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虎に翼 第25週。それでも、あがく。

前回、「偉い人」になるのはせつない、という話を書きました。年を重ねて守るべきものが増えると、つまらない行動をとるようになる。若い頃のような、思い切った行動ができなくなってしまうドラマの登場人物に、今の自分のつまらなさを重ねて憂いて。
しかし今週、その気持ちは消し飛びました。中年となった寅子たち、まだがんがん戦ってるし、思い切ってるし、おもしろい人生を生きている。

いつも「なるほど」とすべてをクールに受け流していたのに、鼻血を出すほど怒って桂場に抗議する航一さん。

弁護士になったヒャンちゃんに触発され、司法試験を受けることを決意する涼子さま。

支援を受けられないでいる原爆被害者たちのために働こうと決意したヒャンちゃんと、彼女をサポートすることにした汐見さん。

尊属殺人罪は憲法違反として、戦い続ける轟とよねさん。

道男と、少年を雇いながら育てて、お店でおいしいものを作って繁盛させている梅子さん。

少年法厳罰化に真っ向から反対する寅子。

みんな、全然つまらなくない。年を取っても全然あきらめてない。


司法試験に見事に合格したけれど、司法修習は受けないと告げる涼子さま。
「この先、弁護士になるもならないも私の手の中にある」
そう、いつだって運命は自分で決められるんですよね。「かわいそうで不幸」と自分を決めつけてきた世の中への「私なりの股間の蹴り上げ方」、最高。
これからは司法試験を受ける人たちに指導していくという涼子さま、玉ちゃんとふたりでますますいい先生になるんだろうな。

「いつも心によねさんを住まわせて生きておりましたのよ」と涼子さまはよねさんに微笑むけれど、よねさんもきっと、涼子さまも寅子も他のみんなも自分の心の片隅に住まわせて、ずっと戦っている。ありふれた悲劇を、そのまま見過ごさずに。
よねさんはあの日、マスターに助けられた。今度は彼女がたくさんの人を助ける。


涼子さまとの会話のあとで、よねさんは依頼人の美位子に語りかける。
「人を見て安堵したり、自分の身に起きたことと比較したりするのはやめろ」
ここで、私、ぐはぁっと声にならない声をあげて、椅子から落ちそうになりました。

旧Twitterの「おすすめ」、あれを長時間見てしまうこと、ありませんか。
どういう基準でおすすめされてるのかわからないけれど「うちの夫がひどい」「義母が」「職場でパワハラが」「この人が炎上してますよ」みたいなのがずーっと続いていく。見ないようにしているのに、時々、どういうわけか「わあ、みんなが怒っている…」と、ずーっと眺めてしまう。しばらくすると我に返って閉じるんですが、私があれを見てしまうのってストレスがたまって「とにかくここから逃げたい」ってなってる時みたい。緊急避難的に、心を落ち着ける手段になっているというか…いやぁ、よくないですね。
山田轟事務所で、他の依頼人たちの話を立ち聞きしてしまう美位子も、抱えている重さは違うだろうけれどこんな感じなのかなって。世の中にはこんな不幸もある、私はマシだ…そんなふうに他の不幸探しをしないと、生きていけないくらいに追い詰められている。

美位子も、世の中がクソだと言い切ってくれるよねさんを、心の中に住まわせられたらいいな。私も、不幸探ししそうになったら、よねさんに「あほか」と怒ってもらおう。そんなことよりクソな世界に向けて私なりの股間蹴りをしよう。

「中年というか初老だし、こんなもんでしょ」とつまらない諦め方をしないで、あがく。いつも心によねさんを。


しかし「台本を10冊くらい読んだ」だけで、こんなに物語の本質をつかんだ主題歌を書ける米津玄師さんすごすぎません?

したり顔で触らないで 背中を殴りつける的外れ
人が宣う地獄の先にこそ 私は春を見る

生まれた日からわたしでいたんだ 知らなかっただろ
さよーならまたいつか!

さよーならまたいつか!

ああ、もう最終週!

桂場は最終回にやっとお団子を食べそうな気がしている

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さとひ(渡辺裕子)
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