花から無事に実へ
お疲れ様です。雪溶けが早く進み気温も高く推移したためりんごの木の生育も早く進み管理作業に余裕のない日々を過ごしていました。
近年、地球温暖化の影響なのか?雪溶けが早く進み春の訪れも早く、りんごの開花時期も早まっているような気がします。生育が早いと春の霜の影響も受けやすく、今年も限定的ではありますが霜の影響を受けた地域もあるようです。
カラマツ被害
りんごは通常開花後、受粉がしっかりできていれば中心花と言われる部分に結実しますが、中心花になんらかの原因があり結実しないということは良品生産、収量の確保のためにも大きな痛手となります。花が受精できなかったことによって実を結ばずに欠落することを通称「カラマツ被害」と呼んでいます。
不受精だった花はツルの部分が黄色くなり落ちる様が落葉樹のカラ松が秋になると葉が黄色くなって落葉する様とよく似ていることからこのように呼ばれるようになったと言われています。
今年は各地でカラマツ被害が見受けられます。当農園でも品種や場所によっては中心果の欠落している木もあります、、、。
カラマツ被害の原因
凍霜により雌しべや雄しべに障害を受け受粉機能が低下
開花期間中の高温や旱魃により雌しべが乾き受粉能力が低下
交配作業に使用した花粉の発芽率が低かった
なとなどの色んな原因が挙げられます。
カラマツ防止の対策
果物栽培の受粉作業はとても労力のかかる作業で「まめこ蜂」による交配が主流となっているのが現状ですが、できるだけ人の手による人工授粉を行うことで被害を最小に抑えることができます。人工授粉は一個一個の花に交配していく作業なので時間と労力は膨大です。
交配作業の種類(確実性の高いものから順に)
梵天やコロンブスによる交配
ラブタッチによる交配
SSに取り付けるフルーツパウダーを使用しての交配
まめこ蜂や訪花昆虫による交配
自然交配
当農園では1、2の交配を行なっていますので今年のカラマツ被害も許容範囲内だと思っています。今年の場合、開花機に高温で台風並みの強風も吹いたことから3のフルーツパウダーでの交配もダメだったと聞きました。もちろん4、5のみの交配は言わずもがな。園地の形状、品種構成、も原因の一つではありますが、天気を変えることはできないので、人工授粉で確実に受精させることがとても大事なのです。
近年流行りの溶液受粉についての衝撃的試験結果
溶液受粉とは水、寒天、グラニュー糖を混ぜた溶液に花粉を混ぜてSSで散布し交配するというもの。かなりの省力となるためりんご農家の間で瞬く間に広がっていきました。しかし衝撃の試験結果が、、、
交配作業に使用する花粉は発芽率80%以上というのが基準となります。
近年カラマツ被害が深刻なこともあり、溶液受粉に使用する花粉の発芽率を調べたそうです、その試験結果が衝撃的でした。
溶液に純花粉を入れて30分後、60分後、120分後と花粉の発芽率を複数検体を検定した結果がこちら。
30分後 8%
60分後 4%
120分後 0% (平均)
1000ℓのSSで一回散布するのに30分。もはや手間ひまかけて溶液を準備し買えば高価な純花粉を無駄にしていたことが判明。私はずっとこの方法には疑問点が多く感じていたのでこの方法を試したことがありませんが、私の勘は的中です。
先人たちの知恵
昔の農家は、園地のあちこちに色んな品種を混植していました。これは訪花昆虫による受粉や自然交配率を高める方法の一つでもあります。作業効率を考えながら、交配しやすい園地作り(品種構成)も今後の課題。
これから、結実した果実を選りすぐり、摘果作業本番となります。せっかく交配し結実した実を摘果するという矛盾。これも秋に美味しいりんごを実らせるため。また来年沢山花を咲かせるため。
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