猪木”バーニング・ソウル"完至【日本語】リングネーム(小田雅久仁『残月記』)
カリスマティックな独裁者が君臨する近未来を舞台にしたデストピア小説より。非合法で開催される剣闘試合のトーナメント表である。主人公は三番の宇野冬芽。
作者はこの表を作っている間、さぞや楽しかったことだろう。これを作りたいがために書いた小説なんじゃないか、とさえ思う。
キン肉マンとか聖闘士星矢、天下一武道会の世界観だ。要するにジャンプイズム。子どもも、大人になった子ども大好きだ。
音の響きと字面が入念に検討されていて、姓と名の間に入るカタカナのリングネームは、神話、動物名、自然現象など、森羅万象からバランスよく採られている。
作者に尋ねたら、「ただの思いつきですよ(笑)。」「ノリで書きました。子どもの頃からこういう名前考えるの、好きだったんです」とか言いそうだが、小説を書く時間よりもずっと長く考えていた、と言われても驚かない。
私も考えてみた。
上の引用の七から九は、私が勝手に潜り込ませた刺客たちである。
『指輪物語』の訳者・瀬田貞二さんと馳夫(ストライダー)、アニメ『タイガーマスク』の主人公伊達直人、そして『あぶない刑事』の柴田恭兵です。この小説の世界観になじんでいただろうか。