行けるところまでー障害者登山(山寺・蔵王編)~3
2日目ー蔵王登山
2日目は登山。夏山山行の本命です。私としてはもう山寺に行けたので8割方満足していますが、お釜の方も歩いてみたい!
雨予報のため美術館へ行くなどの代案を検討していましたが、どうにか行けそうな天候です。
刈田岳
バスに乗ります。蔵王ハイライン終点刈田岳で下車。
(車イスの人はここまで車で来られて、しかもレストハウスに車イストイレもある。蔵王のお釜まではわずかな距離で平坦。車イスでそのまま進めます)
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参考:蔵王山頂レストハウス・御釜展望台
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会の女子たちとお釜の前でキャーキャー言いながら写真をパチパチ。集合写真も撮ってもらいました。団体で行くとこういうところが楽しい。個人旅行とはまた違った味わいがあります。
お釜を右手に見ながら「馬の背」あたりまでは車イス使用。
地面は砂礫で小さな前輪がスタックしやすく、後ろから押すだけでは進みません。左右のフレームにシュリンゲをむすび、右前、左前から引っ張る人、後ろから押す人の3人がかりで、難所はややウィリー気味に走行。山ではたいていこのスタイルです。
しかしそのうち、ゴロゴロとした石が出てきて車イスの走行ができなくなります。
車イスは折り畳んで車イス用の背負子に。背負子の重量と合わせると10キロ近くあると思いますが、これを健常者が背負って運びます。
歩き始めます。
登りは山寺の時と同じ、前の人のザックに結んだシュリンゲを掴んで歩きます。あと二人の健常者にはやや後方の両サイドについてもらい、お尻のあたりにあるハーネスの取っ手を掴んで、要所要所で引っ張り上げてもらいながら進みます。
そして時々、休憩がてら来た道を振り返る。一体どれくらい歩いたかなと。
お〜、小さい小さい。遠くまで来た、とかなんとか成果を噛み締めるのも楽しみなのです。
熊野岳
歩きがだんだん遅くなっていきます。雨も降ってきました。
健常者にすがるようにして進んでいきます。
下りの方が簡単な時と物凄い大変な時とあって、今回は大変な方でした。段差の激しい岩ばかりで足場が非常に悪い。
両サイドに健常者に立っていただき、腕を支えて貰います。足に一番負担のなさそうなルートを先行者に確認してもらいながら、岩場をひとつずつ降りていきます。「足に負担のないルート」なんてないのですが、ほとんど体重を持ち上げてもらうようにして降ります。
膝があんまり曲がらないと、幅の大きい段差を超えるのは上りも下りも一苦労。とりわけ下りは体重がいっぺんにかかってこないように、ゆっくり降ろしてもらいますが、怖い。
足がおろせず腰が引けてしまうのです。
「ちょっと無理、どうしよう、どこ踏めばいい?」
「絶対支えるから、大丈夫だから!」
ヘッピリ腰の私を両脇から抱え上げる健常者の皆さん、さぞや大変だったと思います。ここも一人の健常者に負担がかからないよう、少しずつローテーションしながらサポートしてもらいます。
やがて、斜面にごろごろと岩が転がるようなところをようやっと抜け、
「あ〜、やっとだぁ」
ホッとします。
熊野岳の頂上で長い休憩。雨は小止みになりましたが見晴らし悪し。
でもお腹ぺこぺこ。お弁当のおにぎりセットを食べます。
おいしい・・・。こういうところで食べると、何でもおいしいです。
で、なぜか山の人は食べるのが早い。
「行くぞ〜。ロープウェイの時間迫ってるから」
と言われましても、まだおにぎり一つ残ってる。私は食べるのが、これまたべらぼうに遅いのです。口の中に詰め込んで、さぁ出発。
地蔵岳
岩場の下りを抜け、熊野岳を過ぎるとあとは歩きやすい道になってきます。そういう道は気が急いて、まだかな、まだ辿り着かないかな、と、じれったい思いをします。
なかなか辿りつかず、足は休憩の頃から痛みと疲れのピーク。
「無理です」っていつ根をあげようか、頭の中はその逡巡でいっぱい。
だけど、「あと少しなら行けるかも」。
休んで、何か飲んで、「もう少しなら行けるかも」。
その繰り返しです。
足元を確認しながら歩き続けます。
下を見ていると、花が咲いている。リンドウかな?
後方の健常者が「まだ咲いてる!」とかなんとか、高山植物の名前を叫んでいました。コマクサでしょうか。花の名前をさっぱり覚えられない私。
途中途中で立ち止まり、首に痛みの根が張らないよう遠くを見上げてみたりします。私の頚椎は固まってくっついているので、首ではなく背中を丸めて足元を見がち(本当は下を見ないに越したことはない)。できるだけ立ち止まって背中を真っすぐにし、上方を見るようにします。
すると、(ああ、なんて非日常!)。
ダイナミックな山の稜線と雲なのです。
おこまめに休憩をとりその度に女性健常者が、「なんか飲む?」、「これ食べて」、「写真とろう」・・・と、お世話になります。
山女は気遣いの人たちです。
女性だからって決して非力ではないし、細やかな心遣いをしてくれて、自分から言い出しにくいことも察してくれる。山男が私や車イスを担ぐときは、さっと手が入って荷物を引き受ける。そういう人たちです。
水分を摂り、甘いものを食べ、再び歩き・・・。
やがて、ラストの木道にきます。
雨で木道は滑りやすく、しかも渡してある木と木の継ぎ目には大きな段差があり、横方向にも傾斜があるなど気が抜けません。
油断すると転倒します。
木道は狭いので左脇を支えてもらいつつ、下を向いて足元を確かめて歩きます。
あぁ、まだかな。意外に木道距離あるな、とか考えながら。
時々は頭を上げてゴールを確認し背中ほぐし。
見えてきたかな。ああ、まだまだ先だなぁ。
一歩、また一歩。
それにしても、木道が終わるとロープウェイ乗り場ってわかっているのになかなかつかない。
まだかな、まだかな・・・。
とにかく一歩、また一歩を前に進めていきます。
するとあら不思議、たどり着くのです。
蔵王では背負子に背負われないて歩けました。ホッ。
帰りは地蔵岳からロープウェイを乗り継いで一気に下山。
(山寺だけではなくて蔵王も行けた!)
雨ですが清々しい気持ちで、降りてゆくロープウェイから外の世界を見ていました。下をニホンカモシカが歩いているのが見え、ロープウェイの中はお客さんの心地よいざわめきで満ちていました。
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参考:蔵王ロープウェイ
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