58.コバノミツバツツジの育苗
ヘッダー写真は、2024年4月19日の、最後のコバノミツバツツジが満開を迎えている著者の庭です。
この庭でコバノミツバツツジを実生苗から育て始めたのは、2013年からです。園芸が得意な近所の方のアドバイスを受けて、2012年12月に自宅の庭に数多く実っている蒴果をもぎ取って種を採取し、翌年春に播種しました。育てた苗は、小学校の法面に児童とともに植えました。コロナ禍があり一通り区切りがつき、一部の苗を友達に分けつつ、昨年はそろそろ育苗をやめようと思ってました。そして、昨年は縁あってお寺に寄進して、大きな苗はすべて吐き出しました。しかし、著者の目的は、コバノミツバツツジ、各種のミツバツツジ類、野生ツツジの魅力を伝えることです。それは単に、コバノミツバツツジの名所を、訪問して愛でる人が増えることだけでなくて、守り育てる人々を増やすことです。
著者は、園芸に少しは興味があっても、よく庭の草木を枯らせており、手間暇かけて育てる性格ではないです。さらに、3月下旬から5月いっぱいは、ツツジ旅の撮影に出かけて、自宅を留守にします。そこで、守り育てる人々にコバノミツバツツジの魅力を伝えるためには、自ら種から育てることは欠かせないことを踏まえて、できるだけ自然の移ろいに任せながらの育苗方法を探ることにしました。
今年6月中旬に蒔いた、コバノミツバツツジの種は、大きな苗でも高さ1cm、横幅2cmとまだまだ小さいです。5月に蒔きそびれて、少し遅かったので、例年より若干小さいかもしれません。大きさに個体差がありますね。
今年、庭の苔の上に自然に発芽した2年生(実生は数え年で数えます)の苗を取って、6cmポリポットに植えたので、水やりの手間を省くためにも、同じ苔の上に来年5月に播種しようと思います。掘り取った場所も、まわりの苔が伸びて回復してたので助かります。来年は、育苗トレーと苔の上の両方で発芽させて、比べてみます。
2年生の6cmポリポットの苗です。高さが2~5cmほどに育っています。昨年は播種を休んでいたので、庭の苔の自生苗と、一部は山取のコバノミツバツツジの苗です。苔に守られている苗は、生育がよさそうです。
今年から3年生に試みている、径9cmロングポリポットの苗20株です。播種や、庭の苔の上だけでなく、山取も含まれているので、一部に2年生や4年生の苗も含まれている可能性があます。また、1本は何とか育った1年生の挿し木です。最も伸びた元気な苗は、35cmでした。3年生程度の小さな苗でも、山取をするときは、他の木の根に絡まっていて、苗の根を切って傷めることがあります。この様な株は、育ちが悪くなったのでしょう。
コバノミツバツツジの根は、横に延びると言われています。しかしそれは、条件が悪い土地に生えている多くの成木だと思われます。そこでロングポットで、根を下に伸ばすように育てて、丈夫な苗がつくれないかと考えています。地植えするときに、ポットの方が、軽く持ち運べ、取った苗が植え替えやすいと思われます。だから、径12cmの浅い4号鉢よりも、径9cmロングポリポットの方がよさそうだと判断しました。
主に4年生の苗を植えている4号鉢です。最も育ちが遅くて、手放すまで至らなかった苗ですが、何とか育っています。
今年の春に、5年生以上と思われる、庭で取ったか、山取りをして、4号鉢、5号鉢に植えました。半分ほどの苗は、掘り取るときに多くの根を切ったために枯れました。残った苗も、育ちが悪いのが多いです。そもそも、他の大きな木の下で、太陽光を求め、隙間を探して育ったために、枝をバラバラな方向に広げて暴れています。昨年、お寺に寄進したために、これ以上大きな苗はありません。
改めて、1,2年の草でなく人の人生と同様に何十年と長い木の実生苗を育てた経験から、長い目で見る志が必要だと感じています。そして、過保護にならず、自然の摂理に任せながら、コバノミツバツツジが育てられないかと思案しています。別荘での、高地に適したトウゴクミツバツツジの実生苗育樹も含めて試みますので、このマガジンの愛読、よろしくお願いいたします。