なんかめんどくせーやつら【インド・ヨーロッパ語族?】〇〇が✕✕でないのは、△△が✕✕でないのと同じだ(ソポクレス『オイディプス王』)
エディプス・コンプレックスの由来にもなったオイディプス王の物語より。
オイディプスが、ポリュポスが実の父ではなかったことを知る場面より。
比較級を使った「〇〇が✕✕でないのは、△△が✕✕でないのと同じ」という言い回し、学校ではクジラ構文なんてものを習ったりもするが、フランス語にも似たようなものがあるのね。
ドイツ語にはコウモリ構文とでも言えるものがあることは以前書いた。
というか、この岩波文庫版も、たぶんこのフランス語版も、底本はギリシャ語版だろうから、ギリシャ語にもこの言い回しがあるのだろう。
ということは、もしかすると、インド・ヨーロッパ語族に共通する言い回しなのかもしれない。
でも、日本語ではこんな言い方はふつうしない。
クジラが魚じゃないのを説明する時、わざわざウマを持ち出したりしない。
AさんがBさんの子どもではないことを説明するのに、「Bさんがあなたの親でないのは、私があなたの親でないのと同じだ」なんて言わない。深刻な話してるのに、なんかめんどくせーやつだな、と思われてしまう。
この言い回しは、要は西洋語に特徴的なダメ押しや畳み掛けのようなものであって、文字通りに和訳する必要はないのではないか。
ではこの場面をどのように訳せば、自然な日本語になるだろうか?
というところだろうか。
ほかにも「天地がひっくり返っても」とか「太陽が西から昇っても」なんかでも、いいかもしれない。
これはこれで「なんかめんどくせーやつだな」と思われそうだけど。