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「歯医者」のち「朝からやま」
10月の頭に歯医者を予約していたことをすっかり忘れていて完全にすっぽかしていた。大人になってから予定を忘れてすっぽかすことは滅多にないのだが、今通っている歯医者ではこれで2回目だ。
多少手荒い治療をされても文句は言えない。
その翌週には予約を忘れていた事に気づいていたのだが、「すみません、予約していたのを忘れていました」と言えず、いつの間にか11月も過ぎ去ろうとしていたので流石に観念して予約を入れた。
土曜の朝9:30に来てくださいとのこと。
歯医者は歩いて10分程度の近所ではあるが、朝9:30は流石に早い時間だ。サラリーマンの私としては土曜の朝くらいゆっくり寝坊でもしたいところだが、今回ばかりは私に非があるので素直に従うしかない。
「なんで来なかったんですか!?」とは言われないだろうが、それ相応のプレッシャーを私に与えつつ、いつもよりも少し痛ぶるように歯石を削ぎ落とすのだろう。
覚悟を決めて、いつもよりも入念に歯磨きをして歯医者に向かう。
歯医者につき席につくと歯科衛生士がやってきて歯石取りが始まる。始まってすぐ「ビリッときますよ~」と言われる。ついに来た。
2ヶ月も遅れてやってきた分だけビリッとさせるつもりか!しかし、私は為すすべもなく口を開くしかできない。いっそ、ひと思いにやれ!!
普通に歯石取りが終わった。
特に痛くされなかった。歯医者は優しいのだ。
そりゃ、人の痛みを取り除こうという集団なのだから当たり前のことなのだが、改めて歯医者の「優しさ」を知ることができた。
しかも今回は虫歯もなかったらしい。
実は健康な歯を虫歯ということにして治療費取ろうとしてんじゃないだろうな?と疑ったことのある哀れな私を許してほしい。
歯医者を出る足でそのまま散歩することにした。
目的地は昼ご飯目当てで「からやま」にすることにした。チェーン店に厳しい私だが「からやま」は認めている。(何様)
あの店の唐揚げ定食は個人店にも負けていない確かな”なにか”を感じている。
きっと”なにか”とはタレだと私は睨んでいる。
大量の客を捌かないといけないチェーン店の宿命故に油には限界があるはずだ。
それでもあの唐揚げの旨さを引き出しているのは「タレ」である可能性が高い。特に「極ダレ」と名されるにんにくダレが美味い。
あれが食べたくて「からやま」に足を運んでいる。
そんなことを考えながら「からやま」までの40分くらいの道のりを歩く。からやまに到着。歯医者にいくために朝食は抜いたのでお腹もちょうどいいくらいに空いている。
唐揚げ定食を食べるにはこれ以上ないコンディションだ。
しかし、「からやま」の自動ドアには”準備中”の札がかけてある。
なんとなくこの手の店は24時間営業か、それに近い営業形態の朝8:00から深夜3:00まで営業中みたいなパターンを想定していたので完全に面食らう。食らうのは米なのだが。
人生で初めて「チェーン飲食店の開店を待つ」という体験をした。
ガラス越しに見える店の中では店員さんが開店の仕込みなどをしているのだが、あちらからも私が見えているだろうし、「なんか待ってる人いるよ」と思われているのだろうか。
そう、待ってるのよ。君たちの唐揚げを。
見せてくれ、君たちのすべてを!!
数分後、店員さんが準備中の札を変えたと同時に店内に案内される。
既に私は「一番乗りの客として100%からやまを楽しむ客」という気持ちに切り替えている。
若い頃はこういう時に端っこの席に座ったりして「なんとなく来ました」という空気感を出していたが、すっかりオジさんになった今ではこういう芸当もできる。せっかくなので厨房を堂々と覗けるカウンター席のど真ん中に座ってみる。
お茶が来ると同時に決め打ちだとばかりに注文もする。
「からやま定食の唐揚げ4つで」と、スタンダードメニューど真ん中だ。知るよしもないが、店員には私がどう見えているのだろう。
数分して注文した「からやま定食」がやってきた。
いつもより出てくるまで少し遅い気がしたが、朝イチゆえに油の調整やなにやらで遅れたのだろうか。これはむしろ嬉しい誤算かもしれない。
そんな風に見てみるといつもよりも盛り付けも丁寧に見える気もしてきた。
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まぁそんなことよりも味だ。結局「味」っす。
丁寧な盛り付けで誤魔化そうとしても無駄だ。私はそんな簡単な男じゃない。
これまでいくつもの料理に対して向き合い厳しい判断をしてきたつもりだ、これからもかわらずにってからあげパクッからのうんまっっ!!
間違いなくいつもよりも美味い。
揚げ物屋は油の綺麗な朝イチが狙い目という噂を聞いていたが、からやまもソレに当てはまるのだろう。
今まで極ダレのパワープレイだという認識だったが改める必要があるようだ。からやま、アンタやるねぇ~。
唐揚げには肉がない衣だけの部分、いわゆる「アゲのみ」の部分があるのだが(これ伝わるのか?)これすらも柔らかくて美味い。
唐揚げ定食についてくるイカの塩辛も相変わらずうまい。
美味いというよりも、このオマケ的存在のイカの塩辛が料理として成立してしまっているので「もう唐揚げなくてもいいんじゃない?」とまで思わせる。
格ゲーで例えるなら「遠距離が強い代わりに近距離も強い」みたいな存在だ、ぶっ壊れの存在。唐揚げ界のJP、それがイカの塩辛。
そして、今まで気になっていた、タレ皿の存在。
正直に言ってこのタレ皿は唐揚げにタレをつけるには形状的に向いていないと思っていたのだが、最後のから揚げ一つを「甘辛ダレ」に半身浴させた状態で、余った「極ダレ」を箸で丁寧に集めて頭から少しずつかけてあげる。
するとどうだ、「甘辛ダレ」と「極ダレ」が合わさった究極の存在『アルティメットからやま』が誕生したではないか!!!!!!
ママ、ママ、わかったわ。タレ皿の意味!! 私を護っていてくれてる!私を見てくれてる!!ずっと、ずっと一緒だったのね!
ということで朝からやま、かなり良かったです。(冷静)
是非皆さんもお試しください。
完
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