奥能登と災害ボランティアと情報支援
日本インターネットプロバイダ協会 (JAIPA) からお招き頂き、「JAIPAの集い in 金沢」というイベントで 2024/10/25(金)に講演してきました(講演資料PDF)。災害からの復旧復興には大抵の人が想像するより遥かに長い時間がかかること、その間ずっと災害ボランティアや災害支援団体などの民間災害支援者が活動していることをお知らせし、その民間支援者を情報で支援する情報支援レスキュー隊 (IT DART) の活動についても紹介してきました。皆さんとても熱心に聴いてくれて、その後も懇親会などで沢山お声がけを頂きました。ありがたやありがたや。
中でも「自分は○○が専門だが被災地で役に立つのか?」という質問を多く頂き、その都度「専門が役に立つかどうかはともかく、あなたは役に立つ」と答えてました。
例えば、専門がコアルータ運用やデータセンターネットワーク設計だったら、まぁまず役に立たないですよね。災害ボランティアセンターにコアルータもデータセンターも無いし。でも、現地でデータ打ち込み作業を手伝えれば、それまでやむを得ず打ち込みをやってた災害支援者は、自分の専門を活かした作業が出来るようになる。被災地での活動では、全ての雑用を今いる人だけでやらなきゃいけないので、専門技術を持ってる民間支援者が雑用に時間を取られていることも多いんですよ。それを肩代わりするだけで、現地で活動できる災害支援の専門家を一人増やすことができます。
あと多くの IT 系の人が『そんなのできて当たり前!』と思ってる「知らないツールの使い方を、取扱説明書やウェブ検索で調べることができる」って、実はなかなか貴重な特殊能力だったりします。Excel が使えるとかプリンタが設定できるとかも同様。本当にちょっとしたことが意外と役に立ったりするので、是非ともビビらずに被災地に行きましょう。
万が一、本当に万が一、あなたが現地で役に立てなかったとしても、帰ってきたら見聞きしたことを色んな人に伝えることができます。大きな災害が発生しても、2週間もすればあまり報道されなくなるし、1ヶ月も経てば大抵の人は「あー、災害! そういえばあったよねぇ!」ぐらいになります。3ヶ月後でも泥かきしてるとか、半年経ってもまだ避難所で暮らしてる人がいるなんて、多くの人は想像もしていないはずです。そんな風に災害のことを忘れかけている(かも知れない)人たちに、被災地の話をして思い出してもらうことは、とても重要な支援になります。
イベント翌日の10/26(土)には、イベント参加者の有志20人ほどで能登町に行き、9月下旬に発生した奥能登豪雨の被災状況を見てきました。奥能登への移動には『のと里山海道』という自動車専用道路を使ったんですが、2月に穴水、輪島、門前に行った時には横田までしか通れなかったのが、今回はついに全線を走れて感動。ただあちこちの路盤流出はそのままで、よくぞ開通させたもんだと改めて感心しました。
能登町ではまず、役場の目の前にある町営の塾「まちなか鳳雛塾」でお話を聞きました。能登町に3校あった高校は、合併を繰り返して今や能登高校のみ。もしこれも無くなったら若者がいない町になってしまうと、県立高校を町が応援する「能登高校魅力化プロジェクト」というのが進められているそうで。まちなか鳳雛塾では能登高校生向けに受験対策や授業のサポートの他に地域のことを知ってもらう時間があったり、能登高校が全国から国内留学を受け入れていたりと、とても面白いことをやってます。
その後は、9月21日からの豪雨で大きな被害が出た北河内地区へ。一時は土砂崩れで道路が通れなくなり孤立していた集落です。我々が行く時も、路面が流出して山を削って迂回路を造ってたり、土砂崩れで埋まったところを自動車が通れる幅だけ切り通してたり、これまた良くぞ開通させたなと。
ようやくたどり着いた現地では、ちょうど居合わせた区長さんからお話を聞くことができました。そこにあったのは、路面から2, 3メートル下を流れるほんの小さな川。これが溢れて民家の1階天井まで浸水するなんて、そりゃ想像もしないよなぁ。流れてきた流木で橋に引っかかって川が埋まり、溢れた水が民家に流れ込んだそうです。恐らく地震で崩れた分の流木もあって、地震との複合災害なんでしょうねぇ。
豪雨から5週間が経過していましたが、路上と橋に詰まった流木は端に寄せられているものの、浸水した民家の復旧はほとんど手付かずでした。これを片付けるのに、いったいどれだけの人手が必要になることか。北國新聞の記事によると、石川県の試算では今のペースだと泥かき作業の完了は1月中旬になる見込み。これまでに6千人弱のボランティアが入ったが、今後さらに1万4千人ほどが必要だそうです。人数が人数なので、団体や企業単位での参加を、石川県は呼びかけてます。
奥能登豪雨はもうほとんど報道されなくなったけど、復旧作業はまだまだこれからですよ。…っていうか、地震被害への対応も、まだまだ続いてます。2024/11/12現在で、輪島市で293名、珠洲市で29名、2次避難先51名の方々が、避難所生活を続けています。多くの団体が今も能登各地で災害支援活動を続けていて、災害ボランティアも絶賛募集中です。
能登に限らず、それ以前や今後の災害も含めて、災害対応には本当に長い長い時間がかかります。支援の形はさまざまで、災害ボランティアに行ったり観光に行ったり、現地に行けなくてもリモートで作業をしたり、災害支援団体などに寄付をしたり、「復旧作業ってまだ続いてるんだってよ」と知り合いに話をしたり…。長丁場なので無理はせず、どんな方法でも良いので、被災地や被災者、支援する人達のことを忘れずにいてもらえると嬉しく思います。
なお各団体の災害ボランティアの募集状況は、IT DARTが一覧表にまとめ、平日はほぼ毎日更新しています。こちらも是非ご活用下さい。
→ 災害ボランティア募集状況一覧(令和6年能登半島地震)