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ロマンが好きなのはポランなのか、ポランが好きなのがロマンなのか【日本語】どよもす(大江健三郎『新しい文学のために』)

目に見えぬ暗澹たる一筋の川は、ささやきと話し声と馬蹄と車輪の響きをどよもしつつ、闇の中をいつまでもいつまでも同じ方角に流れて行く。(p.99)(トルストイ『戦争と平和』より)

大江健三郎『新しい文学のために』(1988)

若者に向けての文学の入門書。入門書?

大江さんは、さらにこの10年前にも「文学入門」として『小説の方法』という本を書かれたそうだが、

『小説の方法』がこうむったと同じ─難解という批評に再び出くわしてしまうことになるかも知れない。その危惧を大きく抱きつつ、しかし僕はあえて、原理・方法論にそくしてこの本を書いてゆきたい。(p.6)

と、その危険性を十分に認識しながら、やっぱり難解な入門書を書いてしまっているところが、なんだかガンコな大江さんらしくていいのである。

さて、今回気になったのは、この本の内容とは全然関係なくて、冒頭にあげた、「世界のモデルを作る文学」の例として大江さんが引用したトルストイ『戦争と平和』からの孫引きである。

久しぶりに見たよ、「どよもす」って。漢字で書くと「響もす」。「鳴り響かせる」という意味だ。

とてもいい和語だけど、日常生活で耳にすることはまずない。

なのでいまだに自信がない。「どよもす」なのか「どもよす」なのか。

何となく「ドモ」と密度の高いものが「寄せてくる」イメージがあるので、「どもよす」の方が正しい感じがするのだ。

ほら、どっちだったか、もうわかんなくなってきたでしょ?

似た言葉に「ぜげん」と「げぜん」がある。

漢字で書くと「女衒」だから、頭にくるのは(たぶん)「じょ」が変化した「ぜ」なんだろうけど、ゲスな商売なので「ゲゼン」の方があっている感じがするのだ。

ほら、どっちだったか、もうわかんなくなってきたでしょ?

あと前にも書いたけど、ロマン・ポランスキーとポラン・ロマンスキーもどっちだったかわからなくなる。映画監督だったら、好きなのはポランじゃなくてロマンでしょ!だからロマンスキー、と思ってしまうのだ。

ほら、どっちだったか、もうわかんなくなってきたでしょ?(しつこい)

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