渋谷の映像ベンチャー企業が縦型ショートドラマ制作に本気になった話:第2話「夜明け前、慢心、雷」
※この話は実話に基づいたエンターテインメント&ノンフィクション&ドキュメンタリー&リアリティショー&新規事業の裏側です
第2話:夜明け前、慢心、雷
「100万再生、余裕でしょ、いけそうじゃない?」
THINGMEDIAの会議室に集まった6人の精鋭メンバーは、自信に満ちた表情で口々に語り合っていた。
クボタ(シング新卒3年目、元長髪、現さっぱり)
イサナ(シング新卒3年目、唯一のディレクター)
セキグチ(企画の鬼、元法学部)
フジモト(SNS感度シングNo.1)
カメヤマ(テレビ番組制作会社出身、ディレクター志望)
ヒガシノ(シング新卒2年目、鬼のドラマ、映画ウォッチャー)。
彼らは自らの意志でこの未来を担うプロジェクトに志願してきた若きクリエイターたちだ。
※メンバー紹介は後々紹介していく
企画がすべて
5月のある日、最重要な最初の「企画会議」が開かれた。
企画は正義!企画こそが原点!企画が未来をつくる!
まるで某海軍の格言のように、この会議の重要性は全員に刻み込まれていた。
「サスペンスだ!置き配を盗むところから!」
「ホストとタイムリープ!」
「SFとインフルエンサーを掛け算!」
「音楽!音楽!」
「縦ならではのギミックで!」
※実際に出てきた企画の種たち
各々が温めてきた企画をテーブルに並べる。
個性的なアイデアが飛び交うが、決定打に欠ける。
時間だけが過ぎていく中、
テレビ番組制作会社出身のカメヤマが突如叫んだ。
「...TTPだ!」
「...そうだ、TTPだ!TTP!TTP!」
会議室が沸き立つ。
TTP、つまり「徹底的にパクる」。
SNSネイティブたちの間で最強の戦略として知られるこの手法。
バズっているコンテンツを分析し、自分たちなりにアレンジを加える。
新しいオリジンを生み出す技術でもある。
「よし、これでいけるんじゃない」
6作品ほど企画がまとまりかけたその時、誰かがふいに質問を投げかけた。
「これって制作費どれくらい出ます?」
それまで会議室のすみっこで黙っていたCOOのサトウが口を開いた。
「1万円」
「...?」
「1本1万円、6作品だから6万円」
「...ドラマなんですよね?THINGの未来をつくるプロジェクトなんですよね?…6万円っていくらなんでも…」
「…もっと予算ないと無理でしょ」
「6作品だから6万円!!!」
会議室に雷が落ちた。
サトウの言葉が続く。
「ドラマだからとか、THINGMEDIAの未来とかマジで関係ない。
このプロジェクトに、これまでの常識は全て通用しないと思ってほしい」
「自分たちは、これまで顧客の課題や依頼に対して、企画や内容に応じて実現プランを立て、プロフェッショナルなスタッフに依頼し、とりまとめて、制作して納品をすることがほぼ全てだったと言っても過言ではない」
彼は雷だった。
「このプロジェクトは、自分たちの常識をいかに捨てられるかだ」
「自分たちでまずは全てをやりきる、肝は内製力の向上だ」
「利益が1mmも出ていない現状で、予算がある前提で挑むのは何も考えてないに等しい」
「クリエイターはアイデアが全てだ、ないなら、ないなりに捻り出す、見つけ出す、それがクリエイターだ」
内製力の重要性、アイデアの力、そしてクリエイターとしての姿勢について。
「できる、これまで制作会社が培ってきた方法を駆使すればできる。
できない言い訳を探すのは簡単だ。
できるやり方をとにかく考えて試して結果を出す、
ゴールに対して、つくり方からつくる、それこそが自分たちのやり方を確立するってことだ」
雷はそれだけ言い残して、会議室を去っていった。
静寂が会議室を包んだ。
そして、全員が同時に口を開いた。
「...やりましょう」
3ヶ月以内にバズる?縦型ショートドラマレーベルT36は、まだ夜明け前。
彼らの真の挑戦はここから始まる。
※「T36」が制作する縦型ショードラマはtiktok/Youtubeアカウント「タテドラ/TATEDORA」で観れます。5月からはじめて1ヶ月、すでに何本か作品をつくりはじめてるので、忌憚なき意見、暖かい意見、お待ちしております。
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