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|影山多栄子の小部屋|

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人形作家・影山多栄子が物語世界を旅しながら、共に時を刻んでゆく人形たちを発表します。
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#人形

影山多栄子《2》|月光菓子クッキーセット

*  都会の街で、屋根裏部屋に暮らす若く貧しい画家の青年。でも、子どもの頃からの友達である月が、世界中で見た光景を夜ごとに語ってくれるから孤独ではありません。ディケンズとも深い親交のあった作家アンデルセンが紡いだ『絵のない絵本』は、そんな美しく不思議な物語。  第三夜、月はある女性のことを少女の頃から見つめ続けていました。バラよりも輝く少女のきらめきは儚くも美しいものでした。  第十七夜、世界の色々な光景に見てきた月も、とびきりのおしゃれに喜びを隠せない少女の姿には、思

影山多栄子《1》|月光菓子ケーキセット

*  都会の街で、屋根裏部屋に暮らす若く貧しい画家の青年。でも、子どもの頃からの友達である月が、世界中で見た光景を夜ごとに語ってくれるから孤独ではありません。ディケンズとも深い親交のあった作家アンデルセンが紡いだ『絵のない絵本』は、そんな美しく不思議な物語。  第七夜、月が自然に囲まれた石の塚を見下ろしていると、たくさんの人が通りかかります。しかし、本当にその美しさを理解しているのは貧しく祈りに満ちた少女だけでした。  第九夜、月はグリーンランドに光を伸ばし、人と自然の

影山多栄子|霧とリボンと私

 夏のある日、きょろきょろワクワクとあちこちを見回しながら、菫色に華やぐストリートにたどり着きました。モーヴ街開通4周年をお祝いする《菫色の実験室vol.9~菫色×デザート》展から、正式に5番地のサティス荘に入居することになりました、影山多栄子です。どうぞよろしくお願いいたします。  もうずいぶん長い間、粘土、布、木、紙、他にもいろいろ、その時々に一番しっくりくる素材を使って、人のかたちのようなものを飽きずに作っています。人形をつくるということに、何故こんなに惹き付けられる

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 3|骨董屋《1》

* *  ツアーDAY 3——本日はレスター・スクエアからスタートです。小説『骨董屋』より、少女ネルの祖父が営む骨董屋に到着しました。  軋む扉を開けて薄暗い店内に入り、目が慣れてきた頃に奥の方に見つけたのは、はっとする清廉な白を纏った、影山多栄子さまの静かな面差しのお人形。そしてその横には、ちいさな木彫りの個性的な面々が集合していました・・・ * * * ネルと骨董屋  『骨董屋』は、語り手がロンドンの街中で少女ネルと出会う場面から始まる。道に迷ったという彼

熊谷めぐみ & 影山多栄子|ART & ESSAY《5》|アリスとアリシアの物語

 これは7歳の女の子アリス・レインバードがつくった物語。  むかしむかし、あるところに王さまと王妃さまがいました。二人には19人(7歳から7ヶ月まで)の子どもたちがいて、長女のアリシア姫がみんなの面倒をみていました。  ある日、お仕事に行く途中に、王さまは妖精のおばあさんに出会います。おばあさんは、王さまが買った鮭をアリシアに食べさせるように言い、その骨はぴかぴかに磨いて、正しい時に願えば、願い事を一つだけかなえてくれる魔法の魚の骨であるとアリシアに伝えるようにと告げます。

熊谷めぐみ & 影山多栄子|ART & ESSAY《6》|可憐で不思議なクリスマスの光

 クリスマスを祝う人々であふれるロンドン。だが、人間嫌いで強欲なスクルージにとってクリスマスはくだらないものでしかない。あるクリスマス・イブの夜、スクルージの前に七年前に死んだはずの相棒マーレイの亡霊が現れる。そしてマーレイの予告通り、過去・現在・未来の三人のクリスマスの精霊がスクルージのもとを訪れる。 *  クリスマスなんてくだらない! そう言ってクリスマスを、そしてクリスマスを祝う人々を強く拒絶するスクルージ。一方、ロンドンの街では、人々が、クリスマスの歓びを家族や大

レース模様の図書室、再訪|影山多栄子《1》|図書室の精霊

Text|KIRI to RIBBON  クレマチス・アーマンディの白い香気が過ぎ、花水木の開花と共に草花が煌めきを増す頃——鬱蒼の緑の奥にひとときひらかれる図書室があります。そこは一風変わった図書室。書物と一緒に、書物と暮らしてきた少女たちの営みが、レース模様に編まれて並んでいます。精霊たちも住んでいるようです。  1年の時を経て、ふたたび扉の前に立ちました。あの日と同じように、小鳥の囀りが聞こえてきます。  季節は巡り、様々な物事が移ろい、変化を余儀なくされる中、少女

レース模様の図書室、再訪|影山多栄子《2》|誰かのお人形、誰かの忘れ物

TextKIRI to RIBBON  雨の一日になりました。  図書室の菫色はいっそうグレイッシュに落ち着き、時間もゆったり流れています。いつも聞こえる少女たちの囁き声もなく、図書室には雨音だけが響いています。  少女たちのいない図書室を訪ねてみましょう。 * * *  英国文学の書架に置かれたままのお人形がありました。  いつ、誰が置いたのか、誰の持ち物なのか——ある時ひとりの司書が持ち主を探すべく、古い関係者にもあたって調査したことがありました。しかし、お