1円ぽっぽとワカメと祖父の思い出
こんにちは、さちこです。普段は、外国の方に第二言語としての日本語を教えています。どうぞよろしくお願いします。
何度思い浮かべても、楽しくなる記憶というのがある。
私にとっては、「1円ぽっぽとワカメと祖父」が、その一つである。
「1円ぽっぽ」というのは、広島県尾道市にある渡船の一つ、福本渡船を指す。
本土側の尾道の街と向島の間に横たわる、地元以外の方には川とも見紛われてしまう海ー尾道水道ーを横切る、乗船時間3分ほどの渡船で、
「1円ぽっぽ」は福本渡船の愛称である。
ちなみに、「1円」というのは運賃からだそう。
(「ぽっぽ」はおそらく汽笛かエンジン音から? 鳩ではないと思われる)
私が子供のころの運賃は、既に1円ではなかったが、
1円ぽっぽは尾道水道を横切る航路の中では最も安く、
当時30円とか50円とかそれぐらいだったと記憶している。
1円ぽっぽは、尾道出身の映画監督である大林宣彦監督が撮った映画、
「ふたり」「さびしんぼう」のロケ地となったり、
「龍が如く6 命の詩」にも尾道仁涯町の“仁涯渡船場”として描かれているそうだ。
1円ぽっぽの向島側の乗り場から徒歩数分のところに、
生まれてから最初に住んだ家があった。
とはいえ、2歳過ぎぐらいまでなので、
家のそばを母と近所のおばちゃんと散歩したような感覚が朧げに残っているぐらいなのであるが、
長じて運転免許をとる際、その近くにあった自動車学校に通うことになり、
行き帰りなどに、この辺だったなあと立ち寄っていたので、
原風景の記憶は強化されている。
母から聞く向島時代の話で一番のお気に入りは、
初孫(=わたし)に会いに来た祖父が、
1円ぽっぽ乗り場からそう遠くないところにワカメが自生しているのを見つけ、
チョンチョンととって、湯がいて皆で食べたという話である。
今だったら許されないのかもしれないが、
水産系の仕事をしていて、遊びが好きで、
のんびりどこ吹く風だった祖父のことをまるで見ていたかのようにイメージでき、
楽しくて嬉しくなるのである。
そう、タイトルには祖父の思い出と書いたが、本当のところは私は幼すぎて、
記憶に残っていない。
それでも、まるで思い出のようにイメージできるんだなあ。
(知らんがな)
(お読みくださり、ありがとうございました)