虎に翼 第20週。「見えないもの」について。
*今日の話、すっごく長いです。
*名前の間違いなど、ちまちまと修正してます。おっちょこちょいがなかなかなおりません…。
寅子と航一さんが、お互いの「永遠を誓わない愛」を確認して三年がたち、ふたりとも東京へ戻ってきた第20週。
東京で待っていたライアンも多岐川さんも桂場さんもお元気そうで何より。雲野弁護士と岩居弁護士も再登場してうれしい。
そしてとにかく、よねさんが弁護士バッチをつけていたことと、轟との事務所名が「山田轟法律事務所」になっていてうれしい。憲法の条文の前で、男女とか先輩後輩とか関係なく、じゃんけんで名前を決めるふたりがすてき。
旧態依然とした面接官に、服装や言葉遣いのせいで落とされていたと思われるよねさんが、自分らしくあることを曲げずにスーツとネクタイ姿で弁護士になったの、ほんとに最高。「服くらい相手の好みに合わせればいいのに」的な意見を見かけるたびに「そんなことないよ!」とジタバタと思ってたんです。よかったなー。
よねさんがスーツのままでとうとう弁護士になったように、雲野弁護士が戦前からお金にならない裁判ばかり引き受けていたこととか、梅子さんが人に美味しいものを食べさせるのが何より好きだったこととか、桂場さんがとにかくあんこを愛していることとか、これまでに散りばめられていたエピソードが物語の終盤になって気持ちよくバシッと効いてきてて、くー、たまらん!と毎日うなってます。
梅子さんのお団子、桂場さんの合格点はいつ出るんだろう。竹もとのためにも、がんばれー。
人には見えているものと、見えていないものがある。
見えてないからといって、そこにない、というわけではない。
「なるほど」とアルカイックスマイルで自分の本心を隠し、人と距離をとっていた航一さんが、距離をぐいぐいつめてくる寅子に影響されて、本来の明るさを外に見せるようになり、大勢いる前でプロポーズまでできるようになった。
けれど星家の家族たちは、見せられたことのない父親の姿に困惑し、今までの自分たちの関係はなんだったのかと揺れているよう。
そして寅子は、そういう細やかな人の心の機微とか揺らぎとかに、とことん鈍感で、何も見えていない…そのくらい鈍感だから「ごめんなさい、でも!」とブルドーザーのようにすべてをなぎ倒して、人との溝を埋める役ができるんだとは思うんですが。もうちょっと周りを見ようとしてくれ、と、テレビのこちら側で優未と同じ顔で「はて」となってしまうこともたびたび。
「世話をされること」に慣れている直明は、同居によって、「世話をする人」の花江ちゃんと妻がどう感じるかが見えていない。
けれど私も、無条件で愛されるべき少年時代に長く家族と別れていた直明が抱えていた「もう誰とも離れて暮らしたくない」という苦しみが、見えていなかった。
見えてなくてもそこにある。
「入院した同級生・花岡のお見舞いに、毎日のように通う」
「花岡が間違ったことを言ったら、きちんと指摘して叱る」
「花岡がクラスメイトと話しているのが気になって、つい盗み聞きしてしまう」
「花岡が知らない女性を婚約者として紹介してきて、カバンを落とすほど取り乱す」
もしも、その人が寅子や、他の女子生徒だったら。
「この人、花岡に恋しているんじゃない?」とすぐに実況したと思うんですよ、私。
でも、しなかった。まったく恋とは思わなかった。
だって、轟だったから。彼が女じゃなく、男だったから。
轟の花岡への態度は、同じ故郷から出てきた友人に対する、暑苦しいくらいの友情だと思っていた。よねさんに指摘されるまで、彼の恋心に気づきもしなかった。
自分には偏見はないと思いたいけど全然違う、実際は偏見の塊なことを、日々思い知らされています。
ひとは見えてないものについてとことん鈍感で、「自分に見えないもの=存在しないもの」とすら思ってしまうことがある。こわいなあ。ほんとに、こわい。
再婚を迷うことができる寅子と、結婚することができない轟と。
来週はまた、自分に見えてなかったものをたくさん知ることになるのだろうか。
原爆の裁判の行方も気になるし、東大生として東京にいるはずの美佐江も気になる。
どうなるんでしょうか…早く続きが見たいけど、この物語が終わっちゃうのはやだなあ。