今さらアスカ見参で裏白蛇に赴く理由
今回は『風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参!for Windows』を語りたい。
いつもより長文になってますので、お手すきの際にでも読んでみて下さい。
裏白蛇はゲーム配信におけるオーパーツだ
そんな風に考えたのは今から10年以上前だろう、そして今でもその持論は変わらない。
最強に安っぽくてキャッチーなフレーズを使うなら『神ゲー』ってヤツだ。
私がもしファミ通のクロスレビュワーだったらさそピンを名乗り、
初音ミクちゃん色のレーシングスーツを纏った姿でイラストを描いてもらって周りのレビュアーが7点、8点とお茶を濁した点数をつける中で私だけ文句無しの満点である10点をつけるだろう。
さらに、あの文字数の限られた文字スペース内に深くて鋭く熱いレビューを添えて紹介写真の上に「さそピンおすすめ!」のバッジをつけてあげたいくらいだ。
もちろん当時の編集長である浜村通信さんにも「今週号に特集ページを作らせて下さい!すべての責任は私が持ちます!!」と頭を下げる。
仕事で好きなゲームの特集記事をやらせてもらえる上に、社会人として一度は言ってみたいセリフの一つ「すべての責任は私が持ちます」も同時に満たしてしまおうという寸法だ。
つい、熱くなってしまった。 ちょっと大げさだったかもしれない。
私は一流雑誌でゲームレビューできるほど観測範囲も広くないし、多角的で公平な視点を持ってる人間ではない。
好きなゲームを自分以外の人間にも認めてもらえるような記事を作れるほど企画力も文才もないだろう。
もっとリアルな範囲で妄想するならば、街に根付いたイイ感じの中古のゲームショップで働く5年目アルバイトならどうだろう。
新作、旧作、お宝レアゲーからワゴンの住人までのゲームソフトの品揃えはもちろん。
攻略本や雑誌コーナーが充実していて、長時間立ち読みしてても店員からプレッシャーを感じない、客がゲームを買う目的でなくフラっと来店してもウェルカムな空気感のあるお店だ。
中古ソフトの値段も2週間毎に変動して学生達がお目当てのソフトを来月のお小遣いで買えるかな~?なんて、箱付きのソフトを手に取ってパッケージの表面、裏面を交互にクルクルとにらめっこしながら想像してくれるようなイメージだ。
ゲームの試遊台もがっつり全クリまで遊べるマリオ64が置いてみよう。
次の日には店員の手によってセーブデータが消されてるが、ちょっとゲームに慣れてきた夏休みの子供なら開店と同時に入って日が暮れる前にはクリアできるかも!?と、使い古されたニンテンドー64の3Dスティックで思うように操作できず悪戦苦闘が経験ができるチョイスだ。
「ゲーム好きの人が集まる店」ではなく、「客をゲーム好きへ育てる店」だ。
そんな店を想像してほしい。
店名は今考えた「WakuWaku 挑戦島」で決まりだ。
そんなWakuWaku挑戦島ではゲーム好きの店員が推したいゲームに解説とオススメ理由をつけるポップを貼る文化があるのだ。
今どきで例えるならヴィレッジヴァンガードの黄色いポップだ。
もちろんそこには「格闘ゲーム好きの店員さそびがオススメ!」のポップをつけて深くて鋭く熱いレビューを添えたい(2回目)。
「なぜ格ゲー好きの店員がローグライクRPGを推すんだ?」という違和感が客に手を取ってもらうための仕掛けだ。
5年もアルバイトを続けていたら客からの信用度もあるだろう。
もちろん商品棚には客が歩いてるだけでも一番目に入る高さの段に置く。
この、2つの職種を使った「もしもシリーズ」を通して私のアスカ見参を推したい気持ちは伝わっただろうか。
あえて雑誌編集者とゲーム屋の店員の2つの職種を使って推してみた。
実はアスカ見参を初めて手にした2008年当初の私は、初めから続ける気がなかった仕事をやめ、働く場所もなく、働く気もない「完璧なる無職」だった。
20代前半の若々しい肉体から溢れる出るエネルギーの行き先は輝かしい将来の夢や仕事への活力に変換する事のなく、アスカ見参の裏白蛇攻略へと見事に変えていたのだ。
そろそろ本題である「アスカ見参:裏白蛇」の魅力を語ろう。
アスカ見参!裏白蛇はとっても旨辛スパイシー
さっきから裏白蛇、裏白蛇と繰り返してるが意味が分からない人もいらっしゃると思うので簡単に説明したい。
まず「裏白蛇」の表の存在である「白蛇島」とはアスカ見参の本編クリア後に遊べる隠しダンジョンである。
シリーズ恒例のアイテム持ち込み不可で99階踏破を目指す”もっと不思議なダンジョン”と呼ばれる存在で「不思議なダンジョンは1000回遊べるゲーム」なんて言われる所以だ。
そんな「白蛇島」をクリアした後にプレイ可能になるのが「裏白蛇」である。
つまり隠しの隠しってことだ。
不思議なダンジョン系ゲームのルールや造形などは省いて進めるので、どうしてもわからなかったら各々で調べてもらうのが一番だと思います。
唐突だが私は”もっと不思議なダンジョンってのはスパイスカレー”だと思う。
モンスターの配置や強さ、出現アイテム確率、罠、マップ構成などなどのスパイス達を複雑に絡ませて難易度というスパイシーさを出す。
これが理不尽に難しくても辛くて食べれないし、簡単すぎれば薄味で物足りない。
といった具合だ。
そして白蛇島は「辛口カレー」で、裏白蛇は「激辛カレー」だ。
裏白蛇は食べ始めはもぐもぐとイケるが途中からスパイスカレー特有の汗がブワっと出るような辛さが襲ってくる。
はっきり言って「理不尽に難しくて、辛くて食べれないカレー」だ。
普通に遊ぶ分ならば白蛇島の辛口カレーで十分だと思う。しかし、今回どうしても食べてもらいたいのは激辛の裏白蛇だ。
いや、この店に来たからには裏白蛇激辛カレーじゃなきゃダメなんだ。
裏白蛇の激辛は必要だが私自身は特別、高難易度のゲームがたまらなく好きってわけでもない。(名作だったらたまにやる程度)
話は少し逸れるが、食べ物を ”うまい・まずい” と評価するときに、その食べ物を食べたときの「背景」は必要だと思う。背景食いってやつ。
「山で火を起こして食べるカップヌードルはいつもよりうまい」だの、「今月使えるお金がギリギリだけど、今日だけは贅沢して食べちゃう定食」みたいなおいしい空気こそ最大の調味料的なヤツです。
この激辛カレー「裏白蛇」にも食べるシチュエーションに真髄がある。
それが2008年のゲーム配信だった。
2007年にニコニコ動画が始まり。いわゆるゲーム配信の幕開けの時代だった気がする。(それ以前にもあったんだろうけど)
当時、無職だった私とニコニコ動画の相性はもちろん凄まじく、起きている時間=インターネットしている時間になるのは当然だった。
モッツァレラチーズに対するトマト。
ウッちゃんに対するナンちゃんの関係だ。
そこでアスカ見参をプレイしながら雑談をしている動画を見かける。
どうやらニコニコ動画には一部始終を切り取られてアップされているが配信自体は別のサイトだったようだ。
私も持てる限りのインターネット知識を振り絞りその配信サイトへ常駐する事になった。(ポート開放とか超大変だった)
ゲームプレイ配信自体はさほど珍しくはないのだが、ゲームと同時に雑談をリアルタイムでしてるのが衝撃だった。
そしてゲーム配信と裏白蛇の蜜月関係にさらに衝撃を受けた。
セカンドインパクトだ。
ここでさっき語った裏白蛇が激辛である必要に戻る。
裏白蛇はランダム性があり高難易度であるが故に、攻略をしっかり立てても、必ずトラブルが起こる
↓
配信者がリアクションする
↓
面白ければ盛り上がる
↓
配信者の人となりが見えてきて雑談が盛り上がる
↓
またトラブルが起こる
↓
リアクション
↓
盛り上がる… (以降ループ)
と、いったゲーム配信での撮れ高をゲーム側が勝手に用意してくれてるシステムになっていた。
バラエティで辛口料理を食べてるのを見ている感覚に近いのかもしれない。
そして何よりも素晴らしかったのは、アスカ見参がゲーム配信が主流になる未来を見透かしたかのように動きが少ないビジュアル作りになっているので低ビットレート配信でも綺麗に表示、視聴できる+完全ターン制のためじっくり雑談できる作りになっていたこと。
そうやって繰り返して遊んでいると理不尽で難しすぎると思っていた「裏白蛇」が実はちゃんとクリアできる難易度であることに気づけます。
アスカ見参はどこまで計算して作られた作品なのでしょうか。
私には想像がつきません。
アステカの遺跡で発見されたクリスタルでできた骸骨のような時代錯誤のオーパーツなのかもしれませんね(骸骨は偽物らしいですけど)
ほかにもサクサク動く操作系なので長時間プレイしててストレスを感じにくかったり。
BGMがすぎやまこういち氏だったり色々魅力はありますが、それはまた別の機会で。
そんな無敵のアスカ見参の欠点は古すぎてレアゲーと化してるためネットでは品薄高額状態であり、権利の関係でリメイクも難しいみたいですね。
ちなみに安価のドリキャス版では裏白蛇はプレイできませんのであしからず。(PC版のみの隠し要素です)
あと裏白蛇を解放するまでの手順がちょっと退屈なのは否めないかな。
今、アスカがアツい!
ちなみに今回題材にした「女剣士アスカ見参!for Windows」は2002年に発売なので今年で「20周年」になるみたいですね。おめでとうございます。
ちなみに私事で恐縮ですが配信者名としてインターネットで使っている「さそび」という名前も「10周年」になります。
2022年 私は裏白蛇になぜ赴くのか
裏白蛇は私のインターネット祖国であり 故郷なんです
第三部 完