村雨辰剛さん・五十嵐靖晃さんのトークショーを聞いてきました【九州国立博物館】
4月、九州国立博物館で行われたトークショー「日本の花々と自然観」を聞きに行きました。
少し時間が経ってしまいましたが、お二人の印象に残った言葉など残しておきたいと思います。
村雨辰剛さん
庭師、俳優。
『大奥season2』の蘭方医・青沼先生や
『どうする家康』のウィリアム・アダムスを演じています。
五十嵐靖晃さん
アーティスト。
太宰府天満宮の『くすかき』や瀬戸内国際芸術祭の『そらあみ』が有名です。
1時間30分の予定のトークショーだったのですが、トークが盛り上がり終わる頃には2時間を超えていました。
テーマが「日本の花々と自然観」ということで春や初夏の華やかなお花のトークかと思っていましたが、お花に留まらず身近な自然に関する話が多く、とても興味深かったです。
たとえば、村雨さんは庭を造る過程で、草木より何よりも石が重要だとおっしゃっていました。
庭園の調和にかかせない石が、自然な風景を作っていくのだそうです。
村雨さん「石があるからこそ残る庭園もあります。」
そして石も草木も時間が経ち、風景が変わっていくことが美しいと。
その際、村雨さんは『経年美化』という言葉を使っていました。
「庭の竹垣は最近はプラスチックのものが多いけど、天然のものが安いし経年劣化を楽しめる。(竹が)生きていなくても自然と生きることになる」
この竹の経年劣化を、日本では美と捉えるのだそうです。
これに対して五十嵐さんが、
「文化は作り手だけでなく、受け手と一緒に育てるもの」
とおっしゃっていたのも印象深かったです。
村雨さん「受け手と一緒に共有していきたいですね」
五十嵐さん「何を持って美とするのか、受け手が感じようとする気持ちが大切ですね」
これは庭や芸術作品だけでなく、noteの世界においても同じことが言えるのではないかと思いました。
私のnoteは中身も文章もまだまだ未熟ですが、読んでくださる方やコメントしてくださる方がいて、noteを始めた頃よりも、歴史の出来事や史跡への解像度が少し上がっていると感じるからです。
これは他の方の記事を読んだことによって、自分には無かった視点を知り得たおかげもあると思います。
まさに作り手と受け手が一緒に育てているように感じたのですが、どうでしょうか。
そして美術そのものについてのトークも。
五十嵐さん「美術とは、突き止めると人の心を動かすものだと思う」
では人の心が動くところが何なのかというと、
五十嵐さんにとってそれは人と人が触れ合うときであり、人と人が触れ合うのは山や海など自然となり、自然そのものに対する信仰・神に行き着くのだそうです。
実際、五十嵐さんは好きな木について聞かれたときに、
「楠ですね。太宰府に来たとき何か海を感じたのですが、楠が昔、丸太船を作るのに使われていたと知って、ここが海に繋がっていたのだと気付きました。神話上でも、神様が地上に来るのに乗る船は楠で作られています」
と話されていました。
その他にお二人の印象に残った言葉は、
五十嵐さん「自分と村雨さんの仕事の共通するのは、風景を作る仕事だということ」
村雨さん「何事にもパッションが大事。それが継続にも繋がる」
やり方は違えど、自然に対してそれぞれに日々美を考えている二人だからこその視点が面白かったです。
美術の壮大な世界観には、細かいところに気がつくことだけでなく、壮大な視点も必要なのだと感じるトークでした。
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