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遠い未来、はるか彼方の銀河系の日本人と中国人【日本語】故郷を捨てる(若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』)
「故郷を捨てる」って、あらためて考えてみると、へんな言い回しだ。
「捨てる」って、たぶんもともとは手で持てるもの、持ち運べるものを手放すことを指していたのではないか。
だから手偏がついている。
感覚としては、車くらいまでは「捨てる」ことができると思うが、故郷や国はもちろん、家ぐらい大きいものになると、こちらが離れていくのであって、「捨てる」ことはできない感じがする。
もしかして日本語特有の言い回しなのではないか、と思って調べてみた。
まず英語では abandon one's hometown だった。abandonは「断念する」「置き去りにする」という意味で、ゴミなど不要なものを捨てる時に使う throw away などとは使い分けてるようだ。
abandonはフランス語由来だから、もちろんフランス語でも「故郷を捨てる」は abandonner sa ville natale と言うらしく、ゴミなどを捨てる時の「捨てる」は jeter (投げる)を使うらしい。
ドイツ語では「故郷を捨てる」は verlassen (去る)を使うようだし、「捨てる」はやはり werfen (投げる)を使う。
韓国語はどうか。「故郷を捨てる」は 고향을 버리다 と言うそうだ。버리다(捨てる)は、なんとゴミを捨てる時の「捨てる」と同じ動詞だ。
もしかして東アジアの騎馬民族に共通する概念だったりするのだろうか。
最後に中国語。「ゴミを捨てる」には「扔」(投げる)を使うが、「故郷を捨てる」には「背弃」(棄)を使うらしい。「棄」はなんと「ちり取りに入れた子供を捨てるさま」(漢字ペディア)だそうだ。これまた感覚というか、スケールが違う。いくらなんでも故郷はちりとりに入らんだろう。
さて、想像をたくましくすると、はるか未来、恒星間飛行ができるようになって、他の惑星系に移住することになったら、やはり日本人は「地球を捨てる」「母星を捨てる」と言うのだろうか。
さらに遥かな未来には、「銀河系を捨てる」「宇宙を捨てる」と言うようになるのだろうか。
そしてそのころの中国人もまた、地球や銀河や宇宙を、ちりとりに入れて棄てているのだろうか。