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虎に翼 第18週

もしも私が大学生で、寅子と同じクラスだったら。彼女と仲良くなっただろうか。
「はじめまして!私は寅子、とらこと書いてともこですけどトラちゃんって呼んでね、好きなのは歌!お近づきのしるしに歌います、うちのパパとうちのママg(以下略)」

もしも私が彼女の同僚だったら。
「え、マージャン?私やってみたいわ。やったことないけれど。次はどこでいつ?見学に行かせていただけるかしら娘もいっしょに」

…ぐいぐいこられて、すごく困っちゃったかもしれない。昼休みにご飯誘われるのが怖くて、なんか用事作ってしまう自分が想像できる。
昔から、勢いよく溝を埋めようとする人には、より深い溝を複数掘って後ずさりしてしまう方なので。

けれどきっと寅子は、その溝をこえる大きな大きな橋をかけ、その上をすごいスピードで駆け抜けてあっという間にこちら側にやってきて、戸惑っている私の背中をさするのだろう。
なんで今、誰かにそばにいてほしいのがわかったのかと戸惑いながらも、背中を撫でる温かい手に、徐々に心がほどけていくのだろう。

彼女のような人が、世界を変えていく。


遠くから見て嫌なやつだと思っていた、太郎次郎弁護士兄弟。そんな彼らにもぐいぐいせまる寅子によって、隠れていた彼らの悲しみや優しさを見せられて、もう全然、嫌なやつとは思えない。ちょっとうざいおじさんたちかもしれないけれど、嫌じゃない。

口が悪くて差別心まみれだと思っていた入倉についても、彼には彼の悩みと苦しみがあったのだと、寅子との会話で気がつく。

そして、星航一さんについても。

「なるほど」と曖昧な笑みを作って、それ以上は語らずに人と距離をとる彼に、最初はめんどくさいなと思ったけれど。
法律というよりどころに従うのは、自分の、流されてしまう弱さを知っているから。人と親しくならないのは、すべての人に対して罪悪感を持っているから。

彼が必死に作っていた溝は、「ごめんなさいね、でも!」ともがきながら近づいてくる寅子によってぎゅーぎゅーに埋められてしまった。
涙する航一さんとその背中をさする寅子に、ふりそそぐ日の光。
愛するものを失った暗闇にいた彼らは、ここから明るい方へと歩み始めることができるのだろうか。


寅子のような、人との溝を埋めていく強い人が、世界を変えていく。のかもしれない。だけれども。
たったひとりが、世界を変えるわけじゃない。なんの力もないひとりひとりが、ちょっとずつ、見えないくらいのなにかをして、世界はかわる。たぶん。きっと。

戦争が始まった責任が、航一さんひとりにはないように。
誰かひとりが悪くて戦争が始まるのではない。誰か強いひとりがいたら戦争を止められるわけでもない。
だから、力がなくても全員が「戦争はダメ」と言い続けるしかない。全員が責任を持って、平和を守る。
平和って、そういうことでしょう?と、語りかけられているような週だった。
8月ですね。


そんな、誰との溝もぐいぐい埋める寅子が、唯一おそれを抱いて立ちすくんだ相手、美佐江。彼女との対話は成立するのか、溝は埋まるのか。はあ、ドキドキする。

雪国。

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さとひ(渡辺裕子)
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