横井まい子|涼やかな時間は私たちのものです
液体の芸術があります。
最初のひと口を舌の上に広げると、味蕾を騒がせ、頬の横で踊り、香りの波は、先ほどまでの過去を蜃気楼にしてしまう、そんな液体です。
秋の香気が心を羽ばたかせる午後のココア、冬の冷たさが極まった夜のホットワイン、春が最初にやってきた日の珈琲……
では、夏には何を? 何を選びましょうか。
梅雨の真ん中の憂鬱をライムの果皮で吹き飛ばすジントニック?
真昼の海辺のブルーソーダ?
長い夜の始まりへ誘う強いシェリー酒?
横井まい子が手がけるメイン・