス相手に離されないで必死にみんなが点を繋ぎ、加納くんにバトンパスをして最後きっちり決めてくれた。
その過程、ストーリーを考えると涙が出た。

エペジーーンらしい試合だな。
これがエペジーーンだなと。

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