あなたのブツが、ここに。ここに。
NHKの「夜ドラ」枠、ここで放送されるドラマにおもしろいものが多いのはなぜなんでしょう。月曜から木曜の夜、22:45(頃)からの15分というちょっと見づらい時間帯、ちょうど他局の22時台のドラマとかぶってしまう。それでも録画やNHKプラスなどで、一手間かけてでも見たいと思うような秀作ばかり。
今放送中の『あなたのブツが、ここに』は、そんな秀作揃いの夜ドラの中でもとんでもない大傑作として、長く語られるんではないでしょうか。
もしまだ見ていない人がいたら、なんとかして全部見てほしい。有料だけどオンデマンドで見ても後悔しないくらいの名作ですよ。
主人公はシングルマザーのキャバ嬢・亜子。コロナ禍で店が休業しまい、疎遠だった母の元へ娘の咲妃をつれて戻り、その後運送会社の配達員として働くことになる。
2020年から2021年の、あのコロナ禍。それが、亜子と家族、周りの人々の様子を通して語られるのが、見ていて毎回じわじわと涙腺にくるんですよ。
物語の最初の頃はほとんどの人が布製だったマスクが、時間が経つうちにだんだん不織布になっていくとか。オリンピックが遠い国の話みたいに感じるとか。ああそうだった、ついこの前のことなのに記憶から抜けかけていたあの2021年。
ギリギリで生きてきた人たちを、後ろからドンと突き飛ばすようなコロナ禍。突き飛ばされた人たちが、ついまた別の人を小突くようなできごとが続く。
見えない敵・コロナを叩くことができないから、誰が悪いとかではないのに、みんながイライラと傷付け合ってしまう。マスクをしろと怒鳴る老人、マスクをしていないことをいじめのきっかけにしてしまう子ども、配達員にきつく当たる客。
あけられない飲食店。中止になってしまう公演。失ってしまった時間。
ドラマの中の人たちは私とは違う。私はキャバ嬢でも運送業でもないんだけど、でも、あの人たちは私。
亜子さんが泣く時は私も同じ気持ちで泣いてるし、笑う時は同じように笑ってる。
私もみんなと同じ、バカサバイバーだ。彼らの運ぶ「ブツ」は、私の、ここにあるんですよ。
大変だったよね、がんばったよね私たち。よく乗り越えたよね。
と、何年か後にこのドラマを見てしみじみと振り返る日が来るといいな。
何度も何度も、再放送してくれるドラマになるといいな。
そして。
厳しいけど絶対見放さないでいてくれる、武田さんのかっこよさを、全人類に伝えたいの。津田健次郎さん最高よ。
年末の紅白でウルフルズがバカサバイバーを演奏する後ろで、マルカ運輸のみんなと踊れたらいいなー。みんなでコロナから逃げ切って、笑えてたらいいなー。