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『だんドーン』5巻

いや、面白いんですけどね。

でもやっぱヘンテコなバランスの漫画だなぁとはめっちゃ思ってしまう。

「作者が絶対に超真面目に取材しまくったと思われる面白い史実の数々(実在の人物のエピソードから当時の風俗的な常識まで要素は様々)」
「今の人達にもわかりやすく興味を持って貰う為にあえて崩している『今で言うなら』的な台詞やキャラ描写」
「作者が絶対に描きたいであろう史実の中から浮かんでくるキャラの関係性」
「その関係性に行き着く為に創られているフィクションの部分」
「いかにも女性の漫画家さんっぽい(と、自分は感じる)ギャグの入れ方とテンポ」
「なんとなーく感じるBL漫画っぽい空気感」

ここら辺がめっちゃシームレスに並んでる感じ。
なんちゅうか「ここはフィクションパートですよー」「ここは史実パートですよー」「ここは観光パートですよー」みたいなのをわざわざ説明的に分離させないというか、ノリが変わらないというか。
それが独特の面白さになってるのも確かなんだけど、ちょっと面食らうというか、ついていけない時があるのも正直なとこで。

例えば、いくらなんでも「封建制度が崩れゆく時代に上級武士として生まれた小松様が」って台詞が登場人物の口から出てくるのは、やっぱ、変じゃん。
良いとか悪いとか、意図的かどうかとかは置いておいて、変は変じゃん。
いつのどの視点から描かれてる台詞なのか混乱してしまう。

全体的に
「今の人達にもわかりやすく興味を持って貰う為にあえて崩している『今で言うなら』的な台詞やキャラ描写」
って意味なら『逃げ上手の若君』とかも全く同じことをしていると思うんですよ。
でもあっちは、どんなおかしな事や現代的な視点とかテーマが入ってきたりしても『逃げ上手の若君ワールド』って世界観に落とし込んでると思うんですよね。
いかにもジャンプ漫画っぽいというか、一旦ゼンブをその漫画の色で染め直すというか。
だから読みやすいしわかりやすい。

でも『だんドーン』はちょっとなんか、そこまでわかりやすく世界を塗り直しちゃいないと思うんですよ。
それは史実へのリスペクトもあるんだろうけど、なんとなく「男性漫画家と女性漫画家の感性の違い」も感じちゃうんですよね。
こういう言い方マズいのかねぇ。
でも実際その差はあるだろうし、女の人の方がスッと読めるんじゃないかなーとは感じるんですよ。自分がなんか引っ掛かるというか、読んでてつんのめっちゃうとこも、気にならないんじゃないかなーと。
その差は良い悪いじゃなくて「おもしれえなー」「興味深いなー」と思ってるだけなんですが。

なんか話がちょいズレたかもだけど、やっぱり自分にはどうしても「ヘンテコなバランスの漫画」に思えてしまう。

ただ、キャラの魅力はオリジナリティに溢れてるし(世間一般的な「この人はこういうイメージ」に縛られてないのは本当に素晴らしいと思うし勉強になる)、見せ所や決め所で使われる言葉のセンスやそこで現れる「重み」みたいな手触りは歴史漫画の中でしっかりと「生きていた人間」を描いてる説得力をバチンとぶつけてくれるし、何より歴史とその日々を生きてきた人達へ対してのリスペクトはガシガシに伝わるし、すげえいい漫画であることは全く疑わんのです。

ただやっぱ「変は変だよねぇ?」とも感じるんだよなぁ。
このカンジ、共感してくれる人いません?
ここまで引っ掛かるのも変な話なので、なんか自分の方に問題があるような気すらしてきた。
自分的に漫画の内容とは別に無意識で感じてることがあんのかねえ。
それともシンプルにただの好みの話なのか。

まぁ変でも面白けりゃなんの問題もないし、で、実際面白いので、なんの問題もないんですけども。

なんの問題もないんですけども、ただ、太郎とかあんな女の子みたいな顔面じゃなくてもいいんじゃねーの?とかは思ってしまうんだが。
そこはただの趣味だろーか。
ふつーに「一見女に見えていたけど実は男」って河上彦斎のキャラが被ってんじゃねーかと思ってしまった。
あとタカもそんな感じあったし(再登場いつになるんだろう。あのキャラがどう歴史にクロスしてくるのかが一番楽しみではある)

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