私と運転
普段からよく車に乗る
地方だから当然、車は一家に一台どころか一人一台だ
職場まで車で片道1時間半かかる、なんてのもここでは珍しくないのだ
公共交通機関は最初から選択肢にない
電車やバス移動なんて非現実的よね、ぐらいにみな思っている
私は運転が全く苦ではない
2時間くらいの場所ならば思い付いた瞬間に出掛けていく
確かに体力的に足腰がきつい、という現実はある、もうそういう年齢だし無理はできないとは思ってきたところだ
ただ精神面では運転している間、実に楽しい時間なのだ
私はよく対向車の運転手や助手席に乗っている人たちの表情やしぐさを観察している
わき見運転にならない程度の話なので落ち着いて読んでね
ほんの数秒のすれ違い様に覗いてみるのだ
人間は車内にいると気が緩むのだろう、実に豊かな人間模様を垣間見ることができる
信号待ちなんかは最高の瞬間だ、ここぞとばかりに後続車の運転手をバックミラーやサイドミラーごしに覗いている
だから信号よ止まれえ、止まれよオオオオと念を飛ばしていたりもする
信号につかまるのは運転手にとってトップレベルのストレス要因なのだろうが、私にとってはかっこうの補給ポイントとなる
イライラしている人間の顔もたまらなくグッと来ちゃうからね
男女で乗っていると、関係性を推察してみる
楽しそうに会話している、男性は少し照れたような表情をしているし、女性は女性らしい振るまいだなと見えればまだ付き合ってないな、とか付き合って日が浅いなとか思ったりする
まったく会話がなく、眉間にシワをよせてふてぶてしく窓の外をむいて顔を会わせないようにしている4〜50代男女は、間違いなく夫婦で昨夜から険悪なムードを引きずり倒して現在に至るんだと、そっと応援したくなる
あきらかに艶っぽい、熱っぽくてちょっとギラついてる感があると見えれば、きっと彼らは公にできないただならぬ関係なんだと後を追いかけたくなる
思春期の娘息子を乗せた気まずそうな親子をみると、涙はでないけどうるっとくるような気持ちになる、ここを越えるんだ、大丈夫だよ止まない雨はないよと言ってあげたくなったりもする
運送業のトラックや社用車は要チェックだ
彼らがきている作業着は私の心を踊らせてくれる
グッときた作業着を見たらすぐに車体に印字されている社名をチェックしなければならない、決して見逃してはならない、見逃したら1日落ち込むことになる
青色、水色、白いつなぎ(汚れている)が目に入ると声に出して喜んでいる
逆に自分も見られていると思うがそんなことはどうでもいい
むこうからしたらやたらこっちを見つめる怖い女ということになるのだが…
直接的な迷惑をかけていないことをいいことにやりたい放題している
意外とよく見えるもので、大声で歌っているなとか、ミラーでメイクをチェックしているなとか、きっと奥さんにLINEを返しているところだなとか、トイレを我慢しているのかという苦悶の表情を浮かべている場面も見えたりする
合っているか合っていないかわからない妄想シナリオを勝手に付け加えてはドラマ化してグッときている私
人里離れたモーテル沿いに差し掛かるときには一気に期待が高まる
出入りするタイミングに遭遇しないだろうかとワクワクする
入るのか?入らないのか?どっちなんだい?はい………ッターーーーーー!!!!脳内でアドレナリンを号外を配る人のようにあちこちに放出している
ちょうど出てきた時の助手席の人が気まずそうに下をむいて顔を隠し、キョロキョロさっさとここを曲がって何事もなかったように走りたい運転手のせわしない姿が想像できるだろうか…たまらんので速度を落としてじっと見ながら通りすぎます
遭遇できなくても通りすぎる際にはカーテンのむこう側に停まっている車の下部を覗き見てしまうし、なんだったら特徴的なナンバーは覚えてしまう
車内で流れるラジオ番組や流行りの音楽なんて聞いてない、それどころではない、これはパトロールなのだ
ごめんて
自分ひとりでグッときてるだけだから無害だからね
なにかするわけじゃないからね、ナンバー覚えてもどこかで晒すとかじゃないから安心してね、ただの私の悪いクセだから
こういうところで共感力を養っていると思っている
私にとっては人の気持ちを理解するトレーニングなのだ
※「私と○○」というテーマでやりたい放題するnoraノート。Radiotalkで歌・雑談配信中!