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111.頼山陽が山紫水白と記す黒滝山
広島県竹原市忠海の標高270mの黒滝山は、登山路や山頂から多島海の瀬戸内海を一望できる風光明媚な山です。ちなみに標高は、地理院地図に載っている270mを採用していますが、なぜか地元の資料では266mと記されています。たぶん、古い測量のデータを使っているのだと思います。地質は花崗岩で、植生は典型的なコバノミツバツツジ−アカマツ群集の山です。
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登山口の駐車場のすぐ上に、一番堂とされるさくら堂があり、観音第十四番が祀られてます。さくら堂内には、33観音の写真が並べられています。
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1987年発足の「黒滝山を愛する会」が、活発に活動している行事予定が、記されています。
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1820年頃につくられたとされる 33体の摩崖仏がある、西国三十三カ所霊場となっています。観音第六番と雲水池と、これらを覆う二番堂です。
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第五番の母子観音です。
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観音の摩崖仏の周りには、コバノミツバツツジに彩られています。
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コバノミツバツツジ咲く登山路を登ります。
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三番堂の休憩所です。「黒滝山を愛する会」が、作業道具を置いています。数名の方が、山路を整備されていました。パンフレットをお渡しして、ご挨拶しました。
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休憩所からの市街地と多島海の展望は見事です。
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植えられている苗木を発見しました。「黒滝山を愛する会」の皆さんは、必要な場所に植樹をしています。
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山頂の観音堂に着きました。天平年間の730年に、行基が創建したと伝えられています。観音堂内には、鎌倉時代の十一面観音像が安置されています。
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山頂からの遠望する多島海の島々は、抜群です。
頼山陽は1807年に『竹原舟遊紀』を著し、黒滝山を訪れて、「嶺に至りて望み之に欝へば、層見畳出する者碁布の如きなり」と記しています。つまり、黒滝山の山頂に登って望むと、島々が幾層にも重なって、碁石を敷いたようだと、表しているのです。同行者の2名は、絵を描き、眺望を楽しんだ後、下山しています。下山して舟に戻り、黒滝山と停泊している瀬戸内海の浜辺を「山紫水白」(山は紫にして水は白い)と記しました。頼山陽がつくった山紫水明という言葉は、「山紫水白」から着想を得たものと考えられます。
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さて、コバノミツバツツジをよく観察していた時のことです。
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何と、コバノミツバツツジと同じ紅紫のゲンカイツツジが混じっていることを発見しました。瀬戸内にはところどころ、ゲンカイツツジが咲いているのです。花弁の筒の先が尖らない丸みを帯びたツツジで、コバノミツバツツジより少し早めに咲くので、咲き残っていた株です。
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下山します。よく手入れされた登山路ですね。
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群を抜いた絶景の多島海の眺め、見事な摩崖仏、行基創建とされる観音堂、これらを彩るコバノミツバツツジとゲンカイツツジ、頼山陽の紀行、黒滝山はどれもが秀逸な素材で構成されています。それらを、「黒滝山を愛する会」が守り育てておられる素晴らし山でした。