オーバードース(薬物過剰摂取)して、救急車で運ばれた、おばあさんの気持ち
私は、病院の救命救急センターという部署で4年間働いていました。
春とか季節の変わり目になると、オーバードース(薬物過剰摂取)して、
救急車で運ばれる人が、よくる印象がありました。
みんな、共通してるのは、100錠とかありえない薬の量を飲んでるってことです。
途中から、無意識で飲んでるとか聞いたことがあります。
でも、実際はどんな気持ちでそんなに、美味しくもない薬をたくさん飲んでしまうのか、ずっと気になってました。
聞きにくいけど、患者さんに思い切って聞いてみた話です。
息子とケンカしちゃった
小谷さん、(仮名)80代のおばあさんが今回の話の主役です。
もともと処方されていた、血圧を下げる薬とか、便秘の薬の薬、
精神安定剤など、一気に100錠飲んでました。
救急車で運ばれたときは、意識がもうろうとしていましたが、
胃洗浄など処置をして、話がしっかりできるまでに回復。
受け持ち患者さんだったので、世間話をした後に、思い切って、薬を飲んだ時のことをきいてみました。
小谷さん「あの時はね、息子とケンカしちゃって、腹が立ってもらってる薬あるだけ飲んだのよ」
小谷さんは、息子さんと二人暮らし。ケンカの理由も聞いてみたけど、
「何だったかしら、忘れちゃったわ」
本人も忘れるほどの、些細な内容。
私「あ、そうなんですね…」
もっと、深刻な感じを覚悟してたので、ちょっと拍子抜けしちゃいました。
ちなみに、後で息子にケンカの内容を聞いてみました。
小谷さんは、甘いものが好きだけど、糖尿もあるから、甘いものを控えるように言ってたみたいです。
お母さん想いの、いい息子さん!
小谷さん、逆キレってことですか(-_-;)
同じ味に飽きちゃうのよね
続いて、薬を飲んでる時のことも聞いてみました。
小谷さん「最初は、水で飲んでたのよ。でも、同じ味でしょ。
たくさん飲んでると、だんだん飽きちゃって。
だから、途中から、ジュースとか紅茶に変えて飲んだら、飲めたのよね」
私「うん?????」
それ、大食い大会の選手のコメント!
たくさん飲むことが、義務みたいになってるし。
小谷さん、薬は本来、味に飽きるほどの量は飲まないですよ。
さいごに
私の勝手なイメージですが、オーバードースする人って、
もっとオーラが、ズーンって暗い感じでした。
でも、小谷さんはサバサバ明るい感じ。
飲んだ理由も、飲んでる時の気持ちも、失礼ですがコントみたいで、
笑ってしまいそう。
でも、本人は、真剣かもしれないけど。
「人生は小説より奇なり」なんてよく言いますが、
「その通り!」と、深く頷いてしまうエピソードでした。
読んでくださって、ありがとうございました。