素材分解【コンビ名】オーロラソース(宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』)
「オーロラソース」は、『成瀬は〜』に登場する架空のお笑いコンビである。メンバーはボケのケチャップ横尾と、ツッコミのマヨネーズ隅田だ。
シンプルにいいネーミングなので、素直に感心してしまった。
2人の名前を合成するというのはコンビ名の基本だし、例えば「おぼん・こぼん」や「青空球児・好児」のように、コンビ名から逆算?して各自の芸名にする、というのもよくある。
しかし「オーロラソース」は、オーロラ横尾とソース隅田からなっているのではない。おそらく、オーロラソースというコンビ名が先にあって、マヨネーズとケチャップという2つの素材に分解しているのである。実在する他の例はちょっと思いつかない。
たとえば、かつて「ケチャップ」と「マヨネーズ」にちなんだ名前の2つのコンビがあって、それぞれが解散して、相方を探していたケチャップ横尾とマヨネーズ隅田が意気投合し、
「ほな、もう絶対解散でけへんようなコンビ名にしよか。『オーロラソース』ちゅうのはどや?」
「ださっ!……せやけどまあ確かに、NASAの遠心分離機つこても分けられへんやろな。溶けおうてしもうとるし」
「じゃあこれでいこか、オーロラ君」
「ほなお前はソース君かい!」
……といったような結成秘話があった、とは考えにくい。
なぜなら、ブラックマヨネーズがいるのに「マヨネーズ」をコンビ名に使おうなどという不遜な芸人がいるとは、考えにくいからである。
シンプルに「オーロラソース」を素材分解したと考えるのが自然だろう。
主人公・鳴瀬と語り手・島崎がM−1に出場するために結成したコンビ名「ゼゼカラ」も、とてもいいネーミングだ。
名詞と助詞で構成されたコンビ名というのは珍しいし(他に例があるかどうかは分からない)、響きもいい。「膳所から来ました〜」というツカミもいい。
架空の芸名や商品名、タイトルなどは、たいていダサくなりがちだが、この作者はその点、おどろくほどセンスがいい思う。
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